第53話 合流を目指して

「前方から足音です」


 パルちゃんの言葉で、さっと茂みの中に隠れる。

 すると、すぐに二人の魔法少女は通りすぎて行った。


「ふー、ユキミちゃんとの合流地点はもっと先だよね?」

「そうですねー。このペースだとかなりかかりますよ」


 とはいえ、スピードを上げるのは難しい。

 今このあたりは、私たちを探す魔法少女たちがうろつく危険地帯となっている。

 ヒナの予想通り、ユイさんはユキミちゃんとヒナが分かれたこのタイミングで、私たちのことをなんとしても倒そうとしているみたいだった。

 まあ、そのヒナはもう倒れちゃったんだけどね。


「ヒナは倒れちゃったって教えてあげれば、引き上げてくれないかな?」

「それは、もう知ってると思いますよ」

「え、知ってるの!? どうして?」


 パルちゃん曰く、キルログが流れるらしい。

 そういえば、チーターと戦ってるときにヒナが確認してたっけ。

 じゃあ、この人たちは私のことを探してるってこと?


 そういえば、ユラちゃんと初めて会ったとき、ヒナの友達ってことはゲームがうまいはず! って言ってたよね……。

 おんなじ考えだったりするのかな? 初心者なのに勘弁してよー。


「はぁ、これは大変だね……」


 このままゆっくり歩いていくしかないか……。

 そんなことを考えていた時、消え入りそうに私を探す声が聞こえた。


「シズネさ~ん。私ですユラです。いたら返事してくださ~い」

「ユラちゃん!」

「ほ、本当にいたでありますか!?」


 茂みから体を出すと、驚いたようにユラちゃんが声を上げた。

 私の捜索部隊に加わっていてくれたんだ。よかった。


「とりあえず、ここは危険です! こっちにきてください!」


 そして、ユラちゃんについて歩いて行く。

 しばらく歩いたところで、周囲を確認して人がいないのを確認すると、ユラちゃんは立ち止まって話始めた。


「ここなら、捜索範囲の外なので見つかることはないはずであります! それで、何があったんですか? ヒナさんは戦闘エリア外のダメージで倒れちゃったんですよね?」


 やっぱり、知っていたんだ。

 私はユイさんたちと戦闘になったことや、たぬきの魔法少女から逃げてきた話をした。


「お姉ちゃんは、倒せなかったですか……」

「いや、戦闘自体はいい勝負だったよ。でも、ユキミちゃんのことで……」


 ユキミちゃんがプロを目指していない。それを聞いてヒナが戦意を失った。

 私の目から見た限り、二人の戦いはまだ決まっていなかったと思う。


「ねえユラちゃん。ユキミちゃんがプロをあきらめたって本当なの?」

「それは、本当です。最近は部活にもほとんど顔を出していなかったので」

「やっぱり、本当だったんだ。ユラちゃんはどうしてユキミちゃんがヒナをこのゲームに誘ったのか、心当たりはない?」

「心当たりですか……」


 腕を組んで考えるユラちゃん。何かわかれば、ヒナを励ますことができるかもしれない。


「すいません、やっぱりなにも……」

「そっか」


 なら、本人に聞くしか理由を知る方法はないわけだ。問題は正直に話してくれるかどうかという所だと思う。


 こういうのってどうやって聞き出せばいいんだろう?

 友達が多い方じゃない私には、人の悩みを聞き出すなんてこと、難しすぎるんじゃないかな?


 とはいえ、やらないと二人の関係もこのままだ。

 う~ん、何かいい方法があればいいんだけど……。


「あ、そうだ! ユラちゃん、もう一つだけ教えてもらっていい?」

「はい! 私で力になれることなら、なんでも聞いてください!」


 そして、私はユラちゃんにとある機能について聞いてみた。


◆◆◆◆◆


「この道をまっすぐいけば、だれにも見つからずユキミさんとの合流地点に行けるはずです」

「ありがとう。助かったよ」

「大したことはしてないでありますよ。それより、頑張ってください。ヒナさんなしじゃ、お姉ちゃんは倒せないと思うので」


 そして私はユラちゃんと別れて【飛行フライ】の魔法で飛び立った。

 誰にも見られないというのなら、遠慮することはない。全速力でユキミちゃんと合流しなくちゃ!


 景色がすごいスピードで後ろへと流れていく。さっきまでゆっくり隠れながら移動していただけに、これでずっとスピードアップがねらえるはず!


「あの~、マスター。さっき聞いた話、本当にするんですか?」


 気持ちよく風を切る私に、遠慮気味なパルちゃんの声が聞こえてきた。


「だって、やるしかないでしょ」

「それはわかるんですが、その……システムの穴といいますか、ゲーム制作サイドとしては、あまりやってほしい行いでは……」

「ダメ。できるんだから使わなきゃ! それとも、パルちゃんが思う魔法少女っていうのは、ここでじゃあやめますって言える女の子なの?」

「た、確かに……」


 よし、パルちゃんの説得に成功した!


「まさか、私が魔法少女とは何かをマスターに説かれるとは……成長しましたね。マスターは私が育てた最高の魔法少女ですよ」


 いや、育ててもらった覚えもないし、どうして急に師匠みたいになってるの?


 とはいえ、これで納得してくれるのなら問題ない。

 私は急いでユキミちゃんとの合流地点へと飛んでいくのだった。

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