第49話 乱戦へ

『ヒナ、すぐに戻ってきて。タイムアップよ』


 ユキミちゃんの言葉でヒナが合流する。

 応援としてやってきた魔法少女はざっと見たところ15人ぐらいはいそうだった。


「ど、どうしよう? こんなにたくさん戦えるの?」

「正直厳しいわね。ヒナはどれくらいいけそう?」

「10人ぐらいかな。でもさっきから戦ってる二人がいると、もっと少ないかも。あの二人、私の戦い方をすっごく研究してきてるみたいでさ」


 ヒナがさっきまで倒せなかった二人の魔法少女のことを手短に教えてくれた。


「なるほどね。じゃあその二人は私が相手したほうがよさそうね」


 そしてユキミちゃんは今後の方針を固めてくれた。


「とりあえず、まずは逃げましょうか」

「えぇ、逃げるの!?」


 私としてはうれしいんだけど、戦うものだと思ってた……。


「ヒナはこういうの得意だからいいけど、基本的に自分たちより人数が多い相手とは戦わないほうがいいのよ」


 そしてユキミちゃんは【飛行フライ】の魔法をセットした。私はさっきまで逃げ回っていたからすでにセット済みだし、ヒナも空中戦をしていたので準備はできている。


「でも、ユイさんを倒すんだよね?」

「だから、逃げながら相手を分断するってわけ!」


 ヒナはそういうと私の手をとって飛びあがった。


「わわっ!? 私自分で飛べるよ?」

「いいからいいから。シズネにはほかにやってほしいことがあるの」

「やってほしいこと?」

「うん。【砲撃ルーインズ】の魔法は持ってるよね」

「まだあるけど……」


 私の手持ちの魔法は【砲撃ルーインズ】と【狙撃アーチャー

、それと【複射マルチシュート】だ。ユキミちゃんに教えてもらった魔法を中心に、使い勝手のいい【複射マルチシュート】を追加した構成だった。


「なら二段チャージを私の合図で撃って。それで相手を分断するから」

「わ、わかった」


 それでなんで分断できるのか、わからないことだらけだけど、ヒナがいうなら間違いない。急いで【砲撃ルーインズ】をセットすると、すぐにチャージを開始した。


「じゃあいくよ! 三人で全員倒しちゃおう!」


 そして私たちは飛び上がった。

 私はヒナに手を引かれながら、【砲撃ルーインズ】のチャージを進めていく。


 後ろからは魔法弾が飛んでくるけど、かなり距離があるのとヒナの回避が上手なこともあって、被弾はない。


 ヒナは私に何をさせようとしてるんだろう?

 【飛行フライ】の魔法を使わないことで、マナを節約できてるし、このまま【砲撃ルーインズ】を連打するとか?


 そんなことを考えていると、私のステッキが大きく光り輝いた。


「チャージ完了! いつでもいけるよ!」

「じゃああいつらに向かって撃っちゃって!」


 その言葉で【砲撃ルーインズ】を撃ちだした。

 大きな魔法弾はゆっくりと相手に飛んでいくも、全員左右に分かれて回避する

 その瞬間。


 ――ヒュン!


 と風を切る音を残して、【狙撃アーチャー】の魔法が飛んでいく。

 そして【砲撃ルーインズ】の魔法を打ち抜くと、大きな爆発が巻き起こった!


「そっか、【砲撃ルーインズ】って撃てば壊せるんだっけ」


 そしてヒナに引っ張られていた手が離された。


「うぇえ!?」


 突然のことでびっくりしたけど、背中に翼が生えて、ゆっくり降下していく。

 見てみると、ヒナとユキミちゃんは今の爆発に乗じて、敵陣へと突っ込んでいた。


 爆発と二人の急襲。確かにこれなら倒せるかも。

 そして私がゆっくりと地面に降り切る前に、二人はまた戻ってきた。

 空中でヒナが私をキャッチすると、また逃走劇を始める。


「何人やった?」

「三人よ。ヒナは?」

「四人! 私の勝ちー!」


 二人がそんな報告をしあっている。

 っていうか、なんか会話が怖いんだけど!


「あのまま攻めなくてよかったの?」


 私の質問に答えたのはヒナだった。


「さすがに返り討ちに合うからね。まあ合計で七人も持って行けたし上出来でしょう」


 確かにあの短い時間で、こっちはダメージを受けず七人倒したのなら上出来だ。

 というか、やっぱりこの二人強すぎない?


 今のをあと何回か続ければ、相手を全員倒すのもできそうだよね……。


「ストップ!」


 突然ユキミちゃんの声が響いた。

 急停止するヒナと私。ユキミちゃんの視線の先に目を向けると、そこには15人ほどの魔法少女たちが待ち構えていた。


「これ……待ち伏せされたってことだよね」


 ヒナが挑戦的な笑顔を浮かべる。ピンチを楽しむような、挑戦的な笑顔だった。


「おもしろくなってきたじゃん! シズネもユキミも気合いれてね。ここからは小細工なしの乱戦だよ」

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