第48話 苦戦と快勝

 さあ、早く倒してシズネとユキミのフォローに行かなきゃね!


「【飛行フライ】セット!」


 サポートカードを変更して機動力を上げると、まっすぐ地面すれすれで相手に向かって突っ込んでいった。


「わぁ、それ見たことあるッスよ!」


 そして、相手の魔法少女が【散弾サプレッション】を私に撃ちだした瞬間、体をひねって軌道を変えて、相手の側面へと回り込む。


 私がよく使う中距離から詰める戦法の一つだけど。


「動画で見るより速いッスね! 反撃はさすがに無理そうかなぁ」


 相手の魔法少女は、後ろに下がって私から距離をとった。

 これは……正直めんどうなことになりそうかも。


 目の前の魔法少女二人が私のことを研究しているという話は本当らしい。


 正直これくらいのプレイヤーなら、今ので一撃入れられるはずなんだよね。

 普段やっている作戦や得意な戦法は読まれていると思った方がよさそうだ。


「これは、すぐに倒すのは無理ゲーかな……」


 ならどうするか。

 奇策や戦術の関係しない勝負に持ち込むしかない。


「じゃあ単純なエイム勝負と行きますか! 【複射マルチシュート】セット!」


 【飛行フライ】で空を縦横無尽に飛び回って、中距離からの【複射マルチシュート】で削り倒す!


◆◆◆◆◆


 横目でヒナの戦いに目を向けると、いつもとは違った戦い方をしていた。


 これは、何かあったと思った方がよさそうね。

 ヒナがあの状況になった以上、防戦一方のシズネさんのフォローに周るのは私の役目だ。そんなシズネさんは、今も逃げ回る戦いを続けていた。

 その逃げっぷりは大したもので、防戦一方のはずなのに見ていてハラハラしてこない、安定感があった。


 とはいえ、まだまだ初心者プレイヤーのシズネさんを、あのままにしておくのは可哀そうだし、今助けるべきはこっちだろう。


「じゃあすぐに向かいましょう」


 目の前に転がるお墓から、最低限必要なアイテムだけを抜き取った。


 ――もう、私の戦いは終わっていた。


 相手にしていた二人の魔法少女は、あっけなく返り討ちにしたというわけだ。

 相手は最近選抜クラスに入ってきたばかりの二人組。人数差があるとはいえ、私の敵じゃない。


『シズネさん、大丈夫そう?』

『あ、ユキミちゃん! こっちはまだ大丈夫だよ。マナも体力も余裕あるから』

『なら、私のほうに向かって飛んできてちょうだい』

『あれ? ユキミちゃんは大丈夫なの? 二人ぐらい向かってたと思ったけど』

『もう倒したわ。今からシズネさんのところにいる相手を倒すわよ』


 そしてシズネさんは逃げる方向を変えた。

 大きな弧を描きながら空中を旋回していく。その間も後ろから飛んでくる魔法弾は器用に避け続けていた。


 回避の技術だけなら私以上かも……。

 そんな光景を眺めてばかりはいられない。

 私もそろそろ準備しないと。


狙撃アーチャーセット!」


 ステッキが弓の形に変わる。

 そして私に向かって飛んでくるシズネさんに合図を出した。


『今!』


 その瞬間シズネさんは高度を上げる。その結果シズネさんが逃げるだけだと高をくくって、追いかけてきていた魔法少女に射線が通った。


「って待ち伏せ!?」


 ヒュン――という音を残して、矢はまっすぐ相手の頭へと突き刺さり、ダメ押しに空からシズネさんの複射マルチシュート】が降り注ぐ。

 相手の魔法少女はお墓へと姿を変えた。


「ナイスシュートね。初めての連携で心配だったけどうまくいってよかったわ」

「ユキミちゃんのおかげだよ。あんなにうまくいくなんて思ってなかったもん」


 空から降りてきたシズネさんはそういいながら、お墓のアイテムを回収していく。

 この作戦がここまでうまくいったのは、シズネさんがうまく逃げ続けていてくれたからだ。


 普通逃げる相手を追う場合、反撃を警戒するため馬鹿正直に追いかけるようなことはしない。ましてや相手は選抜クラスの子だったんだから、それくらい知ってるはず。

 それなのにまっすぐ突っ込んできたっていうのは、そうでもしないとユキミさんに攻撃を当てられないと思ったからだ。

 

「それだけシズネさんの回避が上手だったってことよ」


 そして今度はヒナへと視線を向ける。

 私とシズネさんがいれば、苦戦しているヒナを救い出すこともできるはず。

 そう思って動き出そうとしたとき、遠くから15人ほどの人影が迫ってきていた。


「思ったより早かったわね」

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