第46話 チーム会議
「みんな! 転校していったヒナに負けるわけにはいかないわ! まずはヒナとユキミのパーティを倒す! いいわね?」
おぉー! という声が森の中に広がっていった。
ユキミさんたちに、部員たちの結託を伝えた後、戻って来てみればお姉ちゃんが全員を集め、今後の目標について確認していたのだ。
これは、正直まずいであります……。
ユキミさんとヒナさんは、少し前までは部内の絶対的エース。それにシズネさんという方も加わっており、普通に戦えば私たち相手に遅れを取るとは考えられない。
でも、今は人数が違いすぎる。
あれから伝令部隊が編成され、マップの各所にいる部員たち全員に状況を伝えたところ、全30人がこの森に集結していた。
それも、そのほとんどが部内の選抜クラス。いわゆるガチ勢といわれる人たちだった。
「では、周囲を警戒する者を除いて、他の者は装備の分配を行うわ。チームの代表者は集まって」
そしてお姉ちゃんのところに十人ほどが集まっていく。
「ユラ、あなたもチームの代表でしょ? こっちにて」
「あ、うん」
各部隊の装備や、ヒナさんたちの装備についての意見交換が始まった。
もちろん私が知っていることは、全部秘密にしておいた。
◆◆◆◆◆
「それじゃあ、ヒナたちの捜索隊が戻ってくるまで、各自離れすぎないように行動してね」
そんな言葉で作戦会議は幕を閉じた。
今後の予定は、捜索部隊がヒナさんたちを見つけ次第、全員で倒しに行くというものだ。
ヒナさんたちを倒したら、解散して十分後に通常のゲームに戻っていく約束になっている。
「うぅ……これは困ったでありますね……」
ヒナさんたちが見つかるまでは、無断での行動は禁止ということで、今の現状をヒナさんたちに伝えることができない。
もちろん装備を届けてあげるといった、支援もできなくなってしまっていた。
「ユラは心配することないよ。私がなんとかするからさ」
どこか疲れたようなお姉ちゃんが、そんな言葉をかけてくれた。
周りにいたみんなは休憩や、パーティメンバーに作戦会議の内容を伝えにいっており、ここには私たち二人しかいない。
「やっと部活動がまとまってきたんだから、ヒナには邪魔させない。これは私の役目だからね!」
私の困りごとを勘違いしたまま、お姉ちゃんが胸を張る。
そんな姿がなんだか、私にはとても辛そうに見えた。
「ねえ、お姉ちゃん。もう選抜チームやめちゃおうよ。別にプロ志望でもないしさ」
ヒナさんが抜ける前のお姉ちゃんは、いわゆるエンジョイ勢といわれる人間だった。
ゲームは息抜きや遊びのためにするもので、プロを目指したり、本気でうまくなろうなんて考えていない。友達とのコミュニケーションツールであり、趣味の一つだった。
それが、ヒナさんがいなくなったことで変わったんだ。
「ダメだよ。せっかくチームが一つになったんだから」
ヒナさんが抜けたあと、選抜チームはかなり荒れた。
大会に出る、それも部内で一番上手な人が不正をしていたんだから当然と言えば当然だ。
部内で他に不正をしている人がいるかもとか、不正のことを知っていて黙っていた人がいるんじゃ、なんて疑心暗鬼になってた。
そんなギクシャクした空気が嫌で、転校していった人までいる。
それをまとめて、もう一度試合に出られるようにしたのがお姉ちゃんだった。
「でも、お姉ちゃん進学希望でしょ? 選抜チームのままじゃ、勉強する時間ほとんどないんじゃない?」
「大丈夫! なんとかするって! ほら、そろそろユラもパーティの子たちに作戦を伝えてきて」
「うん……」
そして立ち上がる。
やっぱり、お姉ちゃんのためにも、ヒナさんには頑張ってほしい。
責任感からお姉ちゃんが、選抜チームに入るなんて間違ってるんだから。
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