第43話 不意打ち
戦いはすぐに始まった。
こちらの様子を窺っていた三人の魔法少女に向かって、ヒナが突っ込んでいったからだ。
『さあ、やっちゃうよ! 今日はまだまともに戦ってないし、張り切っていこう!』
そんなヒナから少し離れてついていくのはユキミちゃん。
ヒナをサポートできる距離を確保しつつ、【
そして私はというと……。
「うぅ……やっぱり、チクチクするなぁ……」
もぞもぞと動けば、周りの草がこすれる音がする。
そう、ヒナやユキミちゃんとは離れた場所で草の中に隠れていた。
もちろん逃げてるわけじゃない。これも作戦だ!
ユキミちゃんが言うには、ヒナと二人で互角以上に戦えるはずだから、私は前線に出るのではなく不意打ちに専念してほしいということだった。
まあ、二人と一緒に正面から敵と戦うのは、正直言って厳しいしこれくらいがちょうどいい気がする。
そんなことを考えていると、ヒナが抗戦距離へと入っていった。
◆◆◆◆◆
さて、シズネに良いところ見せないとね!
目の前にいる魔法少女はみんな、見覚えのある子たちばかりだった。
たしか……そこまで部内ランキングは高くなかったはず。
『ヒナ、相手は三人だから射線を意識して。空に浮かんだ敵は私が受け持つわ』
『オッケー。じゃあ私が二人倒す感じでいいかな?』
『一人でいいわよ。もう一人はルーキーがやってくれるから。ね、シズネさん』
『わ、私!?』
おぉ、すごい自信!
さっきまで私に見回りをさせて、二人で楽しそうに魔法を撃ちまくってたけど、もうそんなに仕上がってるのかな?
っていうか、シズネはどこに隠れてるんだろ? 私だってそれなりに隠れている相手を見つけるのは上手なはずなんだけど、全然見当たらない。
『ふふ、わかった。お手並み拝見ってところだね』
すると正面から【
戦いが始まったんだ!
ただ、【
それなら……。
「【
火力差で押し切る!
そして敵陣深くへと突っ込んでいった。
「ヒ、ヒナさん!?」
「ってことは相方はユキミさんだね。全員ここで倒すよ!!」
「一人で突っ込むなんで、部活を辞めて下手になったんじゃないですか!」
三人は話をしながらも動き出していた。
二人が迎撃。一人が距離をとるため空に飛びあがる。
全員が近距離に強い魔法を持っていたら、袋叩きにあって倒されるけど、魔法がそろっていない今なら、そこまで怖い物はない。
相手の魔法は一人が【
「残念だけど、まだまだみんなには負けないよっと!」
【
攻撃力が違うからこそできる戦法だ。
そしてそのままの急いで離脱すると、さっきまで私がいた場所へ【
「くっ……下がって回復して! その間は私が時間を稼ぐから」
「はい!」
そして、【
空に逃げた敵の相手をしながら、こっちの戦況まで理解してるなんて、視野が広いっていうのかなんていうのか……。
とにかく、これで相手は二人になったってわけだ。
いや――もうすぐ後一人になりそうだね。
『えっと、ヒナ、もう少しだけ下がったほうがいいと思うよ』
『うん、今私も気づいた』
相手の頭上に、いつの間にか【
いや、普通ならチャージ中に気づけるんだけど、どこでチャージしてたんだろ?
っていうか、いまだにシズネの姿を見つけられない……。
相手からしたら、バグに見えるんじゃないかな?
そして、【
確認するまでもなく、お墓になっているとおもう。
ってことは、相手は後一人……。
ユキミの方へと視線を向けると、どこかから飛んできた【
そこへ追撃をかけるようにユキミの【
◆◆◆◆◆
「さっすがシズネ! 完璧だったよ!」
「そ、そうかな?」
確かに自分でもうまくできた方だと思う。
【
「正直想像以上ね。どこに隠れてたのか私も見つけられなかったし」
「ユキミも見つけられなかったの!?」
「ヒナもユキミちゃんも最前線で戦ってたんだし、見つけられなくて当然じゃない?」
私の疑問にヒナが得意げにチッチッチと指を振った。
「相手が普通のプレイヤーならそうだけど、ユキミは別だよ。昔からユキミが不意打ち食らう所みたことなかったんだもん」
「ある程度隠れる場所を予想してるからね。でも、シズネさんは見つけられなかった。正直言ってゲームを始めたばかりの初心者とは思えないハイドスキルね」
な、なんだろうこの感覚……。気恥ずかしいような嬉しいような。
人からこんなに褒められることなんてめったにないだけに、なんだか戸惑っちゃう。
「それだけ戦えるのなら、あの技も教えておいた方がよさそうね」
「技?」
「シズネさんが使った【
「おぉ~、どんなの?」
ユキミちゃんが教えてくれようとしたその時、遠くの空から新手の魔法少女が現れた。 さっきの戦いに気づいてやってきたんだ!
「新しい敵だね! シズネもユキミもいける?」
「うん! 大丈夫だよ!」
「そうね。じゃあぶっつけ本番で教えるから、隠れたら連絡してちょうだい」
そして、私たちはそれぞれが自分の役割を果たすために動き始めた。
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