第36話 ユキミの合流
『ユキミ! もうそっちは大丈夫なの?』
『ええ、時間はかかったけど、誰にも見つからずにこれたはずよ』
私とヒナは二人で建物の階段を駆け上がっていた。
逃げながらだったから、あまりしっかりとは覚えていないけど、数十階はある高層ビルのような建物を全速力で上がっていく。
「こら~、待ちなさいよヒナ!!」
「待つわけないでしょ!」
後ろからは、魔法少女の二人組が同じように全速力で駆け上がって来ていた。
狭い階段だから、魔法で飛ぶこともできず、こんな鬼ごっこのような状況になっているというわけだ。
ただ、油断してると……
――ヒュン。
鋭い音と一緒に魔法弾が飛んでくる。
「あー、もう惜しい!」
「ごめんね、そっちの知らない人に恨みはないんだけどさ」
そんな背後から聞こえる声を無視して走り続けていた。
「っていうか、ヒナ! あんたと一緒にいる子は知らないけど三人目のチームメイトは誰なのよ。もしかしてユキミ?」
「そうだけど、それがどうしたの?」
「やっぱりね。あの子今校内ランク最下位で誰も組んでくれないのよ」
その言葉で、ヒナの表情が険しくなった。
相手の魔法少女へと視線を向けて、何かを言おうとしていたけど……正直もう限界だ。
「ヒ、ヒナ……わたし、そろそろ体力が……」
「ッ! わかった。ごめんね気付けなくて」
そして手早く、ユキミちゃんへと今いる場所や私の体力が限界だということを説明してくれる。
『わかった……急いだほうがよさそうね。いつものでいくから、四発でお願い』
ユキミちゃんのその言葉に慌てたようにヒナが返事をした。
『ま、マジ!? わかった! いくよシズネ! あとちょっとだから!』
『う、うん』
そして見えてきた次の階で、階段から部屋へと入っていく。
その瞬間、ドカンと魔法のさく裂音がして、私たちがいる建物が大きく揺れた。
「さっき、四発っていってたけど、あれってどういう意味?」
「もうすぐわかるよ。っていうか、知らない方が幸せかも……」
「幸せって――きゃ!?」
ドカンと二回目の爆発音。そしてさっきよりも大きく建物が揺れる。
何が起こっているのかわからなかったけど、そんな私たちのところへ、魔法少女たちが追い付いてきた。
「ここまでよ、ヒナ!」
部屋へと入ってくるなり、ヒナへ指を突き付ける魔法少女。
隣にいるもう一人はすでにステッキを構えて、いつでも攻撃できる態勢だ。
「ほんと、しつこいよねぇ~。見逃してくれたらいいのに」
「そんなことできるわけないでしょ! ってうわぁ!?」
三発目の爆発音は、さっきまでと比べ物にならない衝撃だった。
もしかして……この建物傾いてきてない?
「悪いけどそっちに構ってる余裕はないんだ。っていうかそっちこそ、生き延びる方法を考えた方がいいんじゃないかな?」
そしてヒナは私の手を取り走り出した。
その方向は窓だ!
「ってヒナ! もしかして!」
「そう! ユキミがこの建物をぶっ壊すの! さあ飛び降りるよ!!」
そのままヒナに引っ張られて窓から飛び降りる。
背後からは、最後の爆発音と建物が崩壊していく音が聞こえてくる!
「って、落ちる落ちる! これ絶対ダメなやつうううううう!」
高いところからの落下。そんな怖いシーンに身構えて目を閉じる。
でも、不思議と落下する感覚は訪れなかった。
というか、なんだかふわふわしてるような?
「あはは、忘れたの? ほら」
目を開けると、ゆっくりと滑空していた。
「一定以上の高さから飛び降りたら、こうなるんだよ」
そういえば、前にそんな説明を聞いたことがあるような気がする。
背中を見てみると、ゲーム開始時と同じ魔法の羽が輝いていた。
「じゃあ、このままどこかに着地する感じ?」
「いや、それは厳しいかな。ほら上みて」
上?
言われて上を見た瞬間。
「ギャーーーー!」
さっきまで私たちのいた建物が、倒れてきていた。
「し、下敷きになっちゃうよね。コレどうするの?」
魔法の羽で滑空しているから、落下死はしない。
けど今の状態はあまり機動力がない。本当にゆっくり地面へ降りてるだけだ。
このままだと建物を避けられずに下敷きになる!
「まあまあ、大丈夫だから。手だけは離さないでね」
「わかった」
そして握っている手に力を入れたその時。
『お待たせしました! このまま戦域を離脱します。しっかり捕まっていてください!』
【
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