第32話 ゲームスタート!?

 ふっふっふ……これで、買えるはず!!


 ステータス画面を確認すると5000GMの文字が浮かんでいる。

 昨日あれからヒナと一緒にMKDをプレイしまくった結果、なんとかここまでためることができたというわけだ。


「これだけあったら、少しくらいは良いものが買えるはず!」


 普段ゲームを遊ばない私が三時間も遊んでためたお金だし、大切に使わなきゃね!


「何買うか決めてるの?」

「ソファーと机と壁紙がほしいかな。それだけあればお部屋っぽくなるでしょ」

「三つか――ん~、GMが足りないような……」


 そして昨日行ったお店へ向かって歩いていると、ゲーミングモール内にある掲示板の前で人だかりができていた。


「何かあったのかな?」

「ちょっと見てみよっか」


 掲示板の前まで歩いていくと、視界に文章が表示される。

 ゲーム関連の記事みたいだった。


「元プロゲーマーのスカウトツアー?」

「将来有望な若者を今から見つけて、プロになるための支援をするって感じかな」

「スカウトか~。ヒナは興味ないの?」


 昔はプロゲーマーを目指していたヒナ。

 一度、強くなろうという思いから道を踏み外してしまい、今では『楽しくゲームプレイ』をもっとうにしていると言っていたけど、未練とかそういうのはないのかな?


「ないない。今は楽しく遊ぶのが一番! 友達増やして目指せ友達だけの1000人対戦!」

「いや、さすがにそれは無理じゃない?」


 そして掲示板に書かれたプロゲーマーが見学にくる学校名を見ていると、見覚えのある名前がそこにはあった。


「あれ? この名前ってヒナが前にいた学校じゃない?」

「うん、そうだね。強豪チームで有名だったし来てもおかしくないと思うよ」

「じゃあ知り合いがスカウトされるかもしれないね。応援してあげないと」

「そうだけど、あんまり顔は合わせたくないかな」

「あ……そっか、ごめん」


 チートを使ってプロゲーマーの夢をあきらめたヒナにとって、良い思い出ばかりじゃないのかもしれない。


「まあいいって! それよりも、早く家具を見に行こうよ!」

「うん!」


 そして歩き出そうとした瞬間。

 慌てたように私たちのところへと走ってくる人影が見えた。

 白い髪をなびかせて、ふわふわの魔法少女衣装が揺れるその子は、昨日出会った女の子だった。


「って、また!?」

「待って! お願いがあるの!」


 昨日のような怒った雰囲気ではない。どこか思いつめたような表情の女の人は、今にも泣きだしそうな顔のまま、ヒナへと視線を向けた。


「お願い! 私についてきて」


 ヒナがまた私の手を取って走り出そうとしたけど、たぶんここは逃げちゃダメなんだと思う。


「ごめんね、私部外者だから二人の関係も何があったのかもわからないけど、それでも話を聞いてあげた方がいいと思うんだ」

「シズネ……」


 女の子は驚いたように私を見つめると、頭を下げた。


「ありがとう。じゃあ行こう」


 そしてヒナの手を取り、転移する。

 そこは質素な部屋だった。


 家具や壁紙はすべて木製のもので統一され、必要最低限の壁紙とイスだけが設置された部屋だ。

 ヒナの物に比べるとかなり、家具の数も少ない。

 むしろ私の部屋の方が近いくらい……。


 そして女の子はそのまま、部屋の扉を開ける。扉をくぐった先はMKDの世界だ!


「って、いきなりゲームスタートなの!?」

「ごめんね。説明は後で必ずするから」

「わ、私まで!?」


 驚く私とヒナには構わず、全員を引っ張っていくような形で女の子は強引に扉をくぐった。


 っていうか、私は必要なの!?


 そんな疑問を口にするよりも早く、私の視界は光に覆われていくのだった。

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