第24話 協力関係
「チーミング。わかりやすく言えばゲームのシステム的には敵同士だけど、協力しようって手を組む行為のこと」
「手を組むって、私たちは攻撃しないからそっちも攻撃しないでねって感じ?」
「うん、それで協力して敵を倒したりする行為だよ」
確かにそんなことされると、ほかのパーティは勝てなくなる。
なにせ自分たちは二人なのに、相手はもっと人数が多いんだから。
「ゲーム内の平等性の概念から、運営チームはこれを違反行為としているんですよ、マスター」
「じゃあさ、サンディーさんとお茶を飲んでたのって、もしかして違反行為だったりする?」
「グレーゾーンですが、偶発的なもので悪意がないと判断したので問題ありません、というか、問題があれば私がその場で警告しますのでご安心ください」
「まあアカウント停止されたりするのは、よっぽど悪質な時だけだからね」
「それを停止された人がいう?」
「ぐはあぁッ!」
あ、ヒナが倒れた……。
ネタとして扱うには、重い話題だったのかな?
「そ、それで疑似的な協力っていうのはどういうこと? チーミングとは違うの?」
ヒナはゆっくり起き上がると、説明を再開した。
「チーミングは違反行為だけど、今回はみんなチーターを倒したい。でも話し合って一緒に戦うのはダメ。そんな思いが全員の中にあるから協力はしてないけどあえて狙わない。そういう変わった状況が今の戦場ってわけ」
えっと、みんなチーターを倒したい。でも協力はしちゃダメ。
だからチーター以外の人には攻撃せず、協力関係じゃないけど非干渉の状態を作り出しているってこと? なんだか複雑だなぁ。
「確かに難しいね」
「うん、この状況って無言の共通認識が必要だから、シズネが何も知らずに突っ込んでいって、しっちゃかめっちゃか攻撃すると、協力関係が崩れちゃうからさ」
「あー……確かに今の話を聞いてなかったら、やっちゃってたかも……」
サンディーさんが話をせずに言っちゃったのも、そういう理由があったのかな?
「そういうことだから、今の状況っていうのは、シズネが最初に作ろうとしてた、乱戦の状況よりもいい状態だよ。ぶっちゃけここを逃すとさっきの二人を倒すのは無理だと思う。っていうかチーター二人とか手に負えないよ」
パルちゃんがペコペコと頭を下げている。
たしかに、一人でも手に負えないぐらい強いチーターがもう一人いる。
この状況を打開するためにも、今動かないといけないのは確実だった。
「って訳だから準備はいい? ちょうど私の回復も終わったところだよ」
「うん、おっけー! 行こう! 今度こそチーターを倒しにね!」
◆◆◆◆◆
「これでどうだあああ!」
「はああああああああっ!」
魔法少女たちの掛け声が響き渡る戦場に、回復を済ませた私とヒナは降り立った。
全員の攻撃は、さっき私たちが対峙していたチトセと、騎士のチーターへと向けられており、そこには確かに暗黙の了解という疑似的な協力の色がうかがえる。
ここで仲間を減らせば、チーターを倒すことはできない。
そんな思いから全員の気持ちが、一つになっているということだった。
「でも、押されてるね」
「うん」
はじめは全部で二十人以上いた魔法少女たちは、今では十人前後にまで数を減らしている。
ここに集まっているのは腕の立つプレイヤーばかり。ヒナはそう言っていた。
確かにこの試合終盤まで残り、なおかつ敵がチーターだと気が付き協力して倒そうと動けるプレイヤーなら、ベテラン揃いだろう。
でも、そんなプレイヤーが集まっても勝てないほどチーターというのはめちゃくちゃな存在だということだ。
「特にあっちだね。助けに入ってきたほう。あいつがうまくみんなを分断して各個撃破してる」
「どうしよう? 何かいい方法ないかな?」
「う~ん、人数で有利は取れてるから、時間をかけて数を減らされるのは避けたいね。急いで勝負を決めたほうがいい。私が詰めるからうまく援護してね」
「わかった!」
そしてヒナは【
狙うは二人目、騎士姿のチーターだ。
相手はヒナの転移に気が付き、移動先に攻撃をしようするが――。
「させないよ!」
そこへ私は【
攻撃をあきらめ回避しながら、魔法の矢を私目掛けて発射してくる。
「って、そんなところから撃ってくるの!?」
正確に狙わなくても相手に攻撃があたるということは、どんな態勢からでも攻撃できるということだ。
警戒してなかった! 避けられない!
そして身構えた瞬間、どこからか飛んできた魔法の矢が私目掛けて飛んできていた魔法の矢に直撃し、攻撃を相殺した。
「うわぁ、すっごい!」
飛んでる魔法の矢に魔法の矢を当てるってすごすぎない?
しかも確認すると、その魔法を使ったのは、遠くにいるサンディーさんだった。
守ってくれたんだよね?
「逃がすかぁ! 撃ちまくれー!」
気合の入った声でチーターへと攻撃を仕掛けていったのは、【
私がヒナを復活させるために、魔法都市マイノルで出会ったプレイヤーだ。
てっきり両方ともやられたと思っていたけど、うまく生き延びていたらしい。
相変わらず弾幕で戦っているが、逃げる先を塞ぎつつチーターの進路を一つに絞る。
そこへ、【
私とヒナが戦闘エリアギリギリで戦っていた時に対峙した【
うわぁ……すごい連携が取れてる。
通話や作戦会議といった事前の打ち合わせなしで、ここまで連携ができるっていうのは、やっぱりベテランプレイヤーのなせる業なんだろう。
何がすごいって、みんな自分なりの戦い方でしっかりとチーターへ有効な攻撃を、繰り出しているところだ。
強い武器、弱い武器っていうのはあるかもしれないけど、使いこなせばそれはすべて強い武器になる。
自分なりの戦い方で、自分の好きな戦法で、相手を倒す!
そんな意思が伝わってくるみたいだった。
「よし、私だって!」
【
そしてチーターは、すかさず【
『倒しきれなかった! シズネ、何かしてくるから気を付けて!』
ヒナの通信を聞いて、注意深く相手を見ていると、遠くで魔法の矢を構えるのが見えた。
長距離狙撃だ!
でも、動いていれば大丈夫! よけられる。
そう思っていた瞬間、近くにいた魔法少女の一人が頭を抜かれて倒された。
遠距離攻撃の対策法を知っていて、私と同じように移動していた魔法少女が、だ。
「つまりこれって……」
『シズネ! 障害物に隠れて! コイツ偏差撃ちしてくるよ!』
移動していても、その先を予測して攻撃してくる。
これまで通りの回避方法が通じない。
隠れなきゃ!
一歩走り出そうとしたところで気が付いた。
違う! ここで隠れたらもっとピンチになる。
ダメージを与えて、仲間がこれだけいる今の状況を逃したら、もうチーターを倒せない!
生き残りたいだけなら隠れるのが正解だけど、勝ちたいのなら一歩を踏み出さなきゃ!
「ここで倒そう! 今倒さなきゃチャンスはないよ!」
ヒナに聞こえるように叫んだ言葉。
それが聞こえていたのかはわからないけど、周りにいた魔法少女たちが攻撃態勢に入った。
『オッケー! じゃあいくよ!』
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