第20話 決戦前夜
洞窟から出発し、私たちは今マップ中央にある王都グリモへと向かっていた。
「どうして中央なの? できれば隅っこでコソコソしていたいんだけど……」
「チーターをぶったおす! とか威勢がいいこと言ってたのに?」
「そ、それはそれっていうか……」
チーターは倒したいけど、できればこっそり倒したいというか、なんというか。
「まあ理由は簡単だよ。乱戦に持っていきたいから」
「乱戦?」
「うん。今までの戦いでもそうだけど、基本的には普通に戦ってもチーターには勝てないんだよね」
「ヒナでも無理なの?」
「無理無理。狭い建物とかなら可能性はゼロじゃないけど、普通に戦えば絶対負けるよ」
なんか私よりもずっと上手なヒナにいわれると、自信がなくなってくる……。
「だから、ほかの人の力を借りるってわけ! いくらチーターが強くても、同時に十人を倒すことはできないからね。この方法なら勝率は十分にあると思うよ」
「でも、ほかのプレイヤーも敵だよね? 私たちが狙われたりしないかな?」
「そこでシズネの出番ってわけ」
「わ、私!?」
正直ヒナに期待されるような働きができるとは思えないんだけど……。
「大丈夫。敵の視線を誘導したり、狙われないように立ち回ることに限れば、シズネはかなり上手だよ。少なくとも私よりうまい!」
「気が弱いだけな気が……」
「それでもいいんだよ。このゲームは最後に立っていた人が優勝。戦い方は人それぞれだしね。シズネもそれは、ここまでの戦いでよくわかってるでしょ」
「確かに……」
っていうか、ヒナみたいな直接的な戦闘力がすべてのゲームだったら、私はここまで生き残れていない。
このゲームが手段を択ばず、生き残ることを認めてくれているから戦ってこれたんだ。
「シズネがうまく誘導して、周りのパーティをチーターに向かわせる。たぶん一対六の状況なら問題なく勝てるはずだよ」
六人……つまり三パーティをチーターに向けられれば、勝機があるということだ。
「ただし、注意してね。チャンスはたぶん一回だけだよ。失敗すればパーティの数が減って乱戦を作り出せなくなるから」
「また逃げるのは?」
「チーターと戦うときには戦闘エリアがかなり縮んでるだろうし、追いかけられるとやられるんじゃないかな。正直かなり厳しいと思う」
「そっか、戦闘エリアのこと忘れてた」
マップを確認すると、すでに戦闘可能エリアがかなり小さくなっている。
サンディーさんのお店も、すでに戦闘エリア外だ。
「わかった。じゃあ乱戦に持ち込んでチーターを倒す! 絶対やってやるんだから!」
「うん、チャンスは一度。作戦は任せるけど聞きたいことがあったら何でも聞いてね」
「私に聞いてくれても大丈夫ですからね、マスター!」
「うん、頼りにしてる、ヒナもパルちゃんも」
「はいですよ! さながらアニメの最終決戦前夜! 私もおめかしして気合いれていきますですよ~!」
いや、パルちゃんはいつも通りでいいんだけど……。
そして私たちは王都グリモを目指して移動を続けるのだった。
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