第10話 攻撃魔法と補助魔法

 街の中央にある大樹の根本。

 そこにはうっすらと光輝く魔法陣が描かれていた。


「マスター、味方の蘇生中は無防備になります。敵からの攻撃に注意してください」

「うん、わかった」


 そしてパルちゃん指示の元、魔法陣の中央にソウルリングをセットし手をかざす。

 手のひらからマナの光が魔法陣に集まっていき、やがてその光が人の形になっていく。


「蘇生ありがと!」

「うん、おかえり」


 ヒナの復活が成功した!

 ゲームを始めてすぐ一人になっちゃったり、魔法少女に追い掛け回されたりと苦労もしたけど、ようやくまた二人でゲームをプレイできるんだ!


「おめでとうございますですよマスター! でも、できればそれっぽい魔法を詠唱するとか、かっこいい決めポーズを取りながら蘇生を行っていれば、魔法少女ポイントが高かったです」

「そんなこといわれてもね」

「シズネなら五番エモートのポーズが、蘇生の時にはオススメかな」

「ヒナさん! さすが魔法少女とは何かをよくご存じで!」


 そしてガシッと抱き合う二人。

 な、なんか盛り上がってる……。


「とりえあず、サンディーさんのところに戻ろっか? お祝いにアイテム分けてくれるって話だし」

「うん、そうだね。さっきシズネが隠れてた場所は、もう敵がいてもおかしくないから避けたほうがいいよ」

「うん、わかった」


 あれだけ大量のアイテムが散乱している場所なら、確かに誰かがアイテム回収に訪れてもおかしくない。

 まだ復活したばかりで装備が何もないヒナと一緒に、そんなところにいって敵と出くわすようなことは避けたいしね。


「じゃあ、レッツゴー!」

「おー」


◆◆◆◆◆


「お、お邪魔します」

「しまーす!」


 ほかのパーティと出会うこともなく、無事にサンディーさんのお店へとやってきた私たち。

 途中何度か遠くから聞こえてくる戦闘音に、ヒナが突っ込んでいきそうになったのを必死に止めたりしたけど、特別大きな問題は起こっていなかった。


「いらっしゃいませ。あら、シズネちゃん。ってことはそっちの子がお友達ですね」

「ヒナっていいます。復活場所教えてもらっちゃってありがとうございました」

「いいんですよ。でもよかった、シズネちゃんがお店を出て行ったあと戦闘が始まったから、巻き込まれたんじゃないかって心配してたんです」

「な、なんとか、運がよかったって感じで……」


 本当は巻き込まれたどころか、戦闘のど真ん中にいたんだけどね……。


「そうだ! 約束どおり二人にはアイテムをプレゼントしないとですね。シズネちゃんの初プレイ、初復活記念ってことで」

「「ありがとうございます!」」


 二人そろってお礼を言うと、サンディーさんはお店の奥からアイテム袋を持ってきて、私たちに手渡してくれた。

 そして中身を確認すると、ヒナが目を輝かせて興奮気味に話し始める。


「うわぁ、すごい! よくこんなに集められましたね!」

「ショップ店員ですからね、これくらい朝飯前です」


 ヒナの反応的にすごく良いアイテムなのかな?

 まだ、ゲーム内のアイテムを把握していない私からすると、よくわからないんだけど。


「えっと、これってすごいの?」

「うん、中盤ぐらいまではこれだけあれば十分だよ!」


 そしてヒナが説明してくれる。

 なんでも攻撃や補助に使えるカードが複数枚、さらに体力とマナを回復するための宝石もかなりの数をもらったらしい。


「ふふふ……よし、シズネ! 今すぐ敵を倒しに行くよ!」

「えぇ!? せっかく復活できたんだから隠れてようよ」


 頑張って蘇らせたのに、どうして敵を倒しに行かなきゃいけないのか。

 隠れていて、敵が少なくなってきてから、どうすればいいか考えればいいんじゃないの?


「このゲームの難しいところですね。でも隠れていたら、勝つのは難しいですよ」


 おっとりと笑顔を浮かべながらサンディーさんは教えてくれた。


「まず、今渡したのは最低限の装備なんです」

「最低限? でも攻撃用の魔法も補助用の魔法もたくさんありますよ」


 もらったばかりのアイテムを確認する。

 攻撃魔法のカードが3枚。

 【複射マルチシュート】【狙撃アーチャー】【散弾サプレッション】。

 補助用魔法のカードが3枚。

 【飛行フライ】【防御プロテクト】【加速クイック】。

 ここまでの戦いで見たことのあるカードから、まだ効果のわからないカードまでたくさんある。

 回復用の宝石も両方とも五つあるし、これだけあれば十分だと思うけど……。


「魔法カードは一度違う物に切り替えると、装備していたものが消えてしまいますからね。だから複数枚持っていた方がいいんですよ。それに攻撃魔法も補助魔法も全部で七種類あって、そこから使いやすいものを渡しただけなので、最後まで戦い抜くには少し寂しいですね」

「七種類って、そんなにあったんですか?」

「そうですよ。ナビゲートキャラクターは設定してますか?」

「パルちゃんのことですよね?」


 すると、手に持ったステッキからパルちゃんが現れた。

 出たり入ったり、神出鬼没だなぁ。


「パルちゃんですよ! 何か御用ですか?」

「武器の種類について、新人マスターに教えてあげてもらえますか」

「わかりましたです!」


 そしてパルちゃんは、コホンと咳ばらいをしてから話しはじめた。


「攻撃魔法は全部で七つあり、【単射シングルシュート】、【複射マルチシュート】、【狙撃アーチャー】、【砲撃ルーインズ】、【散弾サプレッション】、【乱射スキャッター】、【ソード】があります!」

「そ、そんなに覚えられないって」

「実際にカードや攻撃を見た際に、詳しくお教えするのでなんとなく聞くだけで大丈夫です!」


 とりあえず、攻撃魔法は七つ! よし、覚えた!


「さらに、補助魔法も全部で七つあります! 【飛行フライ】、【浮遊フロート】、【防御プロテクト】、【透明ハイド】、【転移テレポート】、【索敵サーチ】、【加速クイック】ですね」


 こうして聞いてみると、本当に聞いたことのない魔法ばっかりだ。

 うぅ……ゲームって難しい


「ふふ、はじめはなかなか覚えられませんよね。それだけたくさんある中から三種類を渡しただけなので、もっともっと頑張ってアイテムを集めなくちゃ、このさき厳しくなるんです」

「そういうことですか……」


 確かにこれだけの中から三種類を持っているだけっていうのは、心もとないのかもしれない。


「ってわけだから、どんどん戦ってカードを奪いまくるよ! それに戦闘になればシズネも戦う練習ができるしね!」


 そんなこんなで、結局ヒナと一緒に魔法の試し打ちもかねて敵がいる場所へと向かうことになったのだった。

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