第18話
その頃、冒険者ギルドでは
ハゲでムキムキの冒険者ギルドマスターバルダムがギルド室で来客と対面していた。
「……いつまで待たせるかと思ったわい。」
バルダムの向かいに座った老人はそう言いながらテーブルに置かれた書類をめくり、内容を確認していく。
「こちとらギルドマスターになったばかりでよ。まだまだ不慣れなんだ。そこを加味してくれや。」
バルダムは悪びれる様子もなく、足を組み、ソファーに背中を預けて老人を見下すように眺めている。
バルダムの後ろにはギルド職員が立って控えていた。
「……こりゃなんとも……」
老人の呟きに控えているギルド職員が戦々恐々としているが、バルダムは素知らぬ顔だ。
「バルダムよ。これはどういうことじゃ。」
老人は厳しい顔つきのまま話しだした。
「何がだ?」
「この資料に書いてある使途不明金の多さじゃ。何に使った?」
「何に使ったか分からねぇから使途不明金って言うんじゃねぇのか? おいおい、ボケちまったのか?」
バン!
老人は顔を赤くしてテーブルの書類を叩く。
「そんなもんは分かっとる! ギルドで儲けた金の半分が使途不明金として使われておる! こんなものが通ると思っているのか! 」
「あぁ、そのことか。それはな、俺が原因じゃねえ。」
「ギルドマスターのお前が原因じゃなければ何が原因じゃ?」
「こないだ辞めていった職員がよぅ、嫌がらせで書類を捨てちまいやがってなぁ。」
「……それは本当か?」
「そうじゃなかったら、こんな嘘くさい書類を作って提出すると思うか?」
「……その職員の名は?」
バルダムはテーブルに置いてある飲み物で口を潤わせ、喋りだした。
「元、職員だ。名前はなんて言ったか……グ……グ……あぁ、思い出した。グズタだ。」
「……嘘ではあるまいな?」
「おいおい。俺が嘘言う必要あるか? えぇ?」
そう言ってバルダムは老人をギロッと睨む。
「……今回はそう言うことにしておいてやる。」
老人はそう言ってソファーから立ち上がった。
「次はないぞ。」
控えている職員にも聞こえる声で呟き、ギルドマスターの部屋から出ていった。
「へいへい。」
バルダムは立ち上がりもせず、煙たそうに片手で追い出すようなしぐさをする。
バタン。
「あぁ、もうかったりぃなぁ〜。こんなことでいちいちギルドマスターの俺を呼ぶなってんだ。」
老人が出ていってすぐにバルダムはぼやく。
「マスターいいんですか?」
「何がだ?」
控えていた職員がバルダムに尋ねてくる。
「グズタのせいにして良かったんですか?」
「ほっとけ。どうせ捕まってもアイツは何も知らねえ。証拠なんてねぇし。何の問題もねえよ。ただ、あの老人の血圧が上がっちまうだけだ。」
ククク……とバルダムは人をバカにしたような笑いをする。
「グズタをダンジョンで見たって話がありましたが……」
「そうらしいな。でも、何も問題ねえよ。いや、1つあったな。グズタがギルドを通さずにダンジョンに行ったのなら犯罪だからな。見つけたら捕まえるか。」
「どうします?」
「俺たちは善良な冒険者だからな。犯罪者にはしっかりと罪を償ってもらおう。少しでも冒険者の不安が解消されるように懸賞金でもかけとけ。あの老人にもいいアピールになるだろ。」
「分かりました。」
控えていた職員が頭を下げ、ギルド室から出ていく。
「ここは俺の城だ。誰にも邪魔させねえ。」
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