第14話
「クスタ君。君に仕事をお願いしたいんだ。」
裏方の事務室で仕事をしていると、ダンジョンマスターから直々に声がかかった。お願いって……一体何だろう?
「……どんな仕事ですか?」
「このダンジョン街を出て少し進むと階段があるんだ。降りていくと森があってそこに住んでいる魔物と話をしてきて欲しいんだ。」
「ダンジョンの外に出れるんですか!?」
ダンジョンマスターのサランは苦笑いをして応える。
「アハハ、ごめんごめん。ダンジョンからは出られないよ。クスタ君はダンジョンのこと知らなかったんだったね。ここのダンジョンは地下に森があるんだよ。」
「……森があるんですか?」
ダンジョンの入り口は洞窟なのに……何処か外に繋がっているのか?
「……ダンジョンの中はそれぞれのギルドマスターが管理しているんだ。色々な魔物が生活しやすい環境が作られているんだよ。」
「へぇ、そうなんですね。」
「そうそう。だからダンジョンの中に湖があったり、沼地があったりするんだよ。」
「そしてここには森があると?」
「その通り。そしてその森に新しい魔物が住み着いたみたいだから、その魔物の様子を見てきて欲しいんだ。」
えっ……新しい魔物?
「……新しい魔物って言うのは……」
「うん。外からやってきた魔物だね。ここにどうして来たのか理由も分かれば助かるかな。」
「あの、なんで僕が選ばれたんですか?」
何か、とても危険な感じがするんだけど……
「本当は他の職員に行ってもらう予定だったんだけど、急遽調べないといけないことが出来たからね。そっちで手一杯になってるのさ。」
ダンジョンマスターのサランが苦笑しながら伝えてくる。確かに例外の件は大変だと思うけどさ。
「それに、クスタ君はダンジョンを知らないみたいだから、安全にダンジョンを回れるなら見てもらおうと思ってね。」
「安全? 安全なんですか?」
安全に回れるって何だろう?
「もちろん安全だよ。生命の危険があるならクスタ君には行ってもらわないよ。ギルドの職員はみんな腕章をつけてもらってるよね? これって実はダンジョン内でダメージを受けない魔道具なんだよ。」
「……そんなの初めて聞きました。」
腕につけた腕章をマジマジと見ながらつぶやく。
「冒険者に知られると困るしね。クスタ君も街に行った時も内緒にしといてね。内緒にしないと……」
「……しないと……?」
……どうなるの?
ゴクッ。
「マシュー兄妹みたいになるよ。」
ダンジョンマスターのサランから禍々しいオーラがと一緒に重苦しいプレッシャーのような重力がかけられた。禍々しいオーラは僕のそばにやってきて、首をかっ切るようなポーズをして見せた。
「内緒にします。」
そう言うしかなかった。
「うん、ありがとう。じゃあ早速ギルド内で必要な物を揃えて行ってきてくれるかな。」
フッとプレッシャーとオーラが消えて笑顔のダンジョンマスターのサランがこっちにお願いをしてくる。安全な仕事を頼まれたのなら行くしかないか。
「分かりました。準備していってきます。」
僕はダンジョンの中、森に住み着いた魔物と会うためにダンジョンを進むことになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます