第13話
「……」
受付で向かい合っている魔物はさっきから無言のプレッシャーを放っている。
「……」
こちらも相手の魔物が何をしたいのか分からず、かける言葉もなくただ時間だけが過ぎていく。それでも相手の魔物は何も話してくれない。
「……」
向かいに座っているゴーレムは座ったまま動かない。
ギシギシ……ギシギシ……
ゴーレムの椅子だけが悲鳴を上げていた。
他の事務員を見てみるが、誰も助けにきてくれない。目を合わせてもくれない。
このままではラチがあかない。
「あの、どういったご要件でしょうか?」
「……」
こちらの問いかけに何も反応がない。このゴーレムは何がしたいんだろう。
「あの……ご要件がなければ、他の方に席を譲ってもらえますか?」
「……」
ゴーレムは席を立ち上がりギルドを出ていった。
……あのゴーレムは何がしたかったんだろう?
「あのゴーレム時々ギルドに来るけどいつもああなのよ。」
「そうなんですか?」
仕事終わりにギルドの職員と話をしていたら、あのゴーレムの話になった。
最近現れるようになったゴーレムはあのように受付に来ては何も喋らずに帰っていくことを繰り返しているみたいだ。他の職員もほどほど困っているようだ。
「何がしたいのかねぇ。あのゴーレムは。」
ゴーレム……このダンジョンには喋る魔物ばっかりだけど、無口な魔物もいたんだな。
「本当。何か喋ってくれるといいのに。」
「え? ゴーレムって喋れるんですか?」
「あぁ、クスタ君は知らないんだね。ゴーレムって酒飲みなんだよ。」
「そうそう。飲みすぎて身体が赤く光るんだよね。」
「ゴーレム光るところに酒場ありって有名な言葉だよ。」
……街だとドワーフが3人あつまれば酒場ができるって言われてるけど、ダンジョンだとゴーレムが光るんだ……
ダンジョンというか、魔物ってのは奥深いものだな。
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