第12話

「二番目でお待ちの魔物様、こちらどうぞ〜。」


あれから僕はダンジョンギルドで事務員をすることになった。


仕事に関しては冒険者ギルドとほとんど同じだったから、数日もすると仕事に馴染めることができた。


以前と違うのは


「クスタ〜。これお願いゴブ。」


窓口に来るのが魔物ってぐらいだ。


「ゴブリンさんこんにちは。」


ゴブリンさんは冒険者の落としていった武器や防具、タグを持ってくる。


「ゴブリンさん強いですねぇ。」


「そんなことないゴブよ。仲間はたくさん死んだゴブよ。それでも勝利したから戦ったかいがあったゴブよ。」


ダンジョンに入って初めて知ったのだが、ダンジョンの魔物はあまり死ぬことを怖がらない。


理由は分からないが、仲間の魔物が帰ってこなくてもケロッとしている。


そこは冒険者と魔物で違うところだろうか。


「……はい。お持ちいただいた品物の確認が終わりました。金額をご確認ください。」


「……うん。間違いないゴブ。」


「では、お疲れ様でした。また来られるのをお待ちしています。」


この挨拶は僕が心がけている挨拶だ。なかなか同じ魔物がギルドに戻ってくることがない実態に悲しくなってしまい、口ぐせになってしまった。


思い返せば、ダンジョンでの生活も一月たった。ダンジョンマスターのサランも色々と動いてくれているようで、


「まだ解決に時間がかかるようなんだ。ごめんね。」


そう言って気にかけてくれている。


今回のことはそれだけ重大なことだったようだ。


あれからマシュー兄妹も見ていない。一度ダンジョンマスターのサランに尋ねたところ、


「あいつらは本部に行って取り調べ中だ。あいつらが自分で考えて例外を使うとは思えないからな。」


良かったなマシュー兄妹。君たちはダンジョンマスターのサランに信用されてるよ。


「分かったことがあればすぐに知らせるからね。それまでは事務員を頼むよ。こっちとしたらとても助かってるから、このまま就職してくれるとありがたいけどね。」


そう言って笑顔で就職を勧めてくる。


「街に戻ってから考えてみます。」


僕もいつもと同じ返事をする。


いつまでここで働くことになるのか分からないけど、今できることをやっていこう。


「お待たせしました〜。二番目でお待ちの魔物様、こちらどうぞ。」

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