第9話

「うぅ……」


うなされるような声が耳に聞こえてきた。


俺は寝転びながら身体の体勢を変えるため身じろぎをする。


「いつっ……」


あ、これ俺の声か。


あれ、たしか何かとぶつかったような記憶があるんだが……


「あ、目が覚めたみたいだね。」


自分とは違う声に身じろぎをして、声をした方に顔を向けると、見知らぬ人がイスに座り、近くのテーブルに本を置いているところだった。


「始めまして。私はこのダンジョンのマスターやってるサラン。クスタ君に聞くんだけど何で死ぬの?」


「……ダンジョンの外に出たいからです。」


「何かこっちに持ってくるのを忘れたものとかあるの? 他のやつに取りに行かせるよ?」


「いや、そうじゃなくて、ダンジョンから出たいんです。」



ダンジョンマスターのサランは首をかしげる。


「何で?」


「何でって……街で仕事を探すためです。」


俺は寝ていたベッドから起き上がり、ベッドに座ったままサランと会話を続けた。


「仕事って……ダンジョンギルドで仕事してくれたらいいんだよ?」


「そう言われても……ダンジョンで働くなんて思ってもなかったんで。」


「え?……契約したでしょ?」


「契約? 俺、契約したんですか?」


そんな紙を書いた記憶はないぞ。


サランは驚いた様子で身を乗り出してくる。


「……えっ? ウソでしょ?」


「そんな紙にサインした覚えはないので街へ帰らせてください!」


「それ本当? ……でも、一度契約したら出られないの知ってるでしょ?」


「えっ?」


「えっ?」


俺とサランは顔を見合わせた。


「……街に戻れないのですか?」


「うん、そうだよ。それも契約書に書いてあったんだけど?」


「……契約書を見ていないので分かりません。」


「……ちょっと調べてみるよ。少し待っててね。」


ダンジョンマスタ―のサランはパンパンと手を鳴らし、誰かを呼んだ。

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