第18章〜手助け〜

第18章〜手助け〜


あれから2、3週間が経った。


アスジロウは今も冒険者協会で取調べを受けている。共犯者のひわんも同様だ。


俺はニイやブゥたちと別れ、今は下級冒険者たちの依頼を片っ端から手伝っている。


向こうの世界と同じように俺はたくさんの人を助けていきたい。それに下級冒険者だけでなくニイやオトのような中級冒険者、さらに上の上級冒険者も・・・・


そして今俺は依頼を手伝うため頼ってくれた下級冒険者たちと待ち合わせをしている。


「もしかして尋ねてくれたKIDさんですかぁ!」


「え、あ、ああ、そうだけど・・・」


いきなり話しかけられた俺は咄嗟に返事をした。


話しかけてきたのはどうみても俺より年齢は年下の男女2人だった。


「君たちが僕を頼ってくれたのかい?」


年下だと確信し、俺は気軽に話かけた。


「は、はい、そうですけど・・・」


2人の男女は困惑している。これは俺のコミュニケーション能力の低さが原因だ。


「とりあえず目的地に行こうか。」


俺はそう言いながら2人と共に提示されていた目的地へと向かった。


移動中俺は2人と打ち解けあった。


この2人は俺と同じかけだし冒険者らしい。


「KIDさんも駆け出しなんですよね?」


女の子が俺に聞いてきた。


「あぁ。そうだよ。」


俺は返答した。


「聞きましたよ。魔王軍の下っ端を倒して人質に囚われていた冒険者たちを救出したんですよね!?同じ駆け出しとは思えないくらいすごいです!そんなあなたが街の掲示板に貼っていた貼り紙をみて私たち真っ先に依頼したんです!」


ここまで褒められると素直に嬉しい。


それをみた男の子が俺に話しかけてきた。


「KIDさん・・・古代兵器の伝説は知っていますか?」


「古代兵器?」


「そうなんですか。教科書にも載ってたのでみんな知ってると思っていたんですが・・・・」


俺には何のことかさっぱりだった。すると男の子は話を続けた。


「昔、冒険者が魔王軍に対抗するための兵器があったんです。ですがその力は街一つ消滅させるくらい強力で危険と判断されとあるダンジョンに封じ込められたらしいんですよ。」


「へ、へえー」


全く知らない。聞いたこともない。俺は微妙な対応をしてしまった。


そう言いながらも俺たちは目的地へ着いた。


目的地の場所は一見、草は変色し花は枯れ果てている。ここは荒地なのか・・・?


「えっと、ここはどこなのかな?」


俺は2人に聞いた。


「ここは僕たちが昔からよく出入りしてた思い出の草原だったんです。」


「そうなのか・・・」


隣にいる女の子も話した。


「いまはこんな荒地になっていましたがつい先程まではこんなんじゃなかったんです・・・」


「もしかして、これも魔王軍のしわざなのか?」


俺は聞いた。


「わかりません。でもこの現象は明らかにおかしいんです。そう思って冒険者さん達に助けを求めたんですが誰一人耳を傾けてくれなくて・・・」


男の子が答えた。


「それで俺を頼ったのか・・・」


2人は心配そうな表情で俺を見つめていた。


「あぁ。任せてくれ。」


「「ありがとうございます!」」


2人は真剣な眼差しでこちらをみていた。


俺は意識を一点に集中した。


ドキンっ


その瞬間俺の視界には黒いモヤが映った。


それはその場に留まらずにどんどん広がっていく様子を目視した。


そして俺は気付き2人に声をかけた。


「正体がわかったぞ。草原が荒地と化したのは魔王軍の魔力が原因だ。周り全体に黒いモヤがかかっている。今も徐々に広がっている」


「「!?」」


「おそらくだが近くに魔法陣があるはずだ。」


そう言いながら俺は捜索を続けた。


周りを見渡したがどこにも魔法陣らしき物は見つからない。


困り果てているところに男の子が声をかけてきた。


「黒いモヤの出どころとかわかりますか?」


そう言われ俺は黒いモヤを見渡した。


そして黒いモヤが上に上がっているのを目視した。


「!?」


見上げた先には魔法陣があった。空に魔法陣があったのだ。


「みつけたぞ!」


俺は弓矢を取り出した。


この2、3週間に俺はなんとか頑張って魔法を習得した。


酒屋のバイトをし、日銭を稼ぎ魔法の習得に費やした。


この世界では下級の魔法の秘伝書は市販で購入することができるらしくその秘伝書を使い俺は魔法を習得できた。


とは言っても魔法の習得は一つ一つの魔法に違いが出ているため各個人に扱える魔法は限られていると言ってもいい。


自分の感性や個性に合った魔法を選び習得する必要があるらしい。


自分に合っていない魔法の習得はかなり困難と言われている。


俺はその数多くの魔法の中で冒険者の役に立とうと思い主にサポートに徹するための魔法と魔法陣破壊の魔法を習得した。


魔法陣に向けて狙いを定め俺は詠唱を始めた。


「Zerstörung des magischen Kreises(魔法陣破壊)」


ニイやオトほどの魔力はないが俺もなんとか会得できた。


矢に魔力が込められ、俺はそれを放った。


若干狙いが逸れたが魔法の力で軌道が変わり・・・


スパーン


魔法陣はたしかに命中した。


ピキッピキピキ


ニイやオトとは違い徐々にヒビが入る。


スパーン


俺はもう一発矢を放った。これも命中した。


ピキッピキピキパリーン


今度こそ魔法陣が壊れた。


「よし。やったぞ。」


俺の声を聞き男女は安心する。


黒いモヤは次第に晴れていった。


これでとりあえずは大丈夫だろう。


「ありがとうございます!KIDさん!」


男の子が声をかけてきた。


「あぁ心配ないさ。何かあったらまた言ってくれ。おそらくまだ解決できてないだろうからさ。」


「はい、わかりました。」


女の子が返事をした。


ガサッ


何かの音がした


「誰だ!?」


俺は叫んだ・・・・


・・・が、そこにはなにもいなかった。


どうやら気のせいだったようだ。


「「?」」


男女はキョトンとしている。


「あぁなんでもないよ。それじゃ。」


そう言い残し、手を振る2人の背を受けて俺は真っ直ぐ街へ戻った。


          第18章〜END〜
































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