第15章〜知恵〜

第15章〜知恵〜


「ニイさあああああん!!オトさあああああああああん!!」


あまりにも衝撃的な光景に俺は2人の名を叫ぶしかできなかった。


俺は状況を考えた。2人が重傷を負った今じゃやつを倒すのはおそらく難しいだろう。


とにかく俺は近くにいたブゥとベビパウに小声で指示をだした。


「とにかく撤退しよう。ベビパウ。なにか逃げれるようなものを持っていないか?」


それを聞いたベビパウは静かに鞄の中から球を出した。おそらくこれは市街でみかけた煙玉だ。


アスジロウはこちらをみてニヤリと笑みを浮かべている。


そして次の瞬間


「ぎゃああああああ」


いきなり9体のゴブリンが再び現れた。


「なんだと!?」


俺は今にも倒れそうな身体を無理やり起こして意識を一点に集中した。


ドキッ


うまく能力が発動した。


そして部屋の奥をみてみるとそこには魔法陣が設置されてあった。おそらくあそこからゴブリンが現れるのだろう。おそらく長居はできない。


俺はベビパウとブゥにアイコンタクトで指示をした。


そして次の瞬間。ベビパウが煙玉を地面に叩きつけた。


そして瞬時に俺とブゥはニイとオトを連れ出し出口へ向かった


が、次の瞬間


ウィーン ガシャン


扉の閉まる音が聞こえた。


俺たちはそれを気にせず出口へ向かったが先程まではなかった扉に阻まれていた。


「嘘だろ・・・・」


やがて煙が止みその場で座り食べ物を口にしながら笑みを浮かべるアスジロウの姿が見えた。


「ここにきた時点でお前たちは逃げれないよ。」


俺たち3人は武器を構えた。


が、その時アスジロウが詠唱を始めた。


「Wegblasen(吹き飛ばせ)」


アスジロウのまわりを魔法陣が囲いアスジロウは息を吹きその瞬間大きな突風が起こった。


以前ニイやオトも同じような魔法を使っていたがそれよりも遥かに上の突風だと身をもって感じた。


俺たちは吹き飛ばされ壁に叩きつけられた。


「ガハッ・・・」


衝撃が強すぎて意識が途絶えそうだ。


俺は踏ん張った。


周りに横たわっているニイやオト。一緒に吹き飛ばされ膝をついているブゥやヘビパウを見て俺は一度状況を整理した。


あいつが従えているゴブリンが厄介だ。さらにやつがあいつらに魔法陣を植え付けると自爆機能が備わりさらに厄介になる。


たとえ魔法陣破壊の魔法を放ったとしてもやつの魔法でやつの元へ吸い寄せられ吸収されるのがオチだ。


おそらく撤退することも不可能だろう。


アスジロウは余裕の笑みを浮かべ飯を食い始めていた。


近くに大皿がありそこには大量の食べ物が置かれてある。それをとっては食べ、とっては食べを繰り返している。


俺の中で一つの疑問が起こった。


それはなぜ事前にゴブリンたちに魔法陣を植え付けていなかったのか。


だが考え事をしている暇はなかった。


ゴブリンが今にも襲いかかってきそうだ。


アスジロウによって魔法陣を植え付けられたゴブリンは自爆機能をもっているから接近戦は無理だ。それに魔法を放ってもアスジロウに吸収される。


俺たちにできることはただ一つ


もしかしたら何らかの方法でアスジロウを騙し討ちできれば隙が生まれゴブリンやゴブリンを増殖させるために設置されてある魔法陣を破壊できるかもしれない。


俺はとにかく知恵を絞った。


「まだ煙玉持ってるか?それと何か武器持ってないか?」


俺はベビパウに声をかけた。そしてベビパウは無言で鞄の中から煙玉を取り出した。おそらくこれが最後の1個だろう。


そしてもう一つ玉を出した。これは市街でみかけた爆弾だった。


爆弾があったとしてもやつに吸収される。どうにか隙をついてこいつをくれてやらないと・・・・


そして俺は余裕の笑みを浮かべ大皿に乗っている食べ物を次から次へと食べるアスジロウの姿がみえた。


やつはいま食べ物に夢中だ。


俺はやつを騙し討ちする方法を思いついた。まず俺はその爆弾を持ってブゥに話しかけた。


「この爆弾を食べ物そっくりに変えることはできるか?」


無茶振りだ。ニイとオトも負傷。俺はこの世界に来たばかりの素人だから魔法も当然使えない。ベビパウもそうだろう。頼れるのはブゥしかいない。そんなブゥが口を開いた。


「中身は変えられないが見た目はそっくりに変える物質変化の魔法を使えることはできるぞ。」


その声と共に俺は爆弾を差し出した。


市街で見かけたがこの爆弾は魔法を予め込めておくことで好きなタイミングで起爆ができるらしい。


ブゥは手をかざし爆弾に魔法を込め、そしてその直後に小さく詠唱を始めた。


「Materialänderung(物質変化)」


爆弾は見た目だけだが魔法によりパンに変化した。


「よし。ありがとう。あとはこれを上手く大皿の手前まで持っていくことだ。」


持っていったとしても気づかれる。なんとかして誤魔化さなければならない。


俺はやつを出し抜くための作戦を思いついた。


「みんな。聞いてくれ。」


     〜第15章〜 END
















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る