第8章〜追跡〜

第8章〜追跡〜


「はあはあはあはあはあ」


息を切らしながら僕はとにかく走った。


俺は屋根を渡っては渡ってはを繰り返していた。もうそろそろ広い市街を抜け出せそうだ。


「もうここまできたら追ってこないだろう」


だがその時。


カタカタカタカタカタカタ


「!?」



後ろから音が聞こえる。いや、迫ってくる


「追い詰めたぞ!ドロボウ!」


後ろから声が聞こえた。


「!?」


そこに現れたのは2人組だった。1人は街でキョロキョロ動き回ってるおかしい人。1人は見慣れない冒険者だ。そしてその2人の後ろにまた1人現れた。市街で1度や2度見かけたことのある冒険者だった。


「どうして、ここがわかった?」


俺は戸惑った。俺は追いつかれないように屋根を渡り誰も追ってこれないようなスピードで逃げたはずだ。すると、ひとりの冒険者が口を開いた。


「見えたんだよ。お前の手がかりが」


 ・・・・・・・・・


「なあ、本当に見えるのか?」


ブゥが聞いてきた。


「ああ、はっきりとわかる。やつは先程と同じように屋根を渡り市街を出ようとしている。」


「俺にはわかるんだ。やつの足跡、行き先が・・・」


「ほんとうなのか。」


「ああ。300メートル先にやつがいるのがわかる。そこまで屋根を渡って足跡が続いてるからな。」


話を聞いている2人は唖然としていた。すると、ベビパウが口を開いた。


「KIDさぁ〜ん行きましょうよぉ〜」


ベビパウは真っ先に駆け出した。


俺たちは後に続いた。


・・・・・


「そんな、馬鹿な!?」


「さあ、観念するんだ。」


ブゥが口を開いた。


ドキンっ!


俺は突然意識が遠のいていき、その場から崩れ落ちた。どうやらあの時と同じように体力に限界が来たようだ。


「おい、大丈夫か!?」


ブゥが心配してきた。


「ああ、大丈夫だ。そんなことより・・・」


受け答えをした。そして俺は今にも倒れそうな身体を無理やり起こしてその視線は泥棒の方に向けた。


「さあ、観念しろ・・・」


「お前は、誰だ?」


そう言うと男の黒い影がだんだんと明るくなっていき顔が露わになった。


「!?」


こいつの顔は、俺と同じ暴露系配信者ストリーマーの"ひわん"。一時期俺はこいつに訴訟された。だからこいつの顔は痛いほどよく記憶の中に残っている。


「ひわん、なのか?」


男がコクリと頷いた。


「お前、数ヶ月前から突如ネットから姿を消したかと思いきやまさか転生してたなんてな・・・・」


すると、ひわんが口を開いた。


「!?」


「お前は、KIDなのか?それに横にいるキノコ頭のやろうはベビーパウダーか」


「お前たちもこの世界に来たのか。」


ひわんは話を続けた。


「邪魔をするな。俺は今朝からなにも食べていない。ここは異世界だ。前の世界のように法律に縛られた暮らしなんて存在しない。だから俺はこの世界でやりたいようにやる。」


ひわんは言った。俺の隣にいるベビパウは震えていた。ベビパウは過去に向こうの世界でひわんに脅迫された過去を持っている。そして困惑しているブゥが俺に尋ねてきた。


「なあ、こいつはいったいなんなんだ?」


「俺たちの知り合いさ。」


そして、俺はひわんのほうに視線を向けて口を開いた。


「お前は終わりだ。ひわん」


「市街から出るためにある門には基本門番が付いているとブゥから聞いた。お前が向かっている市街から出るための門は他の門と違って裏口のような小さい門なので門番はいないこともな。」


「だからお前はわざわざ屋根を渡って遠回りしてそこを目指した。安全に盗みを働くために。そうだろ?」


「さすがだな。KID。でも俺はこの世界で誰も追いつけないような速さを手に入れた。俺はお前らを振り切って市街を出て隣町に行かせてもらうぜ。」


ひわんは答えた。


「残念だがそうはいかない。ほら、門が開くぞ。その門をよくみてみろ。」


俺の声と共にひわんが振り返って門の方を向いた。


開かれた門の向こうには何十人の冒険者が立ち塞がっていた。


「!?」


「お前、隣町でかなり有名だったらしいな。沢山の人のヘイトを買ってたおかげか隣町でお前に対して恨みを持っている冒険者がたくさんいると聞いて事前にブゥに連絡させてたんだ。」


「さあ。観念しろ!」


俺は言った。すると。


「くそっクソおおおおおおおお」


ひわんは叫んだと同時に袋から食糧を取り出し貪りだした。


「おい!それは街の人の食糧だぞ!」


ブゥが止めに入ろうとしたその時


「・・・・・・」


ひわんの動きがピタリと止まった。


バタンっ


「ひわんはその場から崩れ落ちた」


「うっ........体が.......」


ひわんはもがいていた。すると、先程まで震えていたベビパウが立ち上がり口を開いた。


「引っかかりましたねぇ〜ひわんすぁん〜」


「え?」


ひわんはキョトンとしている


「盗むと思って食材の中に毒入れといたんですょぉ〜ちょっと痺れるだけでしにはしないので安心してください〜」


「あぁ....」


俺やブゥはもちろん聞かされていない。ブゥは唖然としている。ベビパウは昔からこういうヤバイやつだ。


「かかれー!」


屋根を登ってきた数十人の冒険者が倒れ込んでいるひわんを取り押さえた。


     〜第8章〜 END

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