「自己主張、しないんだね?」


「どんな才能にも替えが利く時代なのに、主張しても意味ないよ。自分の代わりも、自分よりも優れた人間も、たくさんいる」


「そっか」


 並んで、歩く。


「まあ、ばきばきの腹筋イラストのサムネイルは、自己主張すごいと思うけど」


「でしょでしょ。お気に入りなの」


「そうなんですか。ぜんぜん分かんないや」


「あなたのサムネイルは、なんなの?」


「普通だよ。普通。普通の画像」


「デスクトップの背景みたいな画像だったりして」


「ん。ばかにしてんの?」


 当たってるけどな。


「どこまでも綺麗で。澄んでる画像とかかな。だったらいいな」


「は?」


「わたしね。どうしても、会いたいひとがいるの」


「はあ」


「その人に会ったらね。ありがとう、わたしに、歩く力をくれて。そう言うの。それだけが、どうしても、言いたくて」


「なんだよ急に。おまえ筋トレばかじゃん。おれよりも歩く力あるじゃん」


「うん。筋トレ大好き」


「なのに、会いたいひととか歩く力とか言われても、現実感に欠けるな。乙女か?」


「その、助けてくれた人と、一緒にいるための筋トレだから。今度は、わたしがね。わたしを助けてくれたひとを、助けるの」


「おれ。おまえを助けた記憶ないけど」


「そっか。じゃあ、助けてよ。SNSおしえて?」


「やだよ」


 ばれるだろうが。俺が移植元の人間だって。

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