23――制限

「同じ宝玉は10個迄なのか……」


カイルが二つ目の合成した宝玉を吸収できなかった事で、その事実が判明する。

俺の場合スロットが1つしかなかったし、サラにも混合を1つ渡していただけなので気づかなかったが、どうやら同種の宝玉は最大10個迄しかとり込めない様だ。


ドラゴンスロットの方も合わせると俺は10個以上詰め込めている訳だが、そもそもこれは特殊な物である。

通常のスロットとは別扱いなのだろう。


「スロットは最大10個までと言われていますし、それと関連しているのでしょう」


カイルに言われて成程と納得する。

女神から齎された祝福スロットは、10個以上を想定されてていないのだろう。


「まいったなぁ」


合成した宝玉の複数積みでエルフ達が鬼パワーアップとか考えていたのだが、世の中そう甘くはなかった様だ。


「まあ、早い時点で分かってよかったとしよう」


最初にカイル用に作って渡しただけなので、まだ数個しか作っていない。

作り終わってから気づいたら偉い事になる所だ。

早めに気付けて本当に良かった。


「しかし10個縛りとなると、サブは付けない方が良さそうだな」


サブの方はレベル5までしか合成できない。

そしてレベル10とレベル5が二つでは、前者の方が確実に能力は上昇する。

その為スロット数がかつかつでもない限り、サブを付けるのは効率が悪い。


取り敢えず混合レベル10を人数分作り、それ以外の種類もレベル10になる様に作っていく。

当然数はぴったりある訳ではないので、余りが出来る訳だが……


「余った物は、眷属様がお納めください」


「え?いいんですか?」


「本来なら全て差し上げるべき物です。どうぞお受け取り下さい」


不老長寿の宝玉を貰っているので、村を救ったお礼と考えても十分過ぎる以上の礼を貰っているのだが、まあくれると言うのなら遠慮なく貰っておく事にしよう。

こういうのは断ると、逆に失礼に当たるからな。


「そうですか?じゃあ遠慮なく」


欲しかった力の宝玉が5つあるので、後で自分用に合成しておくとしよう。

闇の使徒とやり合う事を考えると、これが手に入ったのは有難い。

何せここ最近全然売ってないからな、これと速さの宝玉だけはマジで。


「お茶、持ってきました」


「ありがとう」


サラが入れてくれたお茶を飲み、俺は一息つく。

甘い香りのする、お茶というよりはハーブティーと言った味わいの物だ。


「それで、眷属様はこれからどうされるおつもりなのですか?」


「奴らは黄金の宝玉を狙って来るでしょうから……まあ冒険者として生計を立てながら、返り討ちにしつつ情報収集を行うつもりです。現状だと、相手の事が殆ど分かってないので」


闇の使途に付いて分かっている事は、名前と黄金の宝玉を狙っている事ぐらいである。

正直、手がかりとしては弱すぎて探しようがない。

だから襲って来る奴らを掴まえるなりなんなりして、情報を少しづつでも集めていく予定だ。


「でしたら、カルラ山に行ってみられてはいかがでしょうか?」


「カルラ山?」


「此処から東にある山で、そこで出会った幻獣様から我らの村へと黄金の宝玉が齎されています。そこにいらっしゃるのは、ドラゴンではなく鳥型の幻獣様と聞き及んでます」


あのドラゴンとは別の幻獣か……


少し迷う。

情報を与えてくれるのなら大歓迎なのだが、厄介な事を押し付けられないとも限らないからだ。

現にドラゴンには、闇の使徒をどうにかしろと言われてしまっているし。


「うーん、そうですね。まあ行ってみます」


迷った末、俺は行く事に決める。

ひょっとしたら、新しいスロットも貰えるかもしれないしな。

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