15――天才
「ウィンドアタック!」
サラが風の魔法を放つ。
初級の簡単な魔法だ。
が――
「マジか!?」
それは突風を巻き起こし、目の前の人間サイズの大岩を吹き飛ばしてしまった。
俺はそのパワーに、思わず声を上げる。
「こ……こんな感じです」
もじもじと謙遜してるが、とんでもない威力だった。
俺もこの魔法は使えるが、ちょっとした風を起こすのが限界だ。
俺自身魔法がそれ程得意ではないとはいえ、いくら何でも次元が違い過ぎるぞ。
「凄いな……魔力アップの宝玉の効果を加味しても、とんでもない威力だぞ」
「いえ……その……宝玉は幻獣様から……貰ったものだけで……」
「マジで!?」
やばい。
宝玉無しでこの威力とか……この子魔法の天才だ。
「魔法は……凄く得意で……」
「因みにスロットはいくつあるんだ」
亜人であるエルフにも当然、
その数が多い様なら、この子は確実に大化けするだろう。
まあ少なくとも、現状でも余裕で戦力になりそうではあるが。
「8個です……」
「8!?」
やべぇ。
さっきから俺、驚いてばっかりだぞ。
スロットの上限は10個と言われているが、10個持ちは長い歴史の中でも数人しか確認されていない。
それよりも1個少ない9個にしても、一時代に2-3人いるかどうかの確立だった。
8個にしたって、王都中探して数人いるかどうかのレベルだ。
まさかスロット8個持ちの天才魔導師とは……まだ子供とは言えこりゃ侮れないぞ。
って、そういやサラは幻獣から貰ったスロットがあるのか。
という事は素のスロットは7個と言う事になるな。
まあ7個でも大概凄いが。
「幻獣の宝玉ってのは、やっぱドラゴンスロットに嵌めてるのか?」
何となく聞いてみる。
ドラゴンスロットは効果は低いが、ブーストの効果はいざという時頼もしい力になる。
もしそれを呪い封じの為だけに埋めてしまっているなら、勿体ない話だ。
まあ外したら俺に呪いが掛かりかねないから、付け替えとかはしないけど。
「ドラゴンスロット?あの……それは一体……なんでしょう?」
サラが不思議そうに聞き返してくる。
俺は左手の甲を見せた。
「ほら、これさ。サラにもあるだろ?」
「いえ……私は……」
あれ?
貰ってないのか?
何でだ?
「宝玉を貰う時、ドラゴンから貰わなかったのか?クッソ痛いあれ」
言ってから気づく。
子供には、あの痛みは刺激が強すぎる事に。
きっとドラゴンはサラが子供だったから付与しなかったのだろう。
「いえ……私は幻獣様にあった事は無くて……昔の長老様が……貰ったものだって。それを、ずっと里の宝として取っていた物を……皆は……私……わたしにっ……」
里の仲間の事を思い出したのか、サラは嗚咽を漏らし出す。
どうやら余計な事を聞いてしまった様だ。
「大丈夫だ!サラ!俺が絶対何とかしてやるから!だから泣かないでくれ」
俺は彼女の頭を撫でて気休めを言う。
ぶっちゃけ、何をどうしたら呪いが解けるのかまるで分らない現状、俺が何とかしてやると言ってもそこには何の保証もない。
だがそれでも、誰かに大丈夫だと言われると心が落ち着くものだ。
「ご……ごめんなさい……」
「謝らなくていいさ」
俺はサラが落ち着くまで頭を撫で続けた。
しかし8スロット持ちか……残りの7か所全てに合成したレベル10の魔力アップを付けると想定した場合、魔力は11,5倍になる。
そこに混合レベル10を混ぜると、乗算なので更に倍率は跳ね上がって……
そうなるともう、それだけでサラの魔力は大魔導士とか呼ばれている連中を遥かに超える物になるだろう。
まあ魔力の宝玉は大銀貨4枚――4万――もするので、とてもじゃないが数十個も用意する事は出来ないが……
そもそも彼女に俺の能力を明かすかも、微妙な所である。
取り敢えず魔力アップの宝玉を7つ――いや、6つ用意してそれを嵌めて貰うとしよう。
そんで、ラスト一か所は偶々特殊な宝玉を持ってたという事にして、混合レベル10を渡してやればいいだろう。
それでも2,6×1,8で、4,68倍にまで魔力は上がる事になる。
現状でも十分強力な魔力を持っているサラの力がそれだけ上がれば、パーティーメンバーとして十分な戦力になってくれる事だろう。
というか、下手したら俺よりぶっちぎりで強い気が……
うんまあ俺にはブーストもダークマターもあるんだし、流石にそれは無いか。
ないよね?
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