5――強化合成

「ちょっと色がかわったかな」


合成した混合の宝玉と他の宝玉を見比べる。

合成後の宝玉の色は、通常の物よりも少し鮮やかな赤色に変わっていた。


「混合レベル10か」


鑑定魔法を発動させると、レベル10・混合の宝玉と脳内に表示された。


基本的に共鳴で上がるレベルは5が上限だ。

6つ目を体内に取り込んだ場合、それは共鳴によるレベルアップが適用されない――但し7つ目以上を取り入れると、6つ目と共鳴してその二つはレベル2になる。


だが宝玉の合成により生まれたそれは、その上限の壁を突き破りレベル10にまで到達させる事が出来た。


レベル5までは、レベルが上がる度に+50%の効果が追加される。

そのためレベル2で1,5倍、レベル3で2倍となり、その効果は最大で3倍まで上がる。


それに対してレベル6以降はボーナスが2倍に跳ね上がる。

つまり、レベルが上がる度に100%分加算される事になる訳だ。


レベル6で4倍、レベル7で5倍と上がって行き、最終的には8倍まで上がる。


混合の効果は約1%と言われているので。

これを5つ吸収した場合。

通常は1×3(レベル5ボーナス、300%)×5(個数)で、上昇するのは15%だ。


それに対してレベル10の宝玉は――


1×8(レベル10ボーナス、800%)×10(合成に使用した数)で、その効果は80%まで上がる事になる。

スロット一つで全ステータスを1,8倍に出来るの訳だから、その効果は間違いなく破格だ。


……これを市場に流通させれば、間違いなくとんでもない値が付く事だろうな。


まあだがそれをすると、俺の能力がバレるのは目に見えている。

残念ながらリスクが高すぎるので、強化合成での金稼ぎは諦めるしかないだろう。


「4,5倍……流石に過剰か」


サブにはスタミナを付けるつもりだった。

だが少し考える。


宝玉は同種だとその効果は加算なのに対し、種類が異なる場合は乗算だった。

そのため混合レベル10と体力レベル5を掛け合わせた場合、1,8倍×2,5倍で4,5倍まで効果が上がる。

マラソンをするわけでもないのに、流石にこの数字は過剰な気がして仕方ない。


どうした物かと、俺は口に手を当て考えこむ。


ふと、机に置いてあったダークマターなる謎の特殊石が視界に入った。

その途端、俺の中でこれを合成したいと言う欲望が鎌首をもたげ出す。


取り外しと違い、宝玉は一度合成してしまうと分解する事は出来ない。

その為、合成したらダークマターはもう市場に流せなくなってしまう。


そもそも効果だってわかっていないのに、そんな物を合成するなど馬鹿げた考えだ。

だが何というかこう、無性に合成したくて堪らなくなってきた。

ひょっとしたら、俺にはギャンブル依存症の気があるのかもしれない。


「人生は冒険だって、誰の言葉だったっけかな?」


どうせ暫く換金できやしないのだ。

これが換金できるだけの立場になる頃には、きっと他の特殊石も手に入っている事だろう。


そう考えると、残す事にこだわる必要は無い筈。

仮に効果がゴミで役立たずのスキルだったとしても、改めて安い混合10個を用意すればいいだけで大した損失は出ない。


そんな言い訳を考えながら、俺は黒い宝玉へと手を伸ばす。

そして右手に握り、思い切って合成を発動させる。


「はぁ……何やってんだ、俺は?」


手の中にある、赤黒い宝玉を見て呟く。

何となく衝動に任せて作っては見たが、早々に馬鹿な事をしたと後悔が湧いて来た。

所謂賢者タイムという奴だ。


「まあやっちまった物は仕方ない。取り敢えず、後でダークマターってスキルを試してみるか」

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