第48話 里長フェネル


・フェネル(※通常状態)(ハイエルフ) age:567

職業:追放者の里 代表

得意属性:風 第二属性:水

体力:156

腕力:167

魔力:782

精神力:509

器用さ:378

知力:80

運:10

(特殊技能) 精霊の加護LV7 体術センスLV6 剣術LV7 心眼の極意 虚弱


 普段は『里長様』とみんなが呼んでいるが、本名はきちんとあって、名前はフェネルという。


 里長様はハイエルフだが、ユーリカのように排他的ではなく、他種族間との交流については積極的にやっていくべきだとの意見を持っていた。商売についても、そして、結婚についても。


 だがやはりエルフの国では、ユーリカのような考えが大多数で、人間たちと交流を持とうとする、またはすでに交流をもっているエルフたちに対しては厳しい対処を下していた。


 それに対して疑問を持っていたのが、里長様と、そして、現領主で、ユーリカの父親でもある里長様の弟さんだった。


 つまり、ユーリカは里長様の姪っ子にあたるというわけだ。


「私が国から追放された者たちの面倒を見るために私が外に出て、そして弟は領を守るために残った、というわけです。これは内緒の話ですが、今でも連絡はきちんと取り合っているし、弟からの援助もあるんですよ」


「では弟さんが兄である里長様を追い出したのは、他の国に対する建前だと」


「まあ、そんな感じで理解してもらえれば」


 ユーリカがあのような考えになってしまったのは、父ではなく、通っていた学校の教え方に問題があり、それで思想が一方に寄ってしまったと。まあ、エルフの国なので、余程変わり者でなければ、そうなることがほとんどらしいが。


 ともかく、意外なつながりが判明したことで、交渉の余地が出てきた。


 人間と表立って交流できないのであれば、間に立ってもらうエルフを用意すればいいだけのこと。


 ということで、俺は早速、ライルをどうにか引き取れないか、弟さんに手紙を送ってもらうよう里長様に頼んだ。


 子どもたちが何より寂しがっているので、そのために、ライルの引き取りに関しては、お金やその他出来る限りの要求はのむ覚悟をしていたのだが――。


 ※


 まず結論から言うと、ライルは無事俺のもとに戻ってきた。


「――この度は、ほんっっとうに、申し訳ありませんでした……!」


 護衛のエルフたち数人、そしてユーリカと一緒にライルを連れてやってきたのは、なんと領主様本人だった。


・エルネル(ハイエルフ) age:489

職業:エルフの国第三領地メストルル領主

得意属性:風 第二属性:水

体力:178

腕力:101

魔力:501

精神力:312

器用さ:150

知力:78

運:35

(特殊技能) 精霊の加護LV6


「ちょっと、お父様……伯父さんならともかく、どうしてあのニンゲンになんか――へぶっ!?」


「だからと言って、急に魔法矢を撃つバカがどこにいるかっ! この人が手練れだったからまだ穏便にすんだものの……」


 しかも戦闘を始めたのがハシの泉である。もし自分の娘が原因で泉が元の猛毒に戻ってしまったら……俺がもしユーリカの親だったとしたら、血の気が引いただろう。


 ということで、ユーリカに頭にさらにもう一つたんこぶが追加されることとなった。ユーリカはすでに涙目である。


「ほら、お前も謝りなさい。元はユーリカ、お前の不注意が招いたことなんだからな」


「……ぐぅっ……わ、わたしがこんなヤツに……」


「ユーリカ!」


「うぅ……す、すいません、でした……!」


「あの、わかっていただければ結構ですから、もう頭を上げてください 」


 親の顔を見てみたいと思ったが、問題だったのは娘があまりにじゃじゃ馬すぎるだけで、親のほうはかなりまともでよかった。もし領主様が娘と同類の考えで、しかも里長様の弟さんでなければ、まったく真逆の展開になっていた可能性もあるのだから。


 ちなみに里長様はというと、そんな二人の様子をいつもの穏やかな表情でニコニコと眺めていた。


 ステータスも、他の較べてもちょっと頭一つ抜きんでてるようだし……やはりこの人を怒らせるのは絶対やめておこうと、肝に銘じる俺だった。


「えっと、それで肝心の件ですが」


「ああ。ライルビットの件ですね。そちらについては娘とも話し合いまして、しばらくの間はそちらでお世話をしていただければと思いまして。もちろん、こちらからの要求はなにもありません」


「それは願ってもないことですが……しかし、いいんですか? 長い間、ずっと飼われていたのでしょう?」


「ああ、いえ。私どももエシャトについては、近くの森で一人で弱っていたところを娘が勝手に拾ってきただけですから。いずれ良くなったら野生に返そうかなとも思っていましたし、そちらのほうがのびのびストレスなく暮らせるというのであれば、私はそれで構いません」


「でしたら……」


 心おきなく引き取らせてもらうことにしよう。


「よかったな、ライル。子供たちに会えるぞ」


「ナ~」


 相変わらず扱いが面倒な子ではあるが、まあ、多少は賑やかなほうが授業も楽しくなるか。


 改めて、これからよろしく頼む。

 

 こうして、色々あった遠足も終わり、ライルを加えて五人+一匹となった俺たちの青空教室だったが。


「お、覚えておきなさいよ、ニンゲン……いずれ必ず、あなたのことをギャフンと言わせて、私の前で跪かせてみせるんだから……!」


 去り際にユーリカから呟かれたセリフが新たな因縁にならなければいいのだが。

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