第31話 授業の成果


 五人の勉強は、語学や数字の計算といった一般教養と、それから魔法についても順調に進んでいる。


 五人で授業を始めてからおおよそ1か月ほど。まだ基礎的なことしかできていないものの、ちょっとずつ成果は出始めている。


 現時点での、五人のステータス推移について。


・ジン(ハーフエルフ)  age:12

 得意属性:風

 腕力:7→8(+1)

 体力;8→9(+1)

 魔力:15→19(+4)

 精神力:23→25(+2)

 器用さ:15→16(+1)

 知力;8→10(+2)

 運:10→10(+0)

 ※(特殊技能)精霊の加護LV1


 ・アリサ(ハーフエルフ) age:11

 得意属性:光

 腕力;3→3(+0)

 体力:3→3(+0)

 魔力:20→28(+8)

 精神力:35→36(+1)

 器用さ:20→22(+2)

 知力:15→18(+3)

 運:15→15(+0)

 ※(特殊技能)精霊の加護LV1

 

 ・マルス(ヒューマン) age:12

 得意属性:土

 腕力:12→14(+2)

 体力:15→17(+2)

 魔力:8→9(+1)

 精神力:15→16(+1)

 器用さ:10→11(+1)

 知力:6→9(+3)

 運:3→3(+0)

 ※(特殊技能)集中LV0→LV1


 ・ジョルジュ(ヒューマン) age:12

 得意属性:無

 腕力:10→11(+1)

 体力:10→11(+1)

 魔力:5→7(+2)

 精神力:15→16(+1)

 器用さ:15→17(+2)

 知力:7→10(+3)

 運:3→3(+0)

 ※(特殊技能)体術センスLV0


 ・ミルミ(ヒューマン) age:11

 得意属性:神聖

 腕力:7→9(+2)

 体力;8→9(+1)

 魔力:10→11(+1)

 精神力:18→20(+2)

 器用さ:10→11(+1)

 知力:12→14(+2)

 運:3→3(+0)

 ※(特殊技能)女神の祝福LV1


 教えている内容は今のところほぼ一緒だが、やはりステータスの伸びに違いがある。このぐらいの歳の子供なら外で遊び回っていれば腕力や体力は成長していくだろうが、やはりエルフ族のジンとアリサは魔力の伸びがいい。


「なあ、先生、見てくれよこれ!」


 そう言って、ジンとアリサが手のひらの上にピンポン玉大の小さな光球を浮かべている。


 精神集中によって体内で練った魔力を外に排出させて、霧散させることなく維持する。後はこれを意識せず、素早くできるようになって初めて初級の魔法へと移行することができる。


 他の三人のほうは……ちょっと時間はかかるだろうが、ステータスは伸びているし、いずれは二人に追い付けるはずだ。


 +1や+2では体の中に起こる変化を実感しにくいので、そこでモチベーションを上手く維持してあげるのが俺の仕事だ。


 勉強を教える、というより、勉学でも魔法でも、子供たちが自ら進んで学んでいけるような授業をしていきたいところ。


「だがしかし……」


 こうして五人のステータスを並べてみると、明らかにアリサが突出しているのがわかる。


 同い年の女子であるミルミと較べて体の線は細く力も弱いが、それを補って余りあるだけの魔力がある。初期値も高いと思っていたが、ステータスの伸びも際立っている。


 まだ初歩の初歩でこれだから、これから順調な成長曲線を描いていった時、いったいどんなことになるのか。


 おそらく、かなり魔法の才能の持ち主であることがわかる。


「……先生、あの、私の顔になにか……?」


「ん? ああ、いや、これからもジンのことをよろしく頼んだぞ」


「ふぇっ……あ、あの、勉強のことなら、もちろん……」


 とりあえず、アリサの直近の課題としては、勉強や魔法ではなく、引っ込み思案なところを治すところからだろう。


 幼馴染のジンには遠慮なく話せるものの、マルスやジョルジュ、そして俺なんかと話すときは、今のように俯いて顔を真っ赤にすることが多い。同性のミルミはまだマシだが、それでも聞き役に回ったりすることがほとんどで、自分から話題を振ることはないようだ。


 これからずっと里で静かに暮らすにしても、また、ここから出てどこかの街に移住するにしても、もう少し人付き合いには慣れて欲しい。


 とりあえず、まずはジン以外の三人ともっと仲良くすることころから。


「……親睦を深めさせるとすると、ここはやはり学校行事では定番のか……」


 出来るかどうかは里長様やジンとアリサの親御さんなどに許可をとる必要はあるが、授業以外にも、所謂『学校』らしいことをやってみたい。


「……ジン、ちょっといいか?」


「え? なになに? 先生、またなんかやんの?」


 授業終わりにジンを呼び止めると、何かを察知したのか、ジンがニヤニヤしながらこちらに近付いてきた。


 理解が早い子で大変助かる。


「実は協力してほしいことがあるんだけど……」


 俺にとって、「先生』としては初めての授業以外のイベント――上手くいってくれればいいが。

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