第24話 冒険者稼業継続中
そして、冒険者稼業としての仕事だが、こちらが俺の今のメインの収入源である。
マルスたち孤児三人を引き取った時に里長様に借りたお金はすぐに返したものの、五人の子供たちの教材費はこれからも必要だし、あとは、自分の家のもろもろの建設費用のこともある。
そう考えると、もっと頑張らなければならない。
今の青空教室がちゃんとした学校になって、もっと生徒が集まって、それで授業料などを収入源の柱にできればいいのだが……そうなるのは多分、まだまだ先の話。
先が長いと言えば……そういえば、この体、寿命はどのくらいなのだろう。
見たところ人間だし、年齢は二十代前半ということろなので、普通に考えればあと50年ぐらいは生きられそうだが……この器はおじいさん神が用意したものだから、実は人間に限りなく似ているだけで……いや、今はいいか。
目の前のやるべきことをしっかりこなしていこう。
「先生行ってらっしゃい」
「ああ。別に遊んでもいいけど、ちゃんと課題はやるようにな」
昨日徹夜して作った課題を子供たちに渡して、俺は転移魔法でフォックスの街へ。
ちなみに、現在のスケジュール。
まず、この世界にも月や曜日がきっちり設定されているが、元の世界のような土日休みのようが概念はない。なので、今の青空教室のスケジュールも三日に一回、授業を休みの日にして、その休みの日にフォックスで仕事をしているという流れをとっている。
最初は戸惑いがちで田舎者のようにキョロキョロしていたが、フォックスの街もすでに慣れ、よく通う屋台などでは、すでに『先生』というあだ名で顔を覚えられている。
「こんにちは、カオルさん」
ギルドに入ると、すぐに受付のアイシャさんが笑顔で出迎えてくれた。
・アイシャ(ライカンスロープ) age:19
職業:ギルド事務職員 冒険者(ランク:C)
得意属性:炎
腕力:151
体力:190
魔力:58
精神力:78
器用さ:67
知力:40
運:19
(※特殊技能)集中LV2 夜型
「おい、個人情報」
「? どうしました?」
「あ、いやなんでも……」
アイシャさん冒険者だったのか……いやいや、そんなことより神の書のことだ。
子供たちのステータスを見てからというもの、こんな感じで、コイツは次々とステータスのデータを勝手に追加していく。
ステータスは現在時点のものを示していて、リアルタイムで増減するようだ。ジャハナムさんのステータスも、当然のように登録されている。
「あ、そうだ。ところで、ジャハナムさんからの依頼があるって聞いたんですが」
「はい。魔法薬の研究開発用にとある研究所から採取を依頼されたのですが、珍しい種類があまりにも多く……カオルさんなら知っているかと思いまして」
「ああ、なるほど」
神の書に訊けば自生場所ぐらいはわかるので、採取ならお安い御用である。
フォックスに依頼したということは、おそらく里周辺の地域か。場合によっては危険な魔獣が出現するか――光か闇属性の魔法で姿を消しながら進めばいいだろう。
詳しい話がジャハナムさんからあるということで、二階のギルド長室へ。
「どうも。申し訳ないですな、子供たちの授業などあって、お忙しい時に」
「いえ……ところで、お隣の女性は?」
二人きりかと思ったのだが、来客用のソファに、ローブ姿の女性が優雅にお茶を飲んでいる。
女性の持つ澄んだ海のような青い瞳が、俺の方へと向く。
「ああ、彼女は国の首都にある魔法学校の――」
「いいですよ、ジャハナムさん。自己紹介ぐらい自分でさせてもらいますから」
ジャハナムさんが紹介しようとしたのを遮って、女性がすっと立ち上がり、俺の方へ丁寧にお辞儀した。
魔法学校――ということは、もしかしなくても、そこの教師ということか。
「どうも、冒険者の方。私はエイナ・カミカンデ――首都ルーエルの国立魔法学校で教師をしているものです。今回の採取に、私も同行させてもらいたい」
「どうも。渋木薫です。ハーフエルフの里で教師をしています」
神の書にすぐさまエイナのデータが書き込まれていくなか、俺は彼女と握手を交わしたのだった。
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