第21話 魔法訓練開始


 ジャハナムさんに頼んでいた魔法の教科書が届いた。


 元々頼んでいたジンとアリサの二人分に追加して、マルスたち三人分の教科書の計5セット。


 正直、お金はかなりかかったので、しばらくは冒険者との兼業となる。


 こうして一人でやろうとすると実感する。


 教育は、お金がかかる。


「先生、なにそれ?」


「魔法の教科書。今日からそっちもやっていくから」


「おお、やっと……! でも、これ随分ぼろっちくない?」


 教科書をパラパラとめくりながら、ジンが言う。


 一応、記載されている内容は同じだが、製本された年がまばらで、古かったり、比較的新しかったり様々だ。中には落書きされているものも。まあ、魔法学校の生徒たちからの横流し品だし、ここらへんは文句を言っても仕方がない。


 教科書のタイトルは『魔法訓練基礎Ⅰ』。


 魔法の教科書はそれぞれ学校独自のものがあるが、この魔法訓練基礎Iに関してだけは、どこの学校もほぼ共通。


 中身を確認してみるが、炎とか水を発生させるというより、まずは魔法を使うための魔力の錬成と、錬成した魔力を体外に放出するための理論や訓練法を学ぶといった感じである。


 炎や水、雷といったように、錬成した魔力をさらに別の物理現象へと変換する訓練は、次の魔法基礎訓練Ⅱとなる。


 それが終われば、いよいよ実戦的な魔法、つまりは応用となっていく。ここから各魔法学校で固有となっていくので、それにならって、そちらは俺のほうで考えようと思っている。まあ、これはまだ先の話だ。


 ちなみにジンが使いたがっているダークブラストだが、一応、闇魔法の上級魔法に分類される。もちろん、魔法学校に通うぐらいでは本来扱えないレベルだが……まあ、できるかどうかは本人の頑張り次第か。


「――じゃあ、今からいよいよ魔法の訓練を始める……けど、その前に」


 俺は魔法書の第一ページ目に書かれた灰色のページを指差した。


「まずは属性の確認をする。一人ずつやっていくから……みんなページを開いて待って……」


「先生、ちょっといいですか?」


 ジョルジュが手を上げる。授業が始まって少し経つが、五人の中では彼がまとめ役になっている。真面目な委員長タイプだ。


「あの、属性って言うと、炎とか水とかってことですか?」


「うん、その通りだ。魔法については大まかに7の属性があって、人種や体格によって生まれつき得意な属性ってのが存在する。それによって魔力の錬成の仕方とか訓練の方法も微妙に違ってくるから、まずは知らないとな」


 ここらへんは神の書からの受け売りだが……まずは自分のことを良く知ろうということだ。性格はそれまでの生き方や周囲の環境で後天的に形づくられることが多いが、魔法の素質は生まれた時点ですでに決まっている。


 7の属性、その内訳は、


 炎

 水(氷含む)

 風

 雷

 土(金属含む)

 光

 闇


 となる。その他にも特殊な属性はあるが、基本はこの七つから選ばれる。


「はい先生! 俺エルフ族だから多分風とか土あたりになると思うんだけど、その場合は先生の闇魔法は使えないってことですか?」


「いや、訓練すれば複数属性を操れるようになるよ。ただ、属性によってはかなり難しくなるってだけで」


 例えば炎や水(氷)は相反する属性だから、どっちも使いたいと思うと相当苦労するし、使えても中途半端になることが多い。


 そうでなければ、鍛える価値はある。もしジンが光属性なら闇属性の魔法を使うのは相当きついが、それ以外ならチャレンジしてもいい。


 全員が納得したところで、俺は一人ずつ属性の判定をしていく。方法は簡単で、該当のページにそれぞれ生徒の血液を付着させ、その色で判断するのが一般的だ。


 魔力は血液と同じようにして、心臓から送り出されて全身を循環している。


「それじゃ、まずは――」


「オレオレ! 絶対オレ!」


 ということで、ジンから属性の判定を始めることに。


 ……さて、この中で変わった属性の子たちは、果たして出てくるだろうか。

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