第51話 好きにしろと言われましたが
ダイチと別れた後のシンは、分かりやすいくらいに、しょげかえっていた。
落ち着かない様子のミハルとナナミは、部屋に入ってきた猫又達の顔を見て、深いため息をついた。
サイゾーくんは、まだぐしょぐしょな顔をしており、他のネコ達も目を潤ませていたからだ。
「戻りましたにゃ。」
「ご苦労じゃったな、様子はどうじゃったか。」
プルプルと首を横に振る。
「仕方がないのう、お前たちのせいではないからのう、辛い役目で悪かったな。」
慰めるように、ポンポンと軽く頭を叩く。
「ダイチ様から、ミハル様にお願いがありますのにゃ。」
ぐしぐしと、前足で、目をこすりながら、ミハルを見上げる。
「なんじゃ?」
「【
「別にかまわぬが、なぜ、今なのじゃ? 」
「ダイチ様は、おしゃっていたのにゃ、今回の事はさすがに許せない、と。」
聞き耳を立てていた、シンの顔が更に青ざめる。
「だけど、・・・。」
目をこすり、必死に涙をこらえていた目から、また、涙がポタポタと落ちていく。
「だけど、シン様やミハル様が、そこまでするには何か訳があったかもしれない、自分もお店の準備に追われて、・・・」
「皆の話をきいて・・いなかったかも、しれないから・・・ちゃんと、何があったか知りたいと、それで、この後どうするか、決めたい、そうだにゃ。」
「わかった、では、サイゾーくんは少し休むが良い、代わりに誰か、姫子かシノブ、・・」
「「行きますのにゃ。」」
同時に二匹が答えるが、ここは姉御肌の姫子より、穏やかなシノブのほうが適任か、
「今回は、一人のほうが良かろう、それに同調するならば、シノブのほうが向いておろう、姫子はサイゾーくんの面倒を頼む。」
サイゾーくんは、部屋の隅で丸くなり、姫子が慰めるように寄り添い、涙の跡をぺろぺろと舐めて、キレイにしている。
ヨコヅナも自分の大きめの体がクッション代わりになるようにと、体の向きを調整していた。
シノブを除く、他の猫又達は急激に人が増えたことでもあるので、見張りも兼ねて、屋敷の中に散っていった。
シノブは、仮想空間にいるダイチの体に異変がないよう、横にいて、しっかりと見張っていた。
『ダイチ様が、御戻りになった時、何を言われるのかにゃ。
出会った頃、ナナミ様にお渡しした魔石、今はダイチ様がお持ちになられているのにゃ、ダンジョン・マスターとの契約は一週間かけて行われるから、ダイチ様が契約者になったのにゃ。
もしも、ダイチ様との繋がりが切れてしまったら、どうなるのかにゃ。』
ダイチに寄り添いながら、シノブは様々に思い悩んでいた。
一方、ダイチは仮想空間でいろいろと調べ考えていたが、正直、頭を抱えるような情報が多かった。
最初に調べたのは蛇淫についてだったが、驚きの事実が次々と判明した。
まず、蛇淫とは、ズバリ、ロキの呪いだったのだ。
自分の息子に呪い? 意味が分からなかったが、姉弟はあと二人いて、全員が呪い持ちだった、ロキの!
まず、妹のヘルさん、
何でもロキは面白がって神々を何人も殺してきたので、多くの神々の怒りを買い、その子供が呪われたそうだ、・・・可哀そうすぎるだろう。 生まれた子供に罪はないのに、
そして、
流石に、シンさんも自分の妹に父親の相手をしろ、などと言えずに、(当たり前だ!、そんな事したら軽蔑するよ)それ以降、性欲をコントロールすることが出来ずに、ほとんど一人で過ごしてきたと・・・・。
そして、シンさんがヘルさんを連れてくるかと思ったら、一人で引き籠ってしまった為、今度は、弟のフェンリルさん、(俺でも、名前を知ってる超有名
狼神でもあるフェンリルさん、月の光を浴びると、狂暴になり、自我を失い、血を求めてさ迷うのだとか・・・・
・・・・・・。
【
なんかさ、毒気を抜かれたというか、シンさんに対して怒る気持ちは失せちゃったよな。
700年以上、ほとんど一人で生きてきたとか、そんで、他の人に迷惑かけないようにって、引き籠ってたらまたまた、親父にいいように使えわれて、呪縛されてたとか、ロキの呪いに、人間の呪縛、もうさ、なんていえばいいんだよ、
・・・・・なんも言えねえ。
『自分の心が感じるままで、良かろうよ。』
えっ、誰? ここって、仮想空間だよね? 見渡すと、以前の自分の部屋が見えるだけで特に変わったものは見られない。 オレ、 疲れてんのかな?
『其方の心に話かけておる、姿は見えぬよ。』
って、誰ですか?
『我はオーディン。』
マジ? この世界の
《ロキのせいで、シンやそなたに迷惑をかけたらしい、悪かった、どうか、シンを許してやって欲しい。あれも、長い間、寂しかったのだろう、短絡的に人間ならば王になりたがるものと思っていたようで、悪気は無かったのだ。》
悪気は無くても、度が過ぎてると言うか、やりすぎでしたよ。
《・・・》
なんか、笑ってませんか?
声は聞こえないけど、雰囲気が伝わってくるんですけど、
《あれも、可愛い私の孫なのでな。》
おうっっと、そうでした、ロキは
って、そんな人が人間に仕えるなんてダメなんじゃ・・・
オレ、怒られ・・・る???
《怒りはせん、シンの好きにすれば良いこと。カイルよ、そなたは今後、私の子供達、神族と関わることも増えるだろう、》
なんですと! それは、 予言ってやつですか。
《予言とも違うが、まあ、それは良い、ただ、今のそなたでは無防備すぎる故、我の加護を与えよう、人族で我の加護持ちは、そなたと聖女のみだ。では、そなたの心が示す道を進むが良い。》
ふっと、気配が消え、俺は一人で部屋に残されていた。
好きにしろってこと? なんか、ご神託とかってないんですか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・ないらしい。
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