第52話 聖女VSサファイル

さて、これからどうしよう・・・・?


 シンさんに対して怒っていた気持ちは、既にほとんどない、けど、なんか、 このままあっさり許しちゃううのも、なんかしゃくなんだよな、   ・・・小さい男でも、いいんだ、オレは。


 それにさ、ナナミとミハルも、あのまんま何も無し、っていうのもな、


 特にさ、シンさんとミハルは、独りの時間が長くて、でも、今は多くの人に囲まれて、ついつい、っていうのも、分からなくはない、けど、   俺だって、居酒屋、本当に楽しみにしてたんだからな!! チクショー。


 ・・・・いや、・・・そうか、待てよ、何も居酒屋じゃなくてもさ、試食会ぐらいなら出来んじゃね?

 俺一人じゃ厳しいけど、あいつらに手伝わせれば、・・・・いけるか?

 居酒屋じゃなくても、俺の料理と酒で皆が楽しい時間を過ごせれば、・・・もう、それで、いいかな。


 それに、あいつらの自己中心的な性格も、接客させることによって、少しは改善する・・・か?


 しないかも・・・。


 ま、それは、いいや、接客させれば、少しは苦労もするだろう。


 よし、そうと決まれば準備をするぞ!


 仮想空間を出ると、シノブがずっと寄り添ってくれていた。不安そうにこちらを見ているので、

「大丈夫だよ、ただ、あの三人にはこれから、ちょっとお手伝いをしてもらうけどね。」


 安心させようと、にっこりと笑いかけたら、余計に不安そうな顔になってしまった、 おかしいな。


「ずっと、ついててくれたんだな、ありがとう。」

 シノブを抱き上げて、背中をもふもふ、ナデナデ、サイゾーくんよりも、長いふわふわの肌触り、そして、見た目もお上品そうに見える。


 そう言えば、ミハルがシノブはフォレストキャットだと言ってたな、でも、正直、どんなネコだかよくわからん、ま、どうでもいいか。


 シノブを抱いたまま、皆が待っている部屋の戻ると、青ざめたシンさんと、お肌艶々な、サファイルさん、そんなに楽しいことなんかありました?


 眠たそうなナナミとミハル、   ・・・眠たそう?


「なんで、ナナミとミハルはそんなに眠そうな顔をしてるの? 」


「眠くもなるじゃろう、3日もたてば・・・」

 そう言って、ふあああ、と欠伸をしながら答えてくれた。


「その間、いつ戻るかわからんから、あまり、寝ておらんのじゃ 」


 えっっと、三日も・・・?


 抱きかかえたままの、シノブの顔を覗き込むと、

「ダイチ様は、三日間、御戻りにならなかったのにゃ、皆、とても心配してたのにゃ 」


 ・・・・・しらなかった、4~5時間くらいかと思ってたよ。


「そう、だったんだ、なんか、悪かったな、心配かけちゃって、」


「「「・・・・・・・・」」」


「それでだ、今回の件のついては、条件付きで譲歩しようと思ってる、」


「「「・・・・・・・・」」」


「その条件とは、ここで試食会をやるので、その準備と、当日の手伝い、そして、そこで、接客してもらい、お客様からクレームを貰ったら、マイナス1、準備段階で勝手なことをしたら、マイナス1、貰ったマイナスポイントの数だけ、独居房で過ごしてもらうから、そのつもりでね。」


 にっこりと黒い笑顔のダイチだった。


 そして、黙り込んでいる三人とは、逆に生き生きとしたサファイルさん、


「ダイチ様、私もお手伝いさせていただけますか? そこの暗い顔している情けない蛇より、よほど、お役に立ってみせますよ。」


 ちらりと、挑戦的な目でシンを見る。


「・・・・お手伝いいただけるのは、有難いんですが、どうしてですか?」


「ダイチ様、あのように我が父、シンを厳しく叱責するなど、・・・・ああああ、思い出しただけで、体が熱くなりますわ。私の【魅了】にもかからないなど、理想的な殿方でいらっしゃいます。」


 顔を赤らめて、そんな事言われても・・・


「あの、サファイルさん、・・」


「どうぞ、サフィーとお呼びください、ご主人様。」


 ご主人様? いつから? 


「ああ、ご主人様、甘く良い匂いが致します、美味なる血の匂いが・・」


 それって、俺は捕食対象として、美味しそうなのか?

 あかん、この人も他人の意見を聞かないタイプだな。


「シンさん、自分の娘でしょう、ビシッと言い聞かせて下さいよ。」


「サファイル、焦るでない、まずは年長者でもある我からじゃ。」


 そうじゃない!  違うから!  ・・・・ダメだ、この人達、


「ナナミ、ちょっとこの人達に説明してあげて、それでもわからないようだったら、ナナミとシンさん、サファイルさん、全員がマイナスポイントね。」


「えっー、なんで私まで、関係なく・・「ナナミ!!」・・・」


 ダイチに強くさえぎられて、黙り込むナナミ。


「今回、この屋敷も含めて、ナナミは何をしていたの?」


「私は何も・・・」

 してない、そんな言葉を呑み込むしかなかった。ダイチの強い視線がナナミを見ていたから。


「ナナミ!、見てただけなんて言わないよね、もし、いじめがあった場合に、見てた人の扱いってどうだったっけ? 」


「・・・・」


「積極的に参加したわけじゃなくても有罪だよね、見てただけ? それを、言うのかな? 元刑事のナナミさん? 」


 何も言えなかった、その通りだったから。


「・・・・何を説明すればいいのかしら?」


「今の状況と、自分達の立場を、きっちりと24時間以内で!」


「鬼!」


 なんとでも、いえば?   俺だってやる時はやるんだよ。


「ご主人様、この乳だけ女が何かありますのか?」

「誰が、乳だけ女だ! 頭の悪い蛇ね。」

「そのように立派の物を持ちながら、色気のかけらもない可哀そうな女だと思って情けをかけてやれば、いい気になりおって、」

「なんですって、このバカ蛇! まあ、ダイチに迷惑かけてることさえわからない、程度の低い女だから仕方ないのかな、」

 完全にバカにしたように、吐き捨てるナナミ。


 一触即発で、シンは完全に置いてきぼりだ。


 ミハルは自分が教育係でなくて良かった、と心から思い、壁際まで下がり、なるべく目立たないように見守っていた。


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