第3話 自己紹介 フレイア

 「えーと、じゃあ、まずは自己紹介からで、

俺はカイル・デラクタ・フォン・シュバーツェン。

あー、それよりパーソナルカード、見せたほうが早いか、なんか、疑われてるみたいだし」


 パーソナルカード、それはこの世界においての身分証明書だ。

 協会や各ギルドで発行され、本人の血をもって登録するため偽造は出来ないと言われている。


 カイルがテーブルに置き、そっと彼女のほうへ押しやる。


【セレブレティカード・ゴールド(パーソナルカード)】


名前:カイル・デラクタ・フォン・シュバーツェン(18)

種族;人族

レベル:55

位階:アスガルド王国シュバーツェン男爵家 長男 後継第1位

HP::140/150

MP:220/220

スキル:鑑定 Lv,5、 

    アイテムボックス。


 カードを手に取り、しげしげと眺めて裏を返す。

 そこには、シュバーツェン家の家紋グリフォンが黒曜石で記されていた。


 「ふうーん、やっぱり貴族だったんだ。じゃあこれ、私のカード。」


 そう言って、目の前の空間をつかむような仕草をしてカードを取り出して、

俺のカードに重ねて渡してきた。


 【セレブレティカード・ミスリル(パーソナルカード)】


名前:フレイア・ガルド・フォン・フレイムニル(15)

種族;人族

レベル:73

位階:アスガルド王国フレイムニル公爵家 次女 後継第1位 聖女

HP::81/120

MP:39/3800

スキル:光魔法 LV,8 

ギフト:狂戦士(ベルセルク) Lv,1

ギフトスキル:怒髪天


 …なんなの、このカード…

 ありえないんだけど…


 フレイムニル公爵家って、各国にまたがる聖教会のトップでさ、確か教皇陛下を務められていて、その情報力と影響力はアスガルド国内にとどまらない。

 唯一、王家と対等のお家柄。


 そりゃあ、セレブ(貴族)のミスリムだよねー。

 ちなみに、カード順位は、ミスリム>プラチナ>ゴールド>シルバー>ブロンズ

 商人カードや冒険者カードには、ミスリムは無い。プラチナが最上位。

 

 しかも、位階:聖女!   聖女はこの大陸の中で光魔法の第一人者。

 聖女のお言葉には、教皇陛下でさえも異を唱える事が出来ないとか言われている、あの聖女!


 しかも、しかもだよ、ギフト:狂戦士ベルセルクって何だよ!!

 聖女と真逆じゃないの? 


 ギフトって、本人の努力だったり、抜きんでた才能を認められて神様が授けてくれるもののはず。

 聖女が、狂戦士ベルセルクになるための努力や才能って何?

 意味わからん…理解不能です。


 カードを持ったまま固まってしまった。

 ……、  ………。


 「おーい、大丈夫ですか? 現実だから戻っておいで、」


 ヤバい…現実から逃避しそうだった。


 「あー、えー、どこから聞けばいいかな? これ(カード)、本物だよね?」

 「もちろん、本物よ。」


 ですよね…、こんなん偽造したら洒落にならん。即刻処刑だろ。怖すぎるわ。

 …活動フリーズ。


 「オレ、お茶いれてくる。 話、長くなりそうだし。」


 キッチンでお湯を沸かし、二人分のカップを持って戻ってきた。

 んー、お茶が美味い。お茶の香りで少し気分がほぐれた。


 仕切り直して、活動スタート。


 「これ、緑茶? この世界にもあったんだ。  ふふ、 おいしい。」

 フレイアの顔が懐かしい味に自然とゆるむ。


 げっ、かわいい、やべーよこの 人間兵器リーサルウエポン

 可愛さと凶暴さで連れていかれるのは、天国か地獄か?

 なんか圧倒的多数で後者の気がする。


 「えーと、フレイア、様?」

 「なに、その疑問形は?」


 いや、だってまだ、死にたくないし。

 身分的に俺が声をかけられる立場じゃないし、

 怒りをかってもヤバそうだし、俺の強張った顔に気付いてくれたようで、


 「ふふ、ごめんね、今この場で私の立場なんて無いも同じだと思うけど、どういう態度をとればいいか迷うよね、」


 一つ、大きなため息を吐いてフレイアは言葉を続ける。

 「上手く話せるか分かんないけど、いいかな? 聞いてくれる?」

 「どうぞ。」


 「まず、私に敬語はいらないわ。フレイムニルは大貴族だけど、私が生きていることが知られたら命を狙われるから。身分を隠したいの。だから、普通に喋って欲しい。それに元々、日本には貴族なんていなかったし、気にしないわ。」


 良かった。フレイムニル家のご令嬢と話すとなればどうしても緊張してしまうけど、日本の学生だと思えば、いけるか? 俺?

 そうだ!  JKのコスプレだと思えばいいんだ。

 ここはハロウィンの渋谷の交差点、今どきの変身技術メイクは、素晴らしい!


 「なんか、ろくなこと考えてなさそうだけど、まあ、いいわ。続けるわね。

私は転移でここまで飛ばされたの。大聖教の地下に転移の魔法陣があるのよ。本当は魔の森に飛ばしたかったらしいけど、魔法陣が完成する間際に女神に祈りが届き、行き先が変更されたのよ。杖もないし、詠唱も出来なかったから、あやうくマナが枯渇するところだったわ。」


 ああ、だからあんなにMPが下がっていたのか、と心の中でうなづいていた。

 「でも、なんでそんな危ない目に・・。」


 「あいつら! 聖女を手にかけて殺すのは出来ないとか言って、

それだって、グルグル巻きにして魔の森に送られたら死ぬだろう!

自分が直接手にかけなきゃ聖職者でございます。

なんて、どんなふざけた理屈なのよ!」


 フレイアの気迫のこもった目が、やばい。

 ゆらゆらとたちあがる怒りのオーラがすさまじい。 

 まさに狂戦士ベルセルク


 「も、もしかして、その怒りで目覚めたの?」

 「違うわ!!」


 ひっ、息が、息が、酸素が足りない…体が動かない、

……これってもしかしてギフトスキルか?  これが怒髪天?


 「奴らは、王子達が魔獣狩りに行くのに、

性女として一緒に行けと言いやがったんだ。」


 「えーと、王子のパーティに聖女として一緒にって、

ま、まあ、一番 治癒能力が高い方を望むのは、わからなくもな…いかも…」


 「だ・か・ら、 違うの!  おんなじ”セイ”でも意味が違う。

あいつらは、私に夜のお供をしろと言ってきたんだよ、パーティ全員分。女の喜びもしらないままの私への慈悲だと言って笑ってたんだ。それで帰り道に事故が起きる予定だったんだ!!!」


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ギフト:狂戦士(ベルセルク)

ギフトスキル:怒髪天   


以上のギフトとスキルを獲得いたしました。

   スキル 怒髪天 発動

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