第2話 出会い-2
「逃げるわよ!」
そういって立ち上がった彼女は、俺の手首をつかみ走り出した。
速い! そして、うん、力強い。
さっきまでの儚げな美少女は、どこいった。
まあ、あんな目に合ったんだ、危険を感じて、必死に走ってるのか…もしれない。
2~3分程走ったところで、彼女がもつれるように倒れこみ肩で息をしている。
やっぱり、恐ろしい目に合い必死に逃げていたんだな。
『あー、もう、なんなの、この体、』 ゼイゼイ。
『ろくに走ることも出来ないの?、どんだけぬるい生活してんのよ!
あと、この胸、走ると横揺れ?縦揺れ? もうね、引っ張られるようでめっちゃ痛いんですけど……』 涙目。
俺は彼女をのぞき込み、その水色の瞳に薄っすらと涙が浮かんでいるのを見て心が痛んだ。
かわいそうに…、さっき一瞬でも怖いなんて思って悪かったな。
知らない場所であんな状態で放置されたんだ。
命の危機を感じて当たり前だよな。
ましてや、それまでは大事にされてきたんだろう、どうみてもお嬢様だし、
あの場で泣き出さないだけ、ずいぶんとしっかりしてるのかもしれない。
「何があったのか分からないけど、ここは大丈夫だよ、君の名前は?」
まだ、地面に手をついたままだけど、息切れが少し治まってきたようだ。
「私、私は七海、片瀬 七海。」
「えっ、と、ナナミ? カタセ ナナミ?……ずいぶんと、変わった名前だね。」
ってか、日本人か? まさかの?
「あっ……、」
思い切り、しまった! って顔してるよね。
二人で顔をみあわせることしばし、
「「あの……」」
「あっ、な、なにかな…」
「あっ、いえ、あの、 そちらから…、どうぞ 」
しーん。 すすまない…。
よし、思い切って尋ねてみる、
「えっと、カタセ ナナミって、 君、もしかして日本人?」
がばっと、起き上がった彼女は俺の肩をガシッとつかみ、ギラギラとした目つきで俺を見ている。 …やっぱり、怖い…かも。
「そうよ、元だけど、ってことはあんたも日本人なのね!」
「あ、ああ、俺も元だけど」
「やったー、超ラッキー! 助けてくれるよね、ね!」
気持ちは分かるけど、ちょっと待って、
顔が近いから少し離れて欲しい。ぐいぐいときすぎだろう。
「ああ、とりあえず、話は聞くよ。でも、場所変えないか?
もうすぐ夜が明けるし、ここじゃすぐに誰かに見つかるよ。」
「そうね、移動しましょう。」
俺たち二人は、取り急ぎ街中に潜り込み一軒の小さな家に向かった。
少し古びているが手入れもしてたので、十分使えるはず、ドアに手をかけて彼女を家の中へと促す。
「この家は誰の?」
「俺の。だから安心して、他には誰もいないよ。」
「俺のって、あんたの家族は? ってか、あんた 誰?」
ぐるんと振り向いて、私は油断しませんよ!
な感じで人差し指でビシッと俺を指す。
こらこら、人を指で刺してはいけません。
「今更ですけどね、」 思わず苦笑いするしかない。
「あー、俺も今、あんまり人目に付きたくないんで、家に入ってもらえますか?
嫌なら、どうぞお好きなところへ。」
なんだろうか、最初の儚げな印象がまるでない。おかしい。
それどころか彼女の周りのほうが儚く壊れてしまいそうだ。
そのせいなのか、守ってあげたくなるメーターはダダ下がりだ。
彼女は静かに家の中に入り、向い合せの席に座った。
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