王子、国王に激しく叱責される! ※ざまぁ回
「今何と申した? 我が息子、ニグレドよ」
王国リンカーンでの出来事である。玉座の間で王子は父である国王に報告をしていた。
事後報告をしていたのである。
「はい。父上。あの役立たずの無能の召喚士を追い出してやった次第であります。あいつは私との地下迷宮への攻略の際、何もせずに後をついてきただけの役立たずであります。あの召喚士は自分は支援魔法を使っていたなどと言い訳をしていましたが、嘘っぱちでしょう。恐らくは召喚魔法が使える事も詐称だと思われます。あんな嘘つきをいつまでもこの王国おいておく必要性はないでしょう。その為私がランス・テスタロッサを追い出してやりました。っはっはっはっは」
王子ニグレドは笑みを浮かべる。
「この馬鹿者めがっ!」
「ひ、ひぃっ!」
国王の怒声は異様な程のボリュームであった。それなりに体面している距離の差はあるが、それでも十二分に鼓膜に響く程だった。その声量は買った怒りの大きさを表していた。
「無能とは貴様のことだ! ニグレド! この馬鹿息子めっ!」
「な、なぜですかっ! なぜあの召喚士をそこまで評価されるのですかっ!」
「奴は名門の召喚士学院を首席で卒業した天才であるぞっ! それどころか学院始まって以来の天才と言われこの宮廷に入ってきたのだっ!」
「な、なんですと! それほどの者だったのですかっ!」
「地下迷宮での攻略の際もわしが命令をしてランス殿を貴様につかせたのだっ! ランス殿がいれば万が一強敵に遭った場合でも貴様の命は救われるとっ! 恐らくランス殿が召喚魔法を使わずに支援魔法に徹していたのにも理由がある事だろうっ! ランス殿の召喚魔法は強力すぎ、モンスターを一撃で倒してしまう。そうなれば貴様に経験値が入らないであろう。その事を考慮して、ランス殿は召喚魔法を控えていたのだっ!」
「な、なんですと! そ、そんな事を奴は考えていたのにっ!」
「くっ! ランス殿が我が王国にいれば今後十数年は安泰だったというものをっ! 貴様のような馬鹿息子を持ったが故に彼を無意味に失ってしまったというのか。うううっ……うううっ」
国王は涙を流し始めた。
「父上……そんな泣くような事なのでは。些か大袈裟なのでは?」
「うるさいっ! この馬鹿者! それほどの大事なのじゃ! 我が王国にとって彼を失うという事は」
「は、はぁ……」
ニグレドは釈然としていなかった。何となく現状をあまり受け止め切れていない様子。
一介の召喚士をクビにしたくらいで父である国王にこんな反応をされるとは夢にも思っていなかったのである。
「ニグレド! 貴様! この落とし前どうやって取ってくれるのだ!?」
「……どうやってと申しましても。うーむ」
「今すぐランス殿を探しにいけ! 貴様の足でっ!」
「な、なんですとっ! 私が行くのですかっ!」
「当たり前だろうが! 全ては貴様の落ち度だっ! 幾人か兵士を引き連れていけっ! 連れ戻せるまで帰ってくるなっ! そうでなければ貴様の王位の継承権を剥奪する!」
「な、なんですと! 王位の継承権を剥奪!」
それはつまり、自分が国王になれないという事を意味していた。流石に脳天気なニグレドにも危機感を感じてくる。
「それはやめてくださいっ! 父上! いえ! 国王陛下!」
国王になれば国民の税金で贅沢三昧に暮らし、生涯が安泰だと何となく思い描いていたのに。その人生計画が高々一介の召喚士をクビにしたくらいでご破算になるとは思ってもみなかった事だ。
「だったらランス殿を連れ戻してくるのだっ! 貴様自らの手で! いいか! それまで決して帰ってくるなよ!」
「はっ! 国王陛下! 必ずやランス殿をこの王国に連れ戻しに参ります」
ニグレドは表情を歪ませた。くそっ! こんなつもりじゃなかったのに!
こうしてニグレドは手下となる数名のパーティーメンバーを引き連れ、ランスを探す旅に出る事になったのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます