第2話 黒い写真

私は、玄関にかけてあるトレンチコートを着て、黒いスティットソンハットをかぶりバグパイプをポケットにいれた。


「それじゃ、行ってくるよ」


私は、玄関前でキッチンにいるであろう妻と娘に向かって、そういった


「行ってらっしゃい」


「パパ〜!!」


私が出かけようとしたとき、まだ5歳も満たない娘のアイが膝に抱き着いてきた。


「パパ、いっちゃやだ~」


そう無邪気な笑顔で言いながら膝をがっしりと掴まれてしまった。


「こらこら、いまから、じぃじのところに行ってくるから、いい子にして、ママの言うことを聞くのだぞ」


「じぃじにあいにいくの?いきたい~、いきたい~、じぃじにあいにゆく、そんで、おかしいっぱいもらうの~。」


「……」


私は妻と目を合わせて、互いに苦笑いをした。


私は、アイを二回ほど高い高いをしたあとに、地面におろし、目線を娘に合わせるためしゃがみこんだ


私がアイに話しかけようと目線を合わせようとすると、私の帽子をとりいじりはじめた。


「つれてくれなきゃ、これ、やんない」


私は、可愛いらしい仕草に笑みがこぼれてしまった。


「いいかい…、じぃじは重い病気なんだ」


聞いているのか、聞いてまいのか、アイは、帽子をいじりながら、私の話にたいして相づちをしていた。


「うん…」


「だから…、関係者以外はたち入れないんだ」


「うん…」


「わかったかな?」


「じぃじ…、なおるの?」


「……」


私は、その言葉の問いには何も答えらなくなり、苦笑いをしたあと、アイには悪いが話をそらすため、私は、黒い財布のから一つの黒い写真を取りだした。


「そうだ…、アイに頼みたいことがあるのだった」


「なに?」


「これなんだ?」


そう言いながら、黒い写真をアイに手渡した私は、彼女に見えやすいように、写真を真正面に渡したのだが、彼女は、どう見て良いのかわからなかったのだろう、黒い写真を回しながら見始めていた。


「これナニ?」


「少し、早いけど、アイが欲しがっていたクリスマスプレゼントだよ」


「…わかんない」


私は、写真を真正面に戻して、アイの耳元で囁きながら答えを言った。


「アイの弟だよ」


そういうと、アイは、宝物でも見つけたように目を光らせて、小さなジャンプを幾度となくし、甲高い悲鳴をあげて、喜びを爆発させていた。


「こらこら、落ち着きなさい。だから、アイはお姉さんになったのだから、お母さんと弟を守るためにお留守番できるよね」


「うん、アイ、お母さんも、弟も守れる。お留守番もできる」


「よし、そのいきだ…、それじゃ、行ってくるよ」


「行ってらっしゃい」


「いってら~しゃ~い!!」


私は、妻の頬にキスをし、娘の頬にもキスをした後玄関をでた。キースつきの扉を押し開けて、鈴がわたしが家から出ていったことを寂しげに伝えていた。

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