第2話久美子の場合

「お母さん、行ってきます。」今日は卒業式、高校最後の日、毎日通った通学路も今日で最後、4月からは大学に行くため、反対方向の駅に向かって通うのだ。私にとっては辛い高校生活だった。いや、高校だけじゃなくて、中学1年の時から今日まで6年間ずっと辛い日々だった。嫌やだった訳じゃない。ただ辛かった。なぜなら祐輔がいたから。ずっと私の側にいたから。私は辛かった。中学1年生の時、隣の席に祐輔がいた。心臓がドッキ!っとなって止まりそうになった。だってあまりにもかっこ良すぎたから!私は目を向ける事も出来なかった。それなのに祐輔は話しかけて来たりして、私は普通を装っているのに必死だった。その後も、彼に対して全然慣れなくて、その必死な思いが6年間続いた。祐輔はドンドンかっこよくなって、頭も良くて、モテモテだったけど、彼が私に接する時はいつも男友達に話すように普通に話しかけて来た。その度に私は無理やり普通を装って返事を返していた。そして、中学3年の時、祐輔が国立大学に行くって言うから、それ以来、私も必死になって祐輔の希望大学を目指して必死で勉強して来たの。でも、私は頭の良い祐輔と同じ学部には到底入れないだろうし、どの学部でもいいから、同じ大学でランクの低い学部を目指した。そしたら、祐輔の方が落ちて、私が受かってしまった。


「あ~、私も落ちれば良かったのにぃ~」


中学時代はずっとクラスが一緒だったから高校でもずっと一緒になると思っていたけど、1年の時、いきなりクラスが別々になってしまった。私がAクラスで裕輔がBクラス。それ以来高校では一度も一緒のクラスになった事が無い。ものすごいショックだった。でも、中学の時の仲間がたくさん同じ高校に流れて来ていて、その仲間たちがBクラスにいる祐輔を生徒会に推薦するという噂をが流れて来た。私も生徒会に入れればまた裕輔と一緒にいられると期待して、中学の時の仲間やクラスメイトの中でうまく立ち回って、みんなの学校生活に貢献したい!ってもっともらしい理由を付けて、私もみんなに推薦してもらったのだ。本当は裕輔と一緒で居たかっただけなんだけど、ごめんね!みんな。ありがとう。でも、私もがんばってみんなの学校生活に貢献して、恩返しして来たと思う。


それ以来3年間、祐輔と一緒に生徒会で過ごすことになった。本当は今でも一緒にいると緊張する。でも一緒にいたい。そんな気持ちで続けて来た生徒会と高校生活だったけれど、それも今日までかあ、悲しい。私はそれでいいの?黙ってお別れしちゃって、このままじゃ何も無かったのと同じじゃないの?実際、生徒会の活動以外何もなかったけど、でも、心はずっと時めいていた。それを告げずにお別れしちゃっていいの?「いやだいやだ、私、このままじゃ嫌だ」絶対に言いたい「私、祐輔のことが好きなの」って、絶対絶対に言う!今日、今からこの最後の通学路で、校門の200m前で、裕輔に会ったら、他の邪魔が入る前に言う。


そんな事を考えていたら、向こうに祐輔が見えて来た。あと、数百メートル、さあ、告白まで5分前だ、

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る