20 教育的指導
早いもので、学院生活ももう一ヶ月。
そろそろ〈ローズマリーの聖女〉のゲーム的な部分。季節イベントの迫る時期になってきた。
学院のカリキュラムの大半は大学風の単位制なのに、こういった学生的なイベントはなぜか中学か高校的な雰囲気なんだよな。
そんなわけで、入学から最初のイベントは中間試験と似たような感じのもんになる。
座学関係は学院のゲーム内設定に関するネタが問題になる三択クイズ。
戦技、魔術の実技は競技や模擬戦のような感じだった。
成績が高ければ攻略対象からの関心がアップし、またその期間中にある個別遭遇イベントを踏めば親密度なども激上がりする。
学生1年目は、こういった行事イベントや毎月の固定イベントが引っ切り無しに展開されて、2年目からのラブい攻略対象との濃密性を描きたいのか、数多い攻略対象から相手を一気に半分程度までに絞るようになる……はずなのだ。
……既に聖女盛り合わせなんつー想定外な状況では……そんな設定も破綻してる気もするんだがな。
とはいえ、今の時点じゃ起きると解ってるイベントの無視などありえない。
聖女のお邪魔虫たるウザインとしては、この時期に要らん衝突が起きる確率は高いのだ。記憶にある分は可能なかぎり回避かスルーするよう注意してるが、やっぱり強制イベントの懸念は捨てきれないので、ちょっと神経がピリついて疲れ気味だったりもするのである。
そして、そんな油断は突かれるんだよな。
「ウザイン・ナリキンバーク! そして怪奇
……本当に、油断したってのは突かれてみないと解らない。
中間試験の期間はもう少し先の話で、今日の魔術の実技授業は基礎から応用への一段階アップするものだった。
ゲーム解釈を混ぜると、一番最初に憶える魔術の強化版か、二種類の属性を備えた複合魔術をイベント的に憶えるかな時期だろうか。
俺の場合、その部分をコマンド選択で選ぶだけなので概念の方がサッパリという……。なので地味に、自分の中の意識改革ができるかなな期待を持ってた日でもあった。
うん、視野狭窄だった。
ちょっと周囲への警戒を薄くしてたよ。
なんで、またもライレーネの不意打ち襲撃を受けたわけです。
「なんですか、その心底ウンザリしたような不気味な面相は!」
「心底ウンザリしてんだよ。俺今日の授業に真摯に向き合いたいのだよ。何か、お前は俺を出汁に堂々と授業妨害する宣言でもしに来たのか?」
「そっ、そんな悪辣なことを聖女たる私がするわけ、ありませんわっ!」
「なら授業には無関係な私語は慎め。発言質問は教師に挙手の後、許可を得てしろ。聖女なら常に清廉な行動を尊め」
「とっ、当然ですわ。何を今さらな指摘にございましてよ」
……ふう。
「…………(じとー)」
フラウさん。俺は一応、学級崩壊を防いだんだよ。ほら、教師さんをごらん。開始早々混乱しかけた授業が無事再開して安堵の表情を……
「…………」
あれ、なんか頭痛にこめかみ押さえてますな。
というか、なぜ他の学生達はそこまで切羽詰まった形相で教師に注目してるのかな?
「……ウザイン様。精神支配の効果でてます。授業態度、強制」
「は?」
おお珍しい。フラウのお小言モードだ。
……じゃなくて……あー、ああ。なるほど。
俺が言ったライレーネへの授業態度の指摘が、他の学生にまで強制力のある魔法的な言葉になったと?
……おかしいな。
俺、別に魔法も魔術も使った気は無いんだが?
そんな疑問への回答は教師から来た。
「ウザイン君。例え魔術として組み立てない詠唱でも、魔力の場を展開しての発言には詠唱と似たような効果を生みます。君は常に広大に魔力場を放っているのですから、余り他人に強制する発言は控えた方が無難ですよ」
「えーと、はい?」
回答された内容がまったく理解できないのが難点だが。
「とりあえず、君自身が私の授業を自然体で受ける気持ちになりなさい。それで耐性の無い者達への強制力も下がるでしょう」
「はぁ、まぁ、えーと……解りました」
その言葉で、殆どの学生がへたり込んだ。
逆に言えば、ずっと変化が無いのは教師にフラウシア、そしてライレーネのみで、さらに細分化すると困った表情で俺を見る教師とフラウ。この状況にただ困惑の俺とライレーネへとさらに二分する態度。
その区分けに、やや憮然なってしまう俺である。
その後の全員に向けての簡単な説明で俺も少し理解した。
要するに、俺は無意識に魔物の威圧に近い魔法効果を放っていたらしい。
戦闘時に、魔物の魔力を伴う雄叫びが周囲の者達に恐怖の感情を刻んで硬直させる特殊効果と同じだ。
別に魔物でなくとも、強者などの威圧などでも同じ効果を生む。精神的な影響って形で作用を起こすものは、魔術としてではなく武技に近い感じに発動する事が多いらしい。
ほむ、なるほど。
勉強になった。やはり専門の教育機関は違うなー。
とは言え、肝心の魔術の応用の授業の方は……。
やっぱり、俺の理解の限界の向こうのようで……。
はい、さっぱりでした。
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