二章:雑魚貴族、本編開始早々に…
01 予習
さて、なんだかんだで、明日から本編がスタートする。
早いもんだったな、9年間。
できれば破滅の待つ未来ルートを、スタート地点から回避する感じで潰す事も考えないではなかったが……、なんか気づいたら雑務的ないろいろがのに対処してるうちにタイムリミットになってたし。
そうそう、俺って“夏休みの宿題は明日やる”で最終日すらあと数時間ってとこまで放置する奴だったよ。
いまさらそんな記憶が蘇っても哀しいだけだがな。
と言うか、王都入りの三年弱の準備期間があったにも関わらず、結局予定に無いトラブル続出で俺自身の事が二の次って展開は、たぶん俺の気質だけの話じゃないよな。
歴史(?)の調整力でも働いている?
いや、〈ローズマリーの聖女〉の物語進行を全部思い出せてるわけでもないし、多分シナリオ分岐をコンプしてもいないから、未見のルート入りの可能性もあるのか。
……でもアレだよな。
主人公の聖女が恋人候補とやる季節イベントは、入学した最初の年は全て踏むはずだったし。そのたあたりの記憶は確かだったと思う。
ならスタート地点から変更まみれって線も無いと思うんだがなぁ……。
ちょっと、予習代わりに思い出せるだけ思い出しとくか。
◆
〈ローズマリーの聖女〉の物語のスタートは入学式から。
学院。正式名称の王立トリシア魔導学院は、この国の十代目の王に仕えた宮廷魔術士トリシアが設立した事から歴史を始める。
最初は高位貴族に多い魔術士を組織化し、魔道兵団を整備するための教導施設だった。
歴史を経る事に軍事のみではなく、魔術の可能性全般を求める求道機関へ。
で、今ではそれらの成果を広めるための総合教育機関へと変化した。
大まかな設定はこんなもんだったはずだ。
しかし例によって作者が交代する毎に変な設定が生えまくったおかげでカオスな環境になっている。
特にアレだ。学院創設の軍事ネタの逸話自体、授業内容に攻撃魔術が多い理由のこじつけだったと思う。それも時系列的には最近の。
そんな歴史の捏造が山ほど繰り返された場所なので、とりあえず基本は魔術の専門機関と覚えておく以外にない。
学院の主旨として、魔術技能の優劣が学院内のカースト……と言いつつも世俗の貴族階級がものを言うのは定番。それらの派閥で起きている確執も定番だ。
ただし、男子はどちらかと言えば実力主義。
貴族の立場を持ち込むのは女子に多い。
これは乙女ゲームの設定なら当然か。なんせその最大派閥の筆頭が学院編ラスボスの悪役令嬢になるのだし。
というか、攻略対象の男子たちが女っぽくネチネチ陰湿な行動をするのが嫌われただけな気もするがな、この傾向。
さて……スタート直後はモノローグ的に冒頭の学院の概要が語られて、その後に登場人物全員との出会いイベントが目白押し。
不自然極まりないが、そこはご都合というやつだ。
反面、初日はもうそれでお腹一盃って感じで終わるはず。
……ああ、要注意が三人居たか。
攻略対象の男子のうち、三人。
各自、自分が参加している部活的なものの勧誘で、初日から聖女にグイグイ来る。
別に聖女だけが目当ての行動じゃないのだが、結果は変わらん。
……。
……なんで、男の俺が攻略男子を警戒せにゃならんのやら……。
いや、解っている。
解っちゃいるんだ。
なんせ聖女(予定)のフラウシアに接触してくる種馬野郎共だからだ。
予定ではフラウシアがコイツらと関わる事で俺の未来も変動する。
恋人色に染まって性格を変える主人公だ。今は俺に親愛の態度をとるフラウシアが、何が理由で敵対的な立場に変わるのかも未知数だ。
それをどれだけ速く、対処可能か見極めるのが、俺が社会的物理的に抹消される未来の回避手段なのだろう。
出来れば、それ以前の回避策で安心した暮らしがしたかったなぁ。
なんで10代そこらで田舎領主の真似事とか押付けられる状況になったのかな。
……いや、起因は憶えてる。
まだボケていない。
……前世で若年性のボケが進行ってわけじゃないよな?
そう、現実逃避だ。
自業自得だよ、コンチクショウ。
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