17 面会
さて、対面。
集まった人員は八人。
12歳が三人。10歳が一人。七歳が三人。四歳が一人。
男の子は七歳組に二人居るだけで他は女子。
身支度は神殿が調えたのか、全員、清潔で白いローブを纏い身綺麗になっている。
黙って立っている分には、なんかこう……聖歌隊って雰囲気?
ただまぁ、空気的には非情に寒々しい雰囲気としか言えないが。
まぁ、なんだ。
ほぼ全員、見事に怯えている。
なんせ貴族のボンボンと間近で対面だしね。
ああ、最も若い四歳の子は状況がわかんなくてポカンとしている。そこだけが妙にホンワカな空気。
これが金髪美少年の超高級貴族って感じならまだ怯えも少ないとは思うが、俺は成金雑魚貴族のウザインだ。そういった血統オーラとは無縁だろうし。
……うん、自虐が痛い。心の奥をこう、グッサリと。抉られた感じに。
しかも最近、身体が成長期に入ったようで。
何処か愛嬌のあった子供体型から、そろそろヒョロ男の気が出てきたんだよな……地味に哀しい。
ま、さっさと事務的に対応して孤独の世界に戻ろうか。
「ウザイン・ナリキンバークだ。お前たちにうちの事業の作業手順と、後は魔力量増加の試みを伝える。大まかには既に聞いてると思って進めたいが大丈夫か?」
下手に対話調にすると混乱するかもなので、ハイかイイエで応えられる形で進めた方が良いだろう。
そして多少でも事前情報を持っている話題なら、よりリラックスな方向へ意識を向けられる。
その目論見どおり、10歳から上の四人ははっきりと肯き、一拍置いて七歳組三人も頷く。チミッ子には期待していないのでどうでもいい。
そして全員への情報の復習のつもりで、最年長の一人に聞いている内容を確認。
そこで得たのは、全員、既に何回かは実地作業を担当していたという内容だった。
それは重畳。
ならばそれぞれに体験の感想も聞けるってもんだ。
その内容を纏めると。
乳液には現状三つの魔法を付与している。
彼女等的に一番難易度の高い魔術は〈浄化〉。それを覚えれた二名はそれ専門に付与をし、他が残り二つの魔術を分担したのだとか。
それでも、回数にした場合は各自二回から三回行使すれば限界との事。
「ふむ……その限界とはどう判断していた?」
「ええと、凄く気持ち悪くなります。酷いと全身が震えて立っていられません」
ああ、なるほど。
そのあたりの感覚は俺と同じか。
HPの枯渇寸前、割合にして九割を切っているかは解らないが、一応は超回復の範囲に行けてると思っていいのかな。
「一応聞くが、その症状が酷くなって実際に倒れた。または失神した経験のある者は?」
全員、しばらく躊躇ってたが、やがて怖ず怖ずと半数以上が挙手。
ダメじゃん!
なにやってんの神殿。立派に死にかけてんじゃんかよ!
……え?
そういった試練は往々にしてあるもので、それを乗り越えるのも信仰……とな?
いや、ちゃうから。
単に運が良かっただけだから。
……怖いとこだな、神殿。
たぶん、苦しめばそれだけ得られる徳も高いとか錯覚してるパターンだろ。
なにその俗世の損得勘定に塗れたエセ敬虔。
……と。するってーと、もしかして?
ただ一人、お友達と一緒に居れて幸せ~的な空気を放つチミッ子に視線を固定すると……。
うん、説明役の少女がひたすらに気まずい表情のまんま、頷いた。
「よし解った。とりあえず必要な道具を用意するまで作業は許さん。今日は各自、自分の唱えれる回数より一つ少なくして、後は〈灯明〉を唱えて同じ症状が出るのを確認する」
俺の知る限り、〈灯明〉は一番MPの消費が少ないと思う。それは魔術でも同じだ。全員、既に何度か超回復を経験してるとして、消費量のタイミングでHPがゼロを割るより手前で危険な症状を自覚できるようにはなるだろう。
死亡回避のアイテムが出来るまでは、この程度の対処法しかない。
俺みたいに大雑把でも視覚化した情報を見れるならまだ安全性も違うが。
……MP……魔力の増加の割合が一律ならまだ管理のしようも……なんだが。無い者強請りで無意味だな。
早く魔道具作る手段を探そう。
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