07 心を逞しく
八歳。とうとう魔術の修練を始められる。
初っ端からバカを晒したので、俺は火属性に才能があると勘違いされていた。
その後は環境被害が出ないよう全属性を慎重に確認したので周囲の認識は改まってるようだが、親父との話題には何かしらとあのクレーターが登場する。
どうにもあのインパクトは消し切れていないらしい。
さて、肝心の教師だが……最初の印象としては、ハズレかもしれない。
流石成金貴族の親父様といったところか、王都の王立魔術学院助教授といった格付けは高い。しかも年齢20代、美女の部類と、物凄そうな人材を調達してくれたのだが……なんか性格がおかしい。
言葉や態度の端々にとにかくトゲがあるというか、デレる要素の無いツンな人というか。
「まぁ、なんだ。プライドが物凄いってやつだよな」
成金子爵の金払いは歓迎するが、それでもたかが子爵に使われる立場は不愉快ですって感じだろうか。
それに加えて、俺が向こうの言う段階的なカリキュラムを無視した修学スピードを見せたのもダメだったらしい。
なんか、本当にアンタ教師してる? な感じで嫉妬心丸出しの態度になった。
いや、初級から中級の魔術とか本に載ってる時点で使えるようになってるし。
俺としては魔術の最先端で活躍してるだろう人材が有してる特別な部分が見たかったんだが……。
僅か三日で教師の資格を放棄したような、魔法に無関係な無駄な歴史的講釈やご本人の魔術解釈を述べるだけになったので、こっちも遠慮するのは止めた。
知ってるだけの上級魔術を魔法モードで大連発して心を折ってやろうかとも思ったが、幸い、この教師が闇属性も扱えると知ってそっちを活用することにした。
闇属性は別名〈汚染魔術〉や〈精神魔術〉とも呼ばれるもので、対象に様々なデバフ効果を与えられる。使い方次第では非常に危険なもののため、一般書籍としての魔術書としては出回らない。だから俺も冒険者伝いにほんの一部を習得してただけなのだ。
精神面では幼稚な教師をその気にさせて魔術の実演を見るのは簡単だった。
その魔術は〈
因みに、この説明はおだてて意気揚々と説明なさった教師によるものなので正解なのかは知らない。
で、この魔術の想定外な使用法は、相手が人でも効果対象になる事だ。『使い勝手が面倒そうな闇属性で、野盗に襲われた時の対処法で何かありますか?』的な質問の答えの一つがこれだった。
流石性根が捻れてそうな教師の回答。悪辣です。俺的にはベストな回答だけど。
因みに、闇属性を使える冒険者の魔術士からの答えは〈
うん、健全だよね。
で、早速実践。
対象はダメ教師。
魔法モードでやったので発動の痕跡も無く、しかも三連続で叩き込んでやったので美人顔が一瞬で他人に見せたら女が終わる感じになった。
まぁ予想どおりだ。知性云々関係無しだろ。おそらくはMPの最大値が精神抵抗とかも兼ねてるんじゃないかな。
検証したいが手段がいまいち解らない。この教師を実験台にとも思ったが、正直、吸い出せるだけ出したらとっととお帰り頂きたい。
いくら美人でもダメな人はダメだ。
「ま、生きた百科事典にはそれに相応しい使い方がベターだよ」
そんなわけで、俺は彼女が知る魔術を余さず実演してもらい、自分の魔法のレパートリーを増やすに留めたのである。
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