08 神様事情(灰色)

 九歳をすっ飛ばして10歳。

 この年から俺は、親父に着いて領地運営の補佐に就く事になった。

 肩書きは大げさだが、まぁ、親がどんな仕事をしているか傍で見て慣れろという感じだ。


 体術関係は基礎も習い終わり、自己鍛錬で地力を上げていく段階。

 魔術も似たような段階に……こちらは見せかけている。

 因みに、魔術の教師はとっととチェンジになっている。現時点で六人目。

 いやぁ、冥府魔導の世界の住人は病んでるのが多いね。

 で、この六人目にはかなり無理を言って用意してもらった。

 なんせ、魔術士ではなく神職様だ。魔術士の業界では神聖属性や回復系のものが少なくて。特に状態異常からの回復手段が致命的だったんで、本当に無理を言って家庭教師枠に入れてもらった。


 ただね、俺としては魔法のレパートリーさえ埋まれば良い話だったんだけど、今度は神職様側の都合もあって、この六人目、エミリア侍祭様との付き合いは半年にも及ぶ。


 この世界には信仰される神様が六柱居て、それぞれの神殿が連携して六大信仰という形で世間に広まっている。

 宗教というスタイルのおかげで国に留まるものとはならず、そのために各国は六大信仰の神殿関係とは一歩引いた立ち位置にいる。

 つまりまぁ、土地持ち貴族が特定の神殿と密接な関係を築くのは、それだけで良い印象を持たれないってわけだ。

 特にうち、成金貴族だし。

 ただ、エミリア侍祭様のとこは〈豊穣神ユタン〉と農耕に関連するとこなので表立った面倒にはなっていない。

 だって、家の領地は大規模農地だから。詳細は伝わらなくても、近しく居て不審に思われなきゃそれで良いのだ。

 ……まぁ、実際。大人の世界じゃしっかりそっちの話し合いもしてるっぽいけど。


 最近の彼女との時間は世間話がメインだ。魔法に関しては会って三日で済んでるし。

 だがその会話の内容が領地内の出来事や隣接する他の領域の話題となると……まぁ、間接的な領地運営と変わらない。

 ここで気になった部分は親父やより知ってそうな関係者に流しているし、俺も親父伝いに聞いて広めても良さげなものはエミリアへと流している。


 要は、俺とエミリアをパイプ役にしてこの領地のトップ会談やってるみたいなもんだ。

 この関係は地味に役立ってるらしい。

 なんか住人の忠誠度は異様に高いうちの領民だけど、流石に領地全域の情報を密に集めるには苦労する。また成金商人から成金貴族にジョブチェンジした親父には、意外と同業者情報の正確さが微妙なんだとか。

 そのあたりを、信仰の分野の人材が上手くサポートしてくれてるって感じらしい。


 で、ある日の事。

 そんな世間話の一つとして、とうとうその話題が出たかというネタが出た。

 領地内の不穏の影。

 それまでは、あったとしても子供の俺には伏せられてたものだった。



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