06 身体を鍛える

 七歳になった。

 本格的に体術の修練が始まる。

 教師として紹介されたのは二名。一人は昨年まで王都の騎士団に務めていた元近衛騎士様で、もう一人はここ地元を拠点に活動している冒険者だ。

 騎士様からは対人戦用の戦闘術と騎士道の礼節を習い、冒険者からは魔物相手の戦闘術を習う。

 不思議と両方とも演舞というか、社交ダンスを覚えるかのような感じだ。対人と対魔物ではステップの踏み方が違う程度で、例えるなら対人はワルツなどのスタンダード系。対魔物はラテン系全般とか。

 自分風の解釈で行くと、絶えず相手から有利な位置取りで対処しろってとこか。


「そう言えば、武芸の基本は歩法にあり、とか時代劇で聞いたような?」


 なんで日本刀の記憶が出たか意味不明だが……あちらはこの世界で使う西洋剣と違って刀身が繊細だ。刀身を打ち合うチャンバラや鍔競り合いなどしたらあっという間に壊れてしまう。基本的に“ぶったたく厳禁”のスタイルなのだ。

 そのためには常時避けながら、無駄な力を使わずに刃を相手に差し込むのが理想になる。

 それが歩法だ。極論、上半身など相手に剣の切っ先を向けた姿勢での固定でも良い。ただ相手の隙を突くため前後左右に機敏に歩み、急所に向けて前進すれば良いのだ……と。


「まぁ、本当に極論だけど」


 ただ、野獣型の魔物の動きは正にそんな感じらしい。こちらを俊敏な動きで翻弄しながら生まれた隙の一点に向けて牙や爪を突き立ててくる。

 それを紙一重でカウンターにするためにも、こちらも間合いを支配する足運びが重要なのだとか。


 対して対人戦は、同じ人同士なためにどうしても動きの共通性で相手の狙いが予想しやすい。だから絶えず流れる水のように動いて、攻防のタイミングを自分が取れるようにした方が、果たし合いでも集団戦でも有効なのだとか。


 ……まぁ、そんなレクチャーを受けつつも、俺はどうやったって殺られる側の立場から抜け出せないんだが。


 コレばかりは基礎を身体に完全に叩き込まないと無理なので、これからミッチリと覚えていく事にしよう。


 余談……と言っていいのかだけど。

 練習とは言え実践形式なので打ち身をはじめの怪我はした。

 で、その流れで回復魔法を覚えた。

 最初は両先生より施された回復魔術が元になる。それを俺が本を読んで魔法コマンドに記録したのと同じに処理された形だ。

 どうやら、魔法や魔術関係は未見のものを認識すればその時点で覚えられる的なイージー仕様らしい。


 ……ふむ、今度、魔術士の冒険者を雇って魔術を色々と披露してもらうのも良いかと思った。



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