04 お国事情(黒い)

 さて、HPに関しては総量の九割を短時間に消費した時に限り、超回復のような最大値アップが作用するのを確認した。

 だいたい30分以内に消費って感じかな。以降、HPの足りない分をMPを使って変換するような感じに。回復時間は1時間程度。最大値自体が大きく増加した後も変わらないかはまだ未確認。

 流石に絶対安静の三日間程度じゃ把握しきれない。


 ただ、HPとMPの両方が同時に大変動するのは身体に負担なのか、その間は全身麻痺のように動けない。あと地味に全身が痒いような痛みに襲われるのも困る。

 ムズムズするぅぅぅ。


 俺の所業に親父は大・歓・喜。

 敷地の一角にクレーターを二つもこさえた事は不問になった。

 それほど、息子が魔力に長けた成果は嬉しい事だったらしい。


『よし、隣国をぶんどれる!』


 そんな物騒なセリフを聞いたんで詳細を求めたら。

 うちの国は100年余り隣の国と戦争中で、毎年、収穫期の後に大規模対戦をして勝った側が相手の支配域の一部を切り取れる形になっていた。

 まるで試合のような空気だが、戦闘自体はマジモンらしい。生還率は六割。中々に厳しい。

 ただ、死亡リストの大半はその年の犯罪奴隷を兵士に見立てた処分も兼ねている。一般兵の死亡数になると両国合わせて多くても100人ほどらしい。


「なんつーか、内情が妙に生々しい……」


 犯罪奴隷。まんま文字通りの存在で、罪人を奴隷として扱った者達だ。

 囚人として無駄飯食わせて養うっていう意識は無い。常に死んでもいい重労働に役立てて、それでも死ななかったら戦争で処分しようってスタイルなのだそうだ。

 毎年それでよく在庫が尽きないなと思うが、それだけ大衆の生活が荒んでいるって事なんだろう。


 因みに、その戦闘に生き延びて当人が望むなら、犯罪奴隷から解放されて追放刑になる者もいるそうだ。大概は半死半生の状態で野垂れ死ぬそうだけど。

 解放を望まない者に関しては……うん、説明してもらえなかったよ。


 親父が言うに、俺の魔法の派手さは自軍の士気を大いに盛上げるだろう、との事。

 魔術士の役割は死ぬ役目の連中の効率的な処理なのだとか。

 派手なイベントも長々と続けたらダレるから。


 ……五歳の子供に随分過激な物言いである。

 えー……。俺に大量殺人を勧めますか?


「あまりに酷い説明なんで実感がなさ過ぎる」


 正直な感想としてはそんなとこ。

 今の俺の感性にはウザインのものも混ざってるからだろうか。命の価値が致命的に違うんだろうなという他人事な印象しか持てなかった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る