03 チート成分?
〈魔法一覧〉→〈光属性〉→〈
発動の指定先は視線で。発動タイミングは意識で。
消費MPはMPバーが0.1ミリ減る程度。
……うん、具体的な数値が解らない。
こういった物語では魔力を使うと身体から何か力が抜けるような……的な表現があるが、俺にはそういった感覚が無い。
試しにとMPが空になるまで魔法を使い続けてみたが、減って真っ赤になった表示が黒く暗転して点滅状態な変化になっても特に変わらず。
別に意識を飛ばすような感覚も無かった。
別の発見としては、MPバーが点滅していた最後で倍近くまで伸びたあと、元の長さへと縮んだ事だ。
これは推測だが、MPの超回復的な最大値増加の処理をしているのだと思っている。確認のため再びMPを空にするまで魔法を使ったら、確実に使った回数が増えていた。
魔力が多くて困る事は無かろうと、寝たきりの期間はそればかりを繰り返すようにした。
一週間分の成果としては、だいたい元の長さの30倍にはなったと思う。
相変わらず数値としては解らないが。
実家の歴史の確認の後は魔法関連の確認にした。
理由としては、歴史の本を探す途中で魔法……魔術の関係も見つけて読んだからだ。
「よく魔法と魔術は別物だ的なパターンがあるし、確認しときたいよな」
視界の中に出る〈魔法一覧〉のコマンド。これが本で知識を仕入れてからは〈魔術一覧〉ってのが別に出るようになっていたのだ。
その二つの違いを確認したかった。
「ああ、うん。見た目が違うな。確実に」
試したのは同じもの。
〈魔術一覧〉→〈光属性〉→〈灯明〉。
現象としてはLEDライトのやや眩しく感じる光量で明かりが灯る。
宙に浮かべるか、何か物体の一部に灯すかは任意だ。
特徴として、前者はその場に留まり続けるが、後者は物体の移動に合わせて持ち運びが可能。
で、魔法との最大の違いは発動時にド派手な魔法陣が湧く事だ。サイズは発動した現象と同じ。灯明の場合は光が届く範囲って事で結構大きな魔法陣が出た。
たぶん、現象の効果範囲を表している感じか?
だがそれ以外での変化は感じない。
まぁ、消費魔力の小ささからな可能性もある。
だから、ちょっと大きなものでの確認がしたかったのだ。
家の敷地内の一角が魔術の修練場として使える。
普段は召使いや家臣一同が利用してるらしい。
……いや、うちの連中。銃の射撃場みたいな場所で何を練習してんだって疑問は置いといて。
午前中は各自仕事も多く、修練場が空いてるって情報はリサーチ済みだ。
常時背後に数人のメイドが居るが、コレはもう気にしても仕方が無い。なんか貴族家の跡取り候補だし、病み上がりだし。俺一人での行動が許される理由は無いし。
「さて、部屋じゃ危なそうで試せなかったやつだよな」
〈魔法一覧〉→〈火属性〉→〈
名前からして物騒。
目標は遙か先の鎧を着けた案山子のうちの一つ。
攻撃系のもののせいか、視界に十字で切られた円型のターゲットサイトが出て目標に照準する必要があるらしいと解る。
自動照準は無いのかと少し残念に思う。
と、サイトの円の中が拡大表示か。なら命中精度は落ち難そうだ。
で、発射。
「……あ……」
距離的には直線で50mはあったと思う。しかし魔法の効果はそれとほぼ同じ範囲だったようで。
一瞬、直ぐ目の前までが白に近い炎の壁で埋め尽くされた。
不思議と熱さは感じないが、足下までみるみる燃えて、溶けて、溶岩のように変質していく様に驚いて後退る。
そうしなかったら多分、とっぷりとマグマの地面に沈んでいたろう。
背後のメイド達をクッションにして尻餅をつき、彼女らと共に呆然とするしかない俺が居た。
幸い、俺同様に二次被害を受けた様子は無かった。一安心だよ。
「……えーと、魔法的な特殊効果か、被害は一定範囲だけに集約するのか」
不思議な感覚だったが、“ここまでは危険、ここからは安全”の境界線がなんとなくは解った。ただし高熱の影響でその境界線の予想が拡大したってのは想定外。
まぁ、そのあたりの感覚は慣れていくしかないだろう。
MPバーは一割程度減っている。
威力の割にはコスパが良い?
というか、半径50mを焼き尽くす爆炎を連発する機会なんか怖すぎるが。
「えっと、そんじゃ次か」
気を取り直して、次だ。
大混乱したメイド達を落ち着けるのに地味に時間を使った。具体的には減ったMPバーの半分が回復するくらいの時間。
俺を部屋に戻す多数決案は強引に却下。これぞ貴族の特権、いやちゃうか。
というか、魔法と魔術の違いの確認くらいしないとクレーターの造り損だ。(意味不明)
今度はもっと距離を取って、しかも何処から調達してきたのかメイド達がタワーシールドのファランクス防御をした後からのテストになる。
〈魔術一覧〉→〈火属性〉→〈爆炎〉。
微妙に表記が違うが、感覚的には同じだと解る。
起動手順も同じ。
違うのは魔法陣が効果範囲を大地に描き出し……ああ、これで被害の範囲も予想できるのかと納得。
だが、ここでちょっと想定外。
発動、発射の瞬間に減ったものはMPバーではなく“HPバー”の方だった。
それもほぼ、全部。
「え?」
急激に意識が遠のく。
手足の先端から体温が無くなるのが解り、自分が死にかけているのを自覚した。
……うん、HPバーの効果をこんな形で確認したくは無かったな。
数値的にゼロを表現するだろうなバーの暗転点滅が霞む視界の中、微かに見えて。
ああ、死んだと覚悟した瞬間に点滅が終了。暗転から赤く変化し、瀕死状態から徐々に回復していくHPバーを確認できた。
「あれ、なぜ?」
理由はすぐ解った。
HPの回復に合わせてMPの方が減って行っている。おそらくは魔法で使った分と同量を使用するのだと推測した。
「ああ、つまり、“そういう事か”」
この工程の違いが魔法と魔術の違いなのだろう。
思えば俺は魔力の最大値を増やす事はしてたが、体力……生命力かの方は手付かずで済ませていた。
視界上のバーの長さは同じでも、内包する数値的なものはまるで違うのだ。
今の俺のHP最大値はMPの一割にも満たないんだろう。
それだけの事だった。
因みに、爆炎の効果は大爆炎より二割弱小さく発現していた。
今度は気持ち的な覚悟完了のメイドたちは狼狽えなかったが、気づけば背後で俺がポテチンと倒れていたのだ。
それが理由でまたも大混乱。
今度こそ部屋に連れ戻され、また三日ばかり絶対安静とあいなった。
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