02 雑魚貴族
ボク、ウザイン・ナリキンバーク。五歳。
ナリキンバーク子爵家の次男だよ。
て事で、やっと自分の背景を確認できた。
襲撃の日から一週間も過ぎたよ。
確か学院に通うのは14歳になってから。聖女と出会うまで9年程の時間がある。
多少余裕があると解って一安心だ。
というか、もう俺の中では〈ローズマリーの聖女〉の物語の記憶は真実であり、確実に来る未来の惨劇になっている。
なんとしてもこの9年の間に回避策を見つけないとな使命感がある。
「ウザイン。妙な設定は色々生えてるけど、やっぱり雑魚なんだよな。肝心な部分の設定とか結構抜けてるし」
自分が覚えていないって部分は脇に置いて。
無い情報はとにかく補完しとかないと。
体力が回復して動けるようになった俺は、まず実家回りの現状を知る事から始めた。
ナリキンバーク家は元々は平民の商家。父親が先王の王弟である公爵家に多大な貢献をした事で貴族入り。その後は有用な領地を得るために活動し、爵位もそれに見合う子爵まで功績を積んで引き上げた。
たった一代。それも数十年でだ。まぁ、見事な出世物語だろう。
情報の出所が実家の図書室。しかも自叙伝(半生分)なんで脚色ありだとは思うが。
ただ、何気ない風を装って召し使い達からも話を聞くに、案外真っ当な商人として出世したらしくも思えた。
家の召使い達の大半は、元は最下層の出身だったのだ。
人員コストを最低限にの精神だったらしいが、その過程でしっかりと教育は施したようで。なんか末端の部下に至るまで父親への忠誠度が半端ない。
反面、俺を襲った襲撃者も最下層出身と予想されている矛盾。
推測としては、成り上がりの家のマイナス情報を流して扇動してる可能性が大きいとか。
この世界の最下層の人とは、あらゆる面で無知なのだ。義務教育も無いしネットも無い環境じゃ簡単に他人に騙される馬鹿なメンタルにしかならないらしい。『自分がそうだったから』と力説されたら……まぁ、その場での反論は言えないわ。
家の歴史では、元は高品質雑貨を扱ってたが土地を得てからは農産物がメイン。
小麦といった堅実なものから、世間には出回ってないが売れる新作物の量産商販化などに頑張っているらしい。そっちの陣頭指揮は既に仕事の面では跡を継いでる長男の領分。
なんか長男は商売専念で活動し、貴族家としては次男の俺が跡を継ぐ予定のようだ。
これについての補間情報は、長男は経営知識と手腕以外には凡人だった事。対して俺は、生まれながらに魔力に秀でていたためらしい。
貴族の家は魔力を持つ事が大きなステータスになるのだそうで。
魔力……
魔力、かぁ……。
「……これ、魔力って言っていいのかなぁ?」
実は、ウザインが俺として目覚めて以来、視界にちょっと変わった変化が出ていた。
視界の上側左端に、緑色の横棒の帯が視える。注目し辛いとこを頑張ってい視ると、帯の端に“MP”という文字も確認できた。
……ってこれ。マジックポイントの表示だよな。それもゲームで定番の。
因みに視界の右上端にも青い帯があって、こっちは“HP”だよ。
ヒットポイントだろうな。
最初に確認した時はほぼ真っ赤な帯で、毎日少しずつ青の領域が増えていった。つまり、自然回復したって事だろう。実に解りやすい。
で、話を戻して魔力なんだが。
このMPに意識を向けて“魔法”と考えると視界に使える魔法一覧が出たのな。
まさかのコマンド選択式という。
本当に、魔力って何なのやら?
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