番外 紙の束
「あーーーー片付かない!」
原稿用紙が山積みになった部屋で、三雲は散らかり放題の原稿を投げ捨てて大声を上げた。
「ちょっと三雲さん!?昔の原稿投げないで!」
「だっておかしくないですか!なんで私たちが倉庫担当なんですか!」
年末年始といえば大掃除。それは金村が勤めている会社でも同じで、金村は新人の三雲と一緒に長い間放置されていた資料室の整理をしていた。
「そもそもなんで今更なんですか!この原稿たちってこの会社がまだ雑誌やってた時のやつですよね」
「まぁね…HPが安定してきたから、過去の記事もデジタルで見れるようにしようっていうプロジェクトが始まっているらしいよ」
「はぁ!?そんなの出したお偉いさんがやれっての!ただでさえ忙しいのにぃ…」
最近の若い子は元気だなぁと金村は浅くため息をつく。確かにその意見には酷く賛成だ。
「まぁ、面白そうなのあったら読んだりしてのんびりやろうよ」
頭に血を上らせている後輩を宥めて金村は自分も作業を再開させる。若干ホコリ臭さが気になるものの、金村はインクと紙の匂いでいっぱいの倉庫が嫌いではなかった。彼が目をやると三雲も渋々と言うようにではあるが作業を再開しているのが目に入る。根は仕事熱心のいい子なのだ。
(それにしても…)
沢山あるなぁとしみじみ思った。もう人生を半分ほど…随分と長い時間を生きてきたと思ってはいたがこの会社に比べたらまだまだ駆け出しの若造のようなものだと感じる。
「…まだまだ腐る訳にはいかないな」
そう再認識して、金村は目の前にある原稿をまたひとつ手に取った。
(暗転)
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