第4章 2 クロード警部補の事情聴取 2
コリンがおっかなびっくり工場の出口に行くと、そこには帽子姿にダークブラウンのコートに身を包み、口元をマフラーで覆ったクロード警部補が立っていた。
「あ、あの…」
コリンは恐る恐る声を掛けた。
「君がコリン君かね?」
「は、はい…そうですけど…」
「君にいくつか聞きたいことがあってね、まずは…少し場所を移そうか?」
「は、はい…」
コリンが頷くと、クロード警部補は歩き出した。やがて工場の外にあるベンチを見つけると座った。
「コリン君。君も隣に座りたまえ」
「はい…」
コリンは素直に従い、クロード警部補の隣に座る。
「私は『コックス』にある警察署からやってきたクロードという者だよ」
彼はコリンが隣に座ると早速自己紹介した。
「『コックス』から…?」
(『コックス』と言えば、カウベリーの隣にある大きな町じゃないか…あ?!ひょっとして…!)
コリンの顔色が変わったのを見て、クロード警部補は言った。
「君はルドルフ君を知っているね?」
「は、はい…中学の時の友人です…」
「そうか。ひょっとして…ルドルフ君から何か話を聞いているかい?」
「はい…『カウベリー』で教会が燃え落ちた事件について…」
「そうか…それじゃ君はあの火事を起こしたのが誰か知っているんだね?」
クロード警部補は手帳と万年筆を取り出しながら尋ねてきた。コリンは無言でうなずくと口を開いた。
「右手に火のついた薪を持っていたのは…グレースで、それを止めようとしたイワンが彼女の右手を強く掴んだ拍子に薪を落としてしまって…あっという間に火は燃え広がって火事になったんです…」
「そうか…それを証明してくれる人物は?」
「ノラです…もう彼女しかいません」
そしてコリンは俯いた。
「そうか、ありがとう。助かったよ」
そして改めてコリンを見ると言った。
「どうだい?工場の仕事は…?」
「正直言って…辛い事だらけです。俺は…もういつ死んでもおかしくない状況にいます」
「そうか‥」
「それに、俺はもう完全に居場所を無くしてしまいました」
「え?それはどういうことだい?」
「ついさっき…刑事さんが俺のところへ来たことで…クビになってしまったんですよ。この工場の悪口を警察にチクったんじゃないかと疑われて…」
「な、何だってっ?!」
クロード警部補はその話に驚いてしまった。
(な、何て事だ…!俺がこの少年に会いに来たことでクビにされてしまうとは…!)
「そうか、それは悪い事をしてしまったね。だが安心しなさい。すぐにそれは誤解だと工場の偉い人に話をつけてあげるよ」
するとコリンは激しく首を振った。
「いいんですっ!お、俺…この仕事を辞めたかったんです!」
そしてポケットから手紙を取り出すと言った。
「実はルドルフから手紙をもらったんです…ここ『ボルト』ではオルゴール工房はたくさんあるのに職人が不足しているから工場を辞めてオルゴール工房で働いたらどうかと持ち掛けられていたんです。だけど、俺は何を馬鹿な事を言ってるんだと思っていました。だって…辞められるものならとっくに辞めていましたよ!」
コリンは血を吐くように言う。
「ここを脱走して…連れ戻されて酷い暴力を受けた後、不眠不休で働かされて死んでいった仲間たちがどれだけいた事か…俺は全てを諦めていたけれど…クビになったんです。ようやく俺は自由になれたんですよっ!だけど‥‥どうすればオルゴール工房で働けるか‥」
コリンはうなだれた。
クロード警部補は黙ってコリンの話を聞いていたが…ある考えが頭をよぎった―。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます