第10章 3 醜いグレース
「話って・・何なんですか?一体・・。」
しかし、それには答えずエドガーは言った。
「・・・随分この部屋は暗いな・・・。何故、カーテンを開けないんだ?これでは薄暗くて良く見えない。目に悪いじゃないか。」
「そうですね、カーテンを開けましょう。」
ルドルフは立ち上がると部屋のカーテンに手を掛けた。
「あ・・・や、やめてっ!」
グレースが制止するも・・・間に合わず、部屋のカーテンがシャッと開けられ、途端に外の眩しい日差しが部屋の中に差し込む。
「いやああっ!やめて!カーテンを閉めてよぉっ!!」
悲鳴を上げて顔を覆うグレース。そしてその隠した手の隙間から・・ケロイドの顔が覗き見え、そのあまりのすさまじさにエドガーとルドルフは息を飲んだ。
「は・・早く・・早くカーテンをしめてよ・・・・。」
顔を両手で隠し、ガタガタと震えるグレースを見てエドガーがルドルフに言った。
「ルドルフ、部屋のカーテンを・・閉めてやってくれ・・・・。」
「はい・・・。」
ルドルフがカーテンを閉めると部屋の中は再び薄暗くなった。
一方のグレースは両肩を抱きしめ、ハアハアと荒い息を吐きながら震えている。
「み・・見たでしょう?私の顔・・・。」
グレースは背を向けたままエドガーとルドルフに声をかけて来た。
「ああ・・・。」
エドガーは返事をしたが、ルドルフは無言だ。
「それで・・聞きたい事って・・一体何?私のこの・・顔の火傷の事でも聞きたいわけ?」
グレースは半ばヤケになりながら2人の顔を交互にみると、いきなり髪の毛をかき上げて素顔をさらけ出した。
「「!」」
その顔を見てルドルフとエドガーは息を飲んだ。グレースの顔にはまるで縦断するかのように醜いケロイドの傷が走っている。特に口元の傷は酷く・・唇の皮膚が捲れ、完全に口を閉じる事が出来なくなっていた。
「フフフ・・・・どう?この醜い火傷の後・・この火傷のせいで私の生活は一転してしまったのよ?それも全ては・・・。」
グレースは自嘲気味に笑った。すると・・・。
「そうなったのは・・・自分のせいだろう?」
ルドルフが冷たい声で言い放った。
「!」
グレースはルドルフのその言葉に凍り付いた。
「え・・?ルドルフ・・・?」
「そうだな。グレース・・・その火傷は自分のせいだ。それなのに・・・君は今一体何を言おうとしていたんだ?」
エドガーは静かな声でグレースに尋ねた。
「は・・?い、一体・・何を言ってるのですか・・?私には意味が分かりません。」
しかし、その身体は小刻みに震えている。
(ま、まさか・・ルドルフもエドガーも・・・あの火事の犯人が誰か知っているの・・?そ、そんなはずはないわ・・!)
「グレース・・・本当は君が犯人なんだろう?あの教会が焼けた原因を作ったのは・・。」
ルドルフは椅子に座るとグレースをじっと見つめた。
「!」
ルドルフに恋していた頃・・・グレースはルドルフの視線を独り占めしたいとずっと願っていた。けれど今、彼がグレースを見つめる瞳は・・とても冷たく、背筋が凍りそうなほどであった。
(嘘よ・・・ルドルフは・・こんな人では無かったわ・・。いつも笑顔で・・・優しくて・・・こんな冷たい瞳を持ってなんかいなかったわ・・!)
グレースは知らない。ルドルフからあの優しい笑顔を奪ったのも・・こんなに冷たい瞳を持つきっかけを作ったのも・・・自分が全ての元凶だと言う事を。
「さあ、グレース。正直に話すんだ、あの教会焼失事件は君がやったんだろう?嫌がるヒルダを無理やり馬車に乗せて教会に連れだしたのも・・火事の原因を起こしたのも・・。」
エドガーは怯えるグレースから片時も目を離さずに言う。
「し・・知らないわっ!何故私があの火事を起こさなくちゃいけないの?だってヒルダが自分から名乗ったんでしょう?自分のせいで教会が火事になったって!大体・・そうよ、証拠よ!私が犯人って言う証拠は何処にあるのよっ!」
グレースはエドガーとルドルフを見ながらヒステリックに喚いた―。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます