嫌われた令嬢、ヒルダ・フィールズは終止符を打つ

第1章 11 お見合い相談

翌朝―

ルドルフはグレースとノラの3人でいつものように登校していた。

「ねえ、ルドルフ。今朝は何だか元気が無いようだけどどうしたの？」

ノラがルドルフに尋ねてきた。

「ええ・・そう言えばそうね。何かあったの？」

グレースはルドルフの顔を見つめた。

「う、うん・・・。実はヒルダ様が・・・。」

ルドルフは言いよどんだ。

「ヒルダ様？」

ノラがその言葉に反応する。

「ヒルダ様って・・・もしかしてルドルフのお父さんが務めているお屋敷の令嬢の事よね・・？」

グレースが言うと、ルドルフが頷いた。

「うん、そうなんだ・・・。ヒルダ様・・今度の週末にお見合いをしなければいけないらしいんだけど・・・嫌がっていて相談されたんだ。けれど僕にはどうする事も出来なくて・・・。」

そしてため息をつくルドルフを見てノラは言った。

「何だ、そんな事なの？別にルドルフが悩むことじゃないでしょう？お見合いすればいいだけの話じゃないの。それで、はい・ごめんなさ～い、お断りさせて下さいで終わりでいいと思うけど？」

「多分、貴族社会には僕たちには理解できない何かがあるんじゃないのかな？家同士の結びつきの為・・・とか。簡単に断れないから・・・ヒルダ様も悩まれていると思うんだ。相手に対する好き嫌いは関係ないのかもれないよ？」

そんな2人のやり取りを黙ってグレースは聞いていたが、やがて口を開いた。

「そもそも、何故ヒルダ様はそこまでお見合いを嫌がるの？誰か好きな人でもいるのかしら・・？」

「え？ヒルダ様に・・・好きな人が・・？！」

ルドルフの何故か驚いた反応にグレースは尋ねた。

「ねえ・・・ルドルフ。何故、ヒルダ様の好きな人の話で・・・そこまで過敏に反応うするの・・？」

「え・・・？僕が・・・？」

ルドルフはグレースに指摘されて始めて気が付いた。

（そう言えば・・僕は何故かヒルダ様のお見合いの話を聞かされた時・・・嫌だと思ってしまった。お見合いなんかしないで下さいと思わず口に出してしまいそうになったけど・・どうしてなんだろう・・・。）

考え込んでしまったルドルフを見たノラがグレースを肘で小突き、目配せをすると言った。

「あ・・・あのね、私先に学校へ行ってるわ。先生に用事があるのを思い出したから。グレースとノアは後からゆっくり来ていいからね？」

「う、うん・・。」

ルドルフが返事をすると、突然ノラがグレースに小声で耳打ちしてきた。

「頑張るのよ、グレース。」

その言葉を聞かされたグレースは途端に顔が真っ赤になった。そしてそんな2人を不思議そうな目で見つめるルドルルフ。

「それじゃ、また後でね～！」

ノラが手を振って走り去っていく後姿をルドルフとグレースは2人で見送った。やがてルドルフが言った。

「僕たちも行こうか？」

そう言って歩き始めようとしたとき、突然ルドルフはグレースに服の裾を掴まれ引き留められた。

「ま・・待って、ルドルフッ！」

「どうしたの？グレース。」

ルドルフは立ち止まってグレースを振り返ると、頬を真っ赤に染めて立っている。

「あ・あの・・ね・・・。ルドルフ。わ、私・・・貴方の事が・・・。」

グレースは顔を上げると、ルドルフの顔をじっと見つめた。

その表情は・・・真剣だった―。

その頃、ヒルダは教室の自分の席でため息ばかりついていた。

「おはよう、ヒルダ。」

教室へ入って来たシャーリーがいつものようにヒルダに声を掛けた。

「おはよう・・・シャーリー・・・。」

顔を上げたヒルダの顔色は昨日以上に青ざめていた。よく見ると目の下にはクマがある。

「ど、どうしたの？！ヒルダッ！具合でも悪いのっ？！」

驚いたシャーリーはヒルダの額に手を当てた。

「う～ん・・・熱は無いみたいだけど・・？一体何があったの？」

シャーリーは椅子を持って来るとヒルダの正面に座った。

「そ、それが・・・今度の週末、私・・・お見合いをする事になってしまったの・・・。」

「え？お見合い？」

「うん、そうなの。だけど私はルドルフが好きだから・・お見合いしたく無くて・・。」

「う〜ん・・・そうなのね・・・。でも親が決めたお見合いなら私達は

受けるしか無いものね・・。そうだっ！いい事があるわっ！」

シャーリーはポンと手を叩くと言った。

「いい事？それはどんな事なの？」

「相手に嫌われるようなことを擦ればいいのよ。うんと我儘を言って困らせたりとか・・確か隣のクラスのアリーナが大嫌いなお見合い相手だったから言いたい放題我儘を言って相手を困らせて破談にさせた事があるらしいから、ヒルダもやってみるのよ！」

「ええ？でも・・・どんな風に・・・？」

「そう、例えばね・・・。」

そしてシャーリーはヒルダにお見合いを破談にさせる為の様々なアドバイスを教えるのだった―。