24

「ついたぜ、ここにボスがいる。」

霧風についていった3人が案内されたのは、いかにも格式のありそうな日本家屋だった。

「うわぁ、広っ‥。」

アパート暮らしの亮太と光は勿論のこと、実家住まいのちとせですら驚く大きさである。

ピンポーン

『霧風か。』

「ああ。連れてきたぜ爺さん。」

『客間に案内しておけ。すぐに行く。』

「あいよ。」

インターホン越しに短い会話を終えた霧風は、重い門を横に開ける。

「んじゃ、どうぞ。」


屋敷の中に入った3人。多くの人が部屋や廊下にたむろしている。

「なんでこんな慌ただしい感じなんだ…。」

「スマンな、今ちょっと仲良くねぇ所とのトラブルがあって少しバタバタしてんだ。まぁ、気にすんな。」

(気にすんなって言われてもなぁ‥。)

その時であった。

「おーい、イタチ!いるんでしょ、どこー?」

「アイツ‥。イタチって呼ぶのやめろって言ってんのに。」

霧風がため息をついた直後、意外な人物が現れた。

「あーいたいた、客間の準備出来てる‥って泊にちとせ?え、どゆこと?」

「嘘‥冬香?」「お前‥確か翡翠か?」

ちとせの友人、翡翠冬香がいたのである。

「え、何でここに‥。」「どういうことだよ‥?」「おいちょっと待て、何が起こってる?」

戸惑う亮太とちとせ、そして状況を飲み込めていない光を他所に、霧風と翡翠は話し始める。

「ちょっとイタチ、これどゆこと?‥まさか爺ちゃんの待ち人って、泊?」

「翡翠お前な、イタチって呼ぶのやめろ。何回言わせるんだよ。‥そうだよ、爺さんの待ち人はコイツ、泊亮太だ。知り合いか?」

「うん、高校のクラスメート。そっか、そういうことかぁ。」

どこか納得した様子の翡翠に、ちとせが話しかける。

「ちょ、ちょっと!何で冬香がここにいるの?異能力者なのは知ってたけど‥。」

「だってあたし、ここの関係者だから。イタ‥いけない、霧風の同僚ってとこかな。」

「えっと、それどういうこと?」

まだ多くの疑問が残っていたが、時間がそれを許さなかった。

「話を切るようでわりいが、客間に着いたぞ。後の話は爺さんとオレでする。翡翠は自分の持ち場に戻れ。」

「ちぇ、はーい。んじゃ泊にちとせ、また学校でね。」

不満そうな表情を抱え、翡翠は奥へと駆けていった。

「おい、亮太にちとせ。さっきの翡翠だっけ?お前らの知り合いなのか?」

「うん、私の友人。まさかここにいるとは思ってなかったな。」

未だ驚きを隠せないちとせ。そして、それは亮太も同様である。

(まさか翡翠がいるとは‥。一体ボスとやらは何者なんだよ?)


「ここが客間だ。入りな。」

霧風に通された客間には、低いテーブルが一つだけ置かれている。その片側に亮太を中心に3人が横並びに座ると、霧風は向かい、ではなくその横に腰を下ろした。

「スマン、爺さん来るまで待ってくれ。」


待つこと数分。客間に和服姿の初老の男が入ってきた。

「爺さん、ちょっと遅いぞ。」

「済まぬ。待たせたな、泊亮太。」

「別にいい。それより要件はなんだ。」

要件も知らされずにここまで連れてこられた亮太は、声に不機嫌さを隠さない。しかし、老人は気にせず亮太ら3人の向かいに座ると話し出す。

「まあ待て、自己紹介ぐらい構わんだろ。」

(ああ、この爺さんも人の話を気にしない人か。)

亮太はもう何を言っても無駄と感じ、大人しく話を聞くことにした。

「わしはこの家の家主、泊巌だ。」

「おい、今泊って‥まさかあんたは‥!」

その名に驚きを隠せず、動揺する亮太。光とちとせもその事実に思い至り目を見開く。

「ああそうとも。」


「わしは、お前の祖父だ。」

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