13
翌日。
亮太、光、ちとせの3人は再び亮太のアパートに集合していた。
「で、何から手をつけるの?」
開口一番、口を開いたちとせに、亮太はしばし考えてから応えた。
「とりあえず、神永さんが持ってきてくれた資料を読んで、気になることがあったら言ってくれ。」
「泊君はいいの?」
「ああ。俺は昨日のうちに読んでおいた。」
そう言って、亮太は2人にクリップで纏められた紙の束を手渡した。
警察の捜査資料だから当たり前ではあるが、資料は実に丁寧かつ簡潔だった。
事件現場の当時の状況、被害者の個人情報、警察の捜査状況といった様々な情報がキッチリと記され、束になってまとめられていた。
ただ、手がかりとなりそうなものはやはりなかった。
先に資料を見切った光が、気になったことを聞き始める。
「正直、気になることが全くないっていうのが一番気になるなぁ。亮太、これ天帝眼で見てみたか?」
「勿論見た。が、あまり納得のいかない結果が出てきている。」
「納得のいかない結果?どういうことだよ?」
「それがなぁ…」
ここでようやく資料を読み切ったちとせがぼやき始めた。
「ああーもう!全っ然わかんない!いいじゃんもう『妖怪の仕業だ!』で。」
部屋の空気が凍りついた。
丸々3分。ようやくちとせが口を開いた。
「ごめん、今のは冗談……」
「ありだな。」「その可能性はある。」
意外な2人からの返答に、驚くちとせ。
「まあ、『妖怪の仕業だ!』っていう台詞はあのアニメじゃ1回しか使われてないから、アニメを代表する台詞として使うのはやめてほしいんだが…」
「そこのツッコミが先かお前は、」
いつもと全く変わらないノリの亮太に呆れる光を尻目に、亮太は語る。
「ぶっちゃけ、天帝眼で見た結果は妖怪の仕業と出た。女性の失踪事件はドラキュラ伯爵、ビルの凍結事件は雪女、家屋の崩壊事件はフランケンシュタイン。ただ、妖怪なんて存在は実在しないから………」
「いや、出来ないことはないぞ。」
亮太の言葉を遮り、あっさりと言ってのける光。先程のちとせの台詞で、ひとつ浮かんでいたことがあった。
「おいどういうことだよ?妖怪を実体化させる異能者がこの町にいるのか?」
「さすがだな、亮太。」
その意味を知り言葉を失う亮太に、光は続ける。
「噂でしか聞いたことがないんだが、妖怪などの空想上の生物を実体化させる、『召喚師(サモナー)』と呼ばれる異能力者がこの町にいるらしい。天帝眼で見た結果が妖怪の仕業なら、実行犯は間違いなくそいつのはずだ。」
「噂でしか聞いたことがないってことは、どんな人なのかは分からない?」
「そういうことだ、高凪。」
無論、噂があるなら当然それを流した人物がいるはずである。
「じゃあ、その噂の出所を追うのが一番手っ取り早いんじゃない?」
そうちとせが考えるのも、ある意味必然である。
しかし、ここに1人、もう一つ案を出した奴がいた。
「次の被害者になりそうな奴をリストアップするってのはどうだ?」
亮太である。
「確かにな。そうすれば確実に犯人の尻尾を掴める。だがいつ犯人が動くかはわからん。そこまで待たなきゃならないぞ。」
「じゃあ両方やろうよ。分担してさ。」
ちとせの提案に2人も同意し、割り振りが決められた。
亮太:被害者候補のリストアップ
光:召喚師の噂の出本の解明
「お前はどうすんだ?」
まだ割り振りのないちとせに亮太は質問する。
返ってきた答えは、
「私?異能力を使って私なりに情報を集めてみる。」
「あんま無茶するなよ。んじゃ、行きますか。」
割り振りに沿って、早速3人は行動を開始した。
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