6
「「アンタを、倒す!」」
亮太と光の宣言にも、動じないドクター。
「ほう、やれるものならやってご覧なさい!」
そう返すと、手に持った透明な何かを容赦なく振るう。
その何かは光に直撃し、亮太を巻き込んで吹き飛ばす。
「ぐわあぁっ!」
「マズいな、この攻撃を読めないことには埒があかない。」
ダメージが少なかったせいか、平然としている亮太。
「お前な、せめて俺を気遣うぐらいしない?普通友達が怪我したら気遣うモンだろ。」
「あ、そーなの?今まで友達いなかったからわかんなかった。スマン。」
「………。」
呆れて言葉を忘れる光。
「…お前に常識を求めた俺がバカだった。」
ため息をつく光をよそに、ドクターは再び透明な何かを振り下ろす。
「うわ、あっぶね!」
今回は上手いことかわしたが、もう片方の手にも持ったようで、すぐにまた次がくる。
「光!」
亮太が光を突き飛ばし、回避させた。そんな亮太に対し、ドクターは執拗に攻撃を加えるが、亮太にはダメージを受けている様子はない。
(あいつ、異能で見切ってやがるな。)
彼を援護したいところだが、ドクターの改造を受けた今の自分の異能が何なのかすら分からない。
(くそっ、どうすれば………。)
焦る光の目に飛び込んできたのは、隣の小部屋へと続くドアだった。先ほどまで自身がいた部屋である。
(あの部屋は実験室だった、あそこなら、俺の異能の資料がある!)
亮太と戦うドクターの目を盗み、光は隣の小部屋へと入っていった。
(よっし、うまくいった。計算通りだ。)
隣の小部屋に入った光を視界の端で捉えた亮太は心のなかでほくそ笑んだ。
自身に呆れる光を尻目に異能を発動させていた亮太は、その力で僅かな空気の流れを見抜いてドクターの攻撃をかわすばかりか、空気の流れ方からドクターが持っているのは鉄パイプであること、ドクターの異能は手に持った物体を透明化させる異能であることを見抜いていた。
さらには、おそらく光の異能についての資料があるであろう隣の小部屋に光を誘導すべく、積極的にドクターに対峙し、彼の注意を光からそらした上彼を小部屋のドアが見えない位置に誘導していたのである。
(出来ることなら攻撃をかいくぐって突っ込みたいんだが、意外にも攻撃のテンポが速いせいで近づくことすら出来ねぇ。やっぱり光を待たなきゃなぁ。)
と、そんなことを考えながらドクターの攻撃をさばいていると、彼が話しかけてくる。
「そういえば、もう1人の光君はどうしました?姿が見えませんが?」
仕方がないので、攻撃をかわしつつ亮太は答えをかえす。
「自分の異能を知るために、アンタの目を盗んで隣の小部屋にいったよ。まあ、正確にはそうなるよう俺が仕組んだんだけど。」
「どういうことです?はっ、まさか…」
「そうだよ、この目の力さ。アンタに光が見えないよう戦闘しながらそれとなく誘導していたんだ。」
「ほう、天帝眼がまさかこれほどまでの力とは。さすがは私!」
「まあ作ったのはアンタだものな。それを考えると、アンタには感謝しなきゃいけないのかもしれねぇな。」
「おや、感謝ですか?意外ですねぇ、さっき君は力を嫌っていませんでしたか?」
「確かに、俺はこの力が好きじゃなかった。制御はできないし、いじめられるし。だけど。」
『失ったものを悔やんでも何も変わらない!』
前を向かせてくれた、アイツ。
『お前には無限の可能性がある。』
未来を教えてくれた、アイツ。
アイツとの出逢いで見えたもの、それは…。
「この力があったから、俺は希望と夢に逢えた。」
こんな俺でも、受け入れてくれる奴がいる。
こんな俺にも、居場所がある。
こんな力にも、使い道がある。
そんな「希望」。
この力があれば、もっとたくさんの人を救える。
だったら、救える人は救いたい。
そんな「夢」。
「だから、俺はアンタに感謝すべきかもしれない。だけど、アンタは何人もの実験者の人生を歪めた。アンタをほっとけば、もっとたくさんの人の人生が歪む。だからアンタは倒す!」
そのとき、亮太の右目が何かを捉えた。
(隣の小部屋のドアの向こうに気配。アイツやりやがったな。)
光の気配を捉えた亮太は、ドクターを再び誘導し、ドアの見える位置に動かす。
直後、ドアが開いた。そして……。
光が、こちらへ向かってきた。
天井を歩いて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます