4

分析の末に導き出した、犯人達の逃走先と思われる倉庫に辿り着いた亮太。

(やっぱりな…)

隣の駐車スペースには、軽トラックが停まっていた。

倉庫の正面には、重いシャッターが閉まっており、すぐ隣には人1人が通れるくらいのドアが備わっていた。無論こちらもしまっている。

周囲は似たような倉庫が建ち並び、人気は全くといっていいほどない。

(誰かを連れ込むにはとっておきの場所、ってわけだ。さて、入り口は2種類、どっちから入った方がいいかと………)

人気がないとはいえ、派手な物音をたてて関係ない人々が集まってくるのは御免である。

(それを考えると、シャッターよりはドアの方が蹴り破るには楽か。)

ドアに近づいた亮太だったが、ドアノブに手をかける直前、すばやく身を引いた。

(ドアの向こうにわずかに人の気配…それも1人じゃない、複数あるな……)

しばらく思案した亮太は、再び眼帯を外した。


(ドアを開けた正面に1人、左側方に2人か)

力を発動し、中の人間の位置を把握した亮太は、軽く跳躍し、素早く体を捻って右足を回転させ、右の飛び回し蹴りをドアに喰らわせた。

ドアは強烈な衝撃を受け蝶番ごと吹き飛び、侵入者を待ち受けていた1人に直撃。

ニヤリと笑みを浮かべ、亮太は建物内に侵入。すぐに左側方に意識を向ける。

そのときには既に、拳銃を構えた2人が彼に向かって発砲していたが、

(いける!)

異能の力でそこまで既に予測済みの亮太は、放たれた弾丸の一つを正確に指で挟み取り、もう一つをつかんだ弾丸ではじく。

「なにいッッ!」

驚いた1人が声をあげた直後には、拳銃を持つ彼の手を亮太が指で挟んだまま放り投げた弾丸が直撃。亮太はひるんだその隙を見逃さず、膝蹴りを顎にもろにたたき込み気絶させた。

もう1人も、慌てて拳銃をぶっ放すものの、亮太はそれをすべて見切ってかわし、そいつの腹に裏拳をたたき込みダウンさせた。

(まずはこれでよし、と。それにしてもこいつら、やっぱりあのときの3人か。)

そう、先ほど亮太が倒した、逆浪光誘拐の実行犯と思われるこの3人の男達は、いつだったか彼が光と出逢ったときに光を襲っていたおっさん達である。

(一体なんでそんなに光を狙うんだ?)

その光の姿は、未だない。亮太は奥へと進んでいった。


奥の部屋は、まるで実験室のようであった。

部屋じゅうに資料やメモが散乱し、壁やホワイトボードにもメモが書き込まれている。

(何だここは。何かの研究施設か?)

「おやおや、勝手に入ってもらっては困りますねぇ。」

そのとき、隣の部屋に通じるドアが開き、白衣を着た男が入ってきた。

「アンタがボスか。光はどこだ!」

「侵入者に教えることはありま……」

男の言葉が途切れ、亮太の紫色の右目を凝視している。やがて、その口から、笑いがこぼれた。

「ハッハッハ、まさかエンペラーアイが出てくるとはねぇ!!実に懐かしい!!」

困惑する亮太。

「エンペラーアイ?何のことだ!」

「また逢えるとは思っていませんでしたよ、コードネーム・パープルアイ。ええ、君のことです。」

「アンタ…俺の力について知っているのか?」

「ええ、知っていますとも。君の異能力は天帝眼(エンペラーアイ)。右目を通して世界を見ることで、脳のリミッタを強制的に解除する力です。それにより観察力・思考力・判断力が強化されます。」

「なるほど、そういうことだったのか。んでアンタ……」


背筋に悪寒が走った。

体が危険信号を発していた。

「この先は聞いてはいけない」と。


「……何故それを知っているんだ?」

「そりゃあ、君の力を作ったのは私ですから。」


「……………は?」

体が、凍りついた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る